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理屈じゃない
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「はぁ~~~~~~~~~~~…………」
「あいつの申し出を受けて良かったのか、マスター」
大きな大きなため息を吐くリーダーを見て、ラストは思わず心配の声を掛けた。
「…………一応、ちゃんとした物を用意してくれてた訳だしな」
ランク七のマジックアイテム、身代わりのネックレス。
まず、容易に点はいる物ではない。
波状試練の三十階層、四十階層のボスを討伐したとしても、確実に手に入る物ではない。
そして……その使い捨てたとはいえ、有能過ぎる効果から、大金を用意したからといって確実に手に入れられるアイテムではない。
まず一般的な店では売られず、基本的にオークションに出品される。
ティールは身代わりのネックレスというマジックアイテムに関して、そこまで知っている訳ではないが、とてつもない価値を有しているアイテムであることだけは解る。
「そうか……しかし、マスターはあの男のことが嫌いだろ」
相手が対価を用意し、自分と勝負をしてほしいと頼み込んできた。
だからその申し込みを受ける……その流れはラストも解る。
だが、今回のティールには珍しい感情があった。
「嫌いだよ。なんて言うか……生理的に無理っていうよりも、なんか…………うん、嫌い」
「…………あの男が、地面に額を付けてでも、頼み込んできたからか?」
「……そう、だね」
アキラの様に、土下座の意味や行う覚悟などの詳細は知らない。
それでも、なんとなく……恥とプライドを捨てた。それだけは解った。
「正直……あぁいう頼み方が出来る人だとは思ってなかった」
「それは同感だ。これまで出会った来た本当のバカたち程ではないにしろ、それなりのプライドを持っているタイプだと思っていた」
「そうだな……にしても、なんであそこまでして、俺との勝負を望んだんだろうな」
クソ嫌いではある。
だが、単純に受けるだけで莫大なメリットがある。
それに加えて……単純に、超私的な理由もあった。
「確かに、それに関しては何故という疑問が残るな。因縁があるにはあるだろうが、あそこまで必死に頼み込むものではない……と思う」
「俺も同じ考えだよ。そりゃ俺が少し煽ったところはあると思うけど……そこが理由だったら、もっと挑発したよなぁ……」
本気で解らない。
いったい何が理由なのだろうと考えるも、二人は本当にそれらしいヒツギの行動理由が思い浮かばなかった。
「……彼にとって、ティールこそが……今、挑まなければならない壁だと感じたのかもしれない」
「挑まなければならない、壁? 越えなければならない壁ではなく?」
「そう……挑まなければならない、壁だ」
「「…………???」」
もしかしたら、それらしい答えなのかもしれない。
だが、アキラの予想を聞いても、二人はピンとこなかった。
「おそらく、私たちが理解しようとしても理解出来るものではない。彼が…………ティールという人間が、そういう相手だと思ってしまったのだろう」
「そこまで、因縁と言える因縁がないのに、ですか?」
「理屈じゃない、ということだよ」
「理屈じゃない、ですか………………それなら、仕方ない…………俺らに理解出来ない、行動なんでしょうね」
まだ、よく解らない。
それでも、理屈じゃない。
この言葉に関しては、どこか身に覚えがあった。
それはティールだけではなく、ラストも同じだった。
「…………しかし、本当に挑むことだけが目的なのか?」
「勝とうという気持ちは、勿論あると思う」
「そうか。であれば……何を根拠に、自信にしてマスターに勝つ気なのだろうな」
頼み込む準備、態度、行動。
どれだけヒツギが本気なのかは解った。
それでも、何を秘めていたとしても、ラストはヒツギがティールから勝利を捥ぎ取るイメージが浮かばなかった。
「……あれだけのマジックアイテムを用意してたんだ。戦いでも、何かしらのアイテムを使ってくるかもね」
「それは…………ふふ。そうだな、マスタ―には関係のないことだな」
傲慢になるつもりはない。
それでも、ティールには負けないという確信があった。
奪った技ではある。
自分で得た物ではない。
それでも……その手札は、今ティールの内にある。
「あいつの申し出を受けて良かったのか、マスター」
大きな大きなため息を吐くリーダーを見て、ラストは思わず心配の声を掛けた。
「…………一応、ちゃんとした物を用意してくれてた訳だしな」
ランク七のマジックアイテム、身代わりのネックレス。
まず、容易に点はいる物ではない。
波状試練の三十階層、四十階層のボスを討伐したとしても、確実に手に入る物ではない。
そして……その使い捨てたとはいえ、有能過ぎる効果から、大金を用意したからといって確実に手に入れられるアイテムではない。
まず一般的な店では売られず、基本的にオークションに出品される。
ティールは身代わりのネックレスというマジックアイテムに関して、そこまで知っている訳ではないが、とてつもない価値を有しているアイテムであることだけは解る。
「そうか……しかし、マスターはあの男のことが嫌いだろ」
相手が対価を用意し、自分と勝負をしてほしいと頼み込んできた。
だからその申し込みを受ける……その流れはラストも解る。
だが、今回のティールには珍しい感情があった。
「嫌いだよ。なんて言うか……生理的に無理っていうよりも、なんか…………うん、嫌い」
「…………あの男が、地面に額を付けてでも、頼み込んできたからか?」
「……そう、だね」
アキラの様に、土下座の意味や行う覚悟などの詳細は知らない。
それでも、なんとなく……恥とプライドを捨てた。それだけは解った。
「正直……あぁいう頼み方が出来る人だとは思ってなかった」
「それは同感だ。これまで出会った来た本当のバカたち程ではないにしろ、それなりのプライドを持っているタイプだと思っていた」
「そうだな……にしても、なんであそこまでして、俺との勝負を望んだんだろうな」
クソ嫌いではある。
だが、単純に受けるだけで莫大なメリットがある。
それに加えて……単純に、超私的な理由もあった。
「確かに、それに関しては何故という疑問が残るな。因縁があるにはあるだろうが、あそこまで必死に頼み込むものではない……と思う」
「俺も同じ考えだよ。そりゃ俺が少し煽ったところはあると思うけど……そこが理由だったら、もっと挑発したよなぁ……」
本気で解らない。
いったい何が理由なのだろうと考えるも、二人は本当にそれらしいヒツギの行動理由が思い浮かばなかった。
「……彼にとって、ティールこそが……今、挑まなければならない壁だと感じたのかもしれない」
「挑まなければならない、壁? 越えなければならない壁ではなく?」
「そう……挑まなければならない、壁だ」
「「…………???」」
もしかしたら、それらしい答えなのかもしれない。
だが、アキラの予想を聞いても、二人はピンとこなかった。
「おそらく、私たちが理解しようとしても理解出来るものではない。彼が…………ティールという人間が、そういう相手だと思ってしまったのだろう」
「そこまで、因縁と言える因縁がないのに、ですか?」
「理屈じゃない、ということだよ」
「理屈じゃない、ですか………………それなら、仕方ない…………俺らに理解出来ない、行動なんでしょうね」
まだ、よく解らない。
それでも、理屈じゃない。
この言葉に関しては、どこか身に覚えがあった。
それはティールだけではなく、ラストも同じだった。
「…………しかし、本当に挑むことだけが目的なのか?」
「勝とうという気持ちは、勿論あると思う」
「そうか。であれば……何を根拠に、自信にしてマスターに勝つ気なのだろうな」
頼み込む準備、態度、行動。
どれだけヒツギが本気なのかは解った。
それでも、何を秘めていたとしても、ラストはヒツギがティールから勝利を捥ぎ取るイメージが浮かばなかった。
「……あれだけのマジックアイテムを用意してたんだ。戦いでも、何かしらのアイテムを使ってくるかもね」
「それは…………ふふ。そうだな、マスタ―には関係のないことだな」
傲慢になるつもりはない。
それでも、ティールには負けないという確信があった。
奪った技ではある。
自分で得た物ではない。
それでも……その手札は、今ティールの内にある。
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