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嫌いである
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「……」
「ん? げっ……」
アキラに巨人の腕輪を渡したところで、ティールはある気配に気付いた。
「……いったい、何の用ですか」
気配の主は、紫獅の誓いという大手クランに所属している有望な若手冒険者は、ヒツギであった。
ティールからすれば、二度と顔を見たくない。
珍しく、人生の中で顔を見ただけでぶん殴りたくなる人物。
そんなヒツギという冒険者が、久しぶりにティールたちの前に現れた。
「ティール君、君に用がある」
「? 俺に用、ですか」
最初に浮かんだのは、何故俺に? という疑問だった。
ヒツギは、明らかにアキラに異性として強い興味を持っていた。
そこがティールにとって非常に子供じみた理由ではあるが、ヒツギの事を気に入らない内容であった。
(俺に……なんで、俺に?)
アキラに用があると言われれば、まだ理解出来る。
この男は以前、アキラにそういった対象としては興味がない的な事を言われたにもかかわらず、まだ狙っているのかと怒りが湧き上がりそうだが、一応声を掛けてきた理由としては納得出来る。
(マスターに用、か…………もしや、アキラを賭けてマスターと戦いたいのか?)
マスターであるティールが、ヒツギの事を嫌っているのは一目瞭然。
パーティーメンバーであるラストが気付かない訳がない。
ラストとしては、そもそも話しかけてくるなと言いたいところではあるが、リーダーであるティールの意思を差し置いて、そういった真似は出来なかった。
(しかし、アキラには既にそういった相手がいる。マスターではない男が、既にいるのだ。故にそういった勝負を申し込んでも無意味なのだが……この男は、それを知っているのか?)
特に教えてやろうとは思わないラスト。
ただ……それを知らず、アキラを賭けてティールに勝負を挑もうと考えているなら、非常い滑稽なバカだと思った。
そしてアキラは……目の前の男が、自分ではなくティールに用があると知り、ただただ安心していた。
「俺と……戦ってほしい」
「……は?」
思わず変な声が零れるティール。
確かに、ティールはヒツギの事が嫌いである。
冒険者ギルドの一件で、多少煽りもした。
だが、ティールとしてはアキラにならともかく、自分に勝負を申し込んでくるとは、欠片も考えていなかった。
「…………いやいやいや、普通に嫌ですよ。なんで俺があなたと戦わなきゃいけないんですか」
基本的に、ティールは訓練場で訓練している際などに、同世代の冒険者たちから模擬戦をしてくれないかと頼まれれば、殆ど断ることはない。
明らかに自分を見下している、嘗めた態度を取っている相手であっても、とりあえず一度は相手をする。
何故なら、叩き潰せばひとまず減らず口が消えて、イラっとした気持ちも同時に消えていく。
だが、大前提として……ティールはヒツギのことが嫌いである。
勝負の申し込みから逃げたと言いふらされても良いのか? 仮にそう脅されたとしても、ティールは堂々と答える。
俺はお前の事が嫌いだから、お前からの申し込みを受けないのだと。
ティールを知る者がその話を聞けば、ティールが勝負の申し込みから逃げた云々よりも、あのティールが嫌いだと宣言した冒険者だと……そこが注目される。
「誰かと模擬戦でもしたいなら、所属してるクランの先輩にでも頼み込めば良いじゃないですか」
「頼む……俺は、君と試合がしたいんだ。勿論、タダでとは言わない」
そう言いながら、ヒツギはアイテムポーチの中から長方形の箱を取り出した。
「勝敗に関係無く、これを君に渡す」
ヒツギが蓋を開けると、中には一つのネックレスが入っていた。
ティールは一目見ただけで、それがただの装飾品ではないことを察した。
(なんだ、それ……というか、この形って……見方によっては、変な感じに見える……よね?)
二人とも野郎ではあるが、片方の野郎がどう見ても普通ではないネックレスをもう片方の野郎に提示している。
見方によっては腐な貴人たちが好みそうな構図であった。
「ん? げっ……」
アキラに巨人の腕輪を渡したところで、ティールはある気配に気付いた。
「……いったい、何の用ですか」
気配の主は、紫獅の誓いという大手クランに所属している有望な若手冒険者は、ヒツギであった。
ティールからすれば、二度と顔を見たくない。
珍しく、人生の中で顔を見ただけでぶん殴りたくなる人物。
そんなヒツギという冒険者が、久しぶりにティールたちの前に現れた。
「ティール君、君に用がある」
「? 俺に用、ですか」
最初に浮かんだのは、何故俺に? という疑問だった。
ヒツギは、明らかにアキラに異性として強い興味を持っていた。
そこがティールにとって非常に子供じみた理由ではあるが、ヒツギの事を気に入らない内容であった。
(俺に……なんで、俺に?)
アキラに用があると言われれば、まだ理解出来る。
この男は以前、アキラにそういった対象としては興味がない的な事を言われたにもかかわらず、まだ狙っているのかと怒りが湧き上がりそうだが、一応声を掛けてきた理由としては納得出来る。
(マスターに用、か…………もしや、アキラを賭けてマスターと戦いたいのか?)
マスターであるティールが、ヒツギの事を嫌っているのは一目瞭然。
パーティーメンバーであるラストが気付かない訳がない。
ラストとしては、そもそも話しかけてくるなと言いたいところではあるが、リーダーであるティールの意思を差し置いて、そういった真似は出来なかった。
(しかし、アキラには既にそういった相手がいる。マスターではない男が、既にいるのだ。故にそういった勝負を申し込んでも無意味なのだが……この男は、それを知っているのか?)
特に教えてやろうとは思わないラスト。
ただ……それを知らず、アキラを賭けてティールに勝負を挑もうと考えているなら、非常い滑稽なバカだと思った。
そしてアキラは……目の前の男が、自分ではなくティールに用があると知り、ただただ安心していた。
「俺と……戦ってほしい」
「……は?」
思わず変な声が零れるティール。
確かに、ティールはヒツギの事が嫌いである。
冒険者ギルドの一件で、多少煽りもした。
だが、ティールとしてはアキラにならともかく、自分に勝負を申し込んでくるとは、欠片も考えていなかった。
「…………いやいやいや、普通に嫌ですよ。なんで俺があなたと戦わなきゃいけないんですか」
基本的に、ティールは訓練場で訓練している際などに、同世代の冒険者たちから模擬戦をしてくれないかと頼まれれば、殆ど断ることはない。
明らかに自分を見下している、嘗めた態度を取っている相手であっても、とりあえず一度は相手をする。
何故なら、叩き潰せばひとまず減らず口が消えて、イラっとした気持ちも同時に消えていく。
だが、大前提として……ティールはヒツギのことが嫌いである。
勝負の申し込みから逃げたと言いふらされても良いのか? 仮にそう脅されたとしても、ティールは堂々と答える。
俺はお前の事が嫌いだから、お前からの申し込みを受けないのだと。
ティールを知る者がその話を聞けば、ティールが勝負の申し込みから逃げた云々よりも、あのティールが嫌いだと宣言した冒険者だと……そこが注目される。
「誰かと模擬戦でもしたいなら、所属してるクランの先輩にでも頼み込めば良いじゃないですか」
「頼む……俺は、君と試合がしたいんだ。勿論、タダでとは言わない」
そう言いながら、ヒツギはアイテムポーチの中から長方形の箱を取り出した。
「勝敗に関係無く、これを君に渡す」
ヒツギが蓋を開けると、中には一つのネックレスが入っていた。
ティールは一目見ただけで、それがただの装飾品ではないことを察した。
(なんだ、それ……というか、この形って……見方によっては、変な感じに見える……よね?)
二人とも野郎ではあるが、片方の野郎がどう見ても普通ではないネックレスをもう片方の野郎に提示している。
見方によっては腐な貴人たちが好みそうな構図であった。
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