624 / 702
求められる嬉しさ
しおりを挟む
「つか、お前らはギルドから指導役を頼まれたりしないのか?」
ローバスは直接助けられたこともあり、多少ティールやラスト、アキラに関してどういった冒険者歴を有してるのか調べた。
ティール、ラストがまだ冒険者として活動を始めて三年も経っていないという事は知っていた。
しかし、調べれば調べるほど……一年弱で体験する内容ではないだろ、といった功績を積み重ねていた。
冒険者歴は短くとも、強敵との経験数や越えてきた修羅場の大きさは間違いなくベテラン以上。
アキラに関しては二人ほどインパクトは強くないが、それでもBランクモンスターとの戦闘経験は一般冒険者と比べて多く、同業者たちと組んだ回数といった点に関しては、二人よりも多い。
そのため、二人には出来ない連携に関する具体的な指導が出来る。
「ん~~~……ほら、俺はこんな見た目だから」
「Bランク冒険者なんだし、功績も広まり始めてるんだから、あまり関係ないんじゃないか?」
「どうだろう…………うん、ルーキーの中にも良い人はいる。最初はウザくとも、そこから変われる人がいるのも知ってる。けど、全員が全員そうじゃない。これはトラウマとかじゃないんだけど、実は……」
ティールは、ある女性冒険者の奴隷であるラストを解放しろという無茶振り事件を話した。
それを聞いたローバスは……スプーンを途中で止めた。
普通に考えれば、とりあえず下ろせば良いのだが……そんな当たり前の考えが浮かばないほどの衝撃を受けた。
「バ、バカじゃ、ねぇのか?」
ようやく出てきた言葉は、ラストを奴隷から解放しろとティールに絡んだ女性冒険者に対するシンプルな罵倒だった。
「うん、本当にバカだと思うよ。でもさ……ほら、恋は盲目っていう言葉があるでしょ」
「あ、あるな…………いや、でもその冒険者の願望って、もろ犯罪だぜ?」
「まぁ、僕がラストを買った金額や、怪我を直した金額分を用意しても、手放す気は一切ないけどね」
「…………」
「嬉しそうだな、ラスト」
「まぁな」
自分は主人に、マスターに必要とされている。
ティールはラストはそういった立場の人間と考えてはいない。
その気持ちはもう十分過ぎるほどラストも解っているが。
ただ……地獄から自分を救ってくれたティール。
ラストにとって、たとえ奴隷ではなくとも……自分はティールの貴族で言うところの執事、従者だという感覚が強い。
だからこそ、金額分を用意しても手放す気は一切ないという言葉は、アキラのからかいに対して素直にその通りだと答えるほど、嬉しかった。
「といった感じで、全員が全員そうではないと解っているけど、やっぱりルーキーだと知らないことが多いでしょ」
「それはまぁ、そうだな」
冒険者として知らない部分はあっても、その件は常識的に考えて駄目だと解る……というツッコミは入れなかった。
何故なら、実際にそういった事例が起こってしまっているから。
「それに、俺はヒツギを大勢の冒険者がいる前で……コケに? した」
「あぁ~~~~、はいはいはい。ヒツギに対して憧れを抱いてる連中は……ルーキーであればあるほど、ティールに対して強い感情を抱いてそうだな。でも、きっちり実力差を教えてやれば黙ると思うぜ?」
「…………直接教えた訳じゃないですけど、確かに考えが変わったルーキー……同期みたいな奴はいました。でも、そういった憧れを持ってる人なら、その憧れを汚さない為にあれこれ意味のないことを考えそうだなと思って」
「すぅーーー……ティール、よくそこまで考えられるな」
確かにその通りだと思ったローバス。
それと同時に、まだ十五を越えてないのに、そこまで直ぐに考えられる思考力に驚かされた。
「良くないことなのかもしれないけど、これまでの経験を考えると……ね」
ポロっと零したその笑みには……僅かに、悲しさが含まれていた。
ローバスは直接助けられたこともあり、多少ティールやラスト、アキラに関してどういった冒険者歴を有してるのか調べた。
ティール、ラストがまだ冒険者として活動を始めて三年も経っていないという事は知っていた。
しかし、調べれば調べるほど……一年弱で体験する内容ではないだろ、といった功績を積み重ねていた。
冒険者歴は短くとも、強敵との経験数や越えてきた修羅場の大きさは間違いなくベテラン以上。
アキラに関しては二人ほどインパクトは強くないが、それでもBランクモンスターとの戦闘経験は一般冒険者と比べて多く、同業者たちと組んだ回数といった点に関しては、二人よりも多い。
そのため、二人には出来ない連携に関する具体的な指導が出来る。
「ん~~~……ほら、俺はこんな見た目だから」
「Bランク冒険者なんだし、功績も広まり始めてるんだから、あまり関係ないんじゃないか?」
「どうだろう…………うん、ルーキーの中にも良い人はいる。最初はウザくとも、そこから変われる人がいるのも知ってる。けど、全員が全員そうじゃない。これはトラウマとかじゃないんだけど、実は……」
ティールは、ある女性冒険者の奴隷であるラストを解放しろという無茶振り事件を話した。
それを聞いたローバスは……スプーンを途中で止めた。
普通に考えれば、とりあえず下ろせば良いのだが……そんな当たり前の考えが浮かばないほどの衝撃を受けた。
「バ、バカじゃ、ねぇのか?」
ようやく出てきた言葉は、ラストを奴隷から解放しろとティールに絡んだ女性冒険者に対するシンプルな罵倒だった。
「うん、本当にバカだと思うよ。でもさ……ほら、恋は盲目っていう言葉があるでしょ」
「あ、あるな…………いや、でもその冒険者の願望って、もろ犯罪だぜ?」
「まぁ、僕がラストを買った金額や、怪我を直した金額分を用意しても、手放す気は一切ないけどね」
「…………」
「嬉しそうだな、ラスト」
「まぁな」
自分は主人に、マスターに必要とされている。
ティールはラストはそういった立場の人間と考えてはいない。
その気持ちはもう十分過ぎるほどラストも解っているが。
ただ……地獄から自分を救ってくれたティール。
ラストにとって、たとえ奴隷ではなくとも……自分はティールの貴族で言うところの執事、従者だという感覚が強い。
だからこそ、金額分を用意しても手放す気は一切ないという言葉は、アキラのからかいに対して素直にその通りだと答えるほど、嬉しかった。
「といった感じで、全員が全員そうではないと解っているけど、やっぱりルーキーだと知らないことが多いでしょ」
「それはまぁ、そうだな」
冒険者として知らない部分はあっても、その件は常識的に考えて駄目だと解る……というツッコミは入れなかった。
何故なら、実際にそういった事例が起こってしまっているから。
「それに、俺はヒツギを大勢の冒険者がいる前で……コケに? した」
「あぁ~~~~、はいはいはい。ヒツギに対して憧れを抱いてる連中は……ルーキーであればあるほど、ティールに対して強い感情を抱いてそうだな。でも、きっちり実力差を教えてやれば黙ると思うぜ?」
「…………直接教えた訳じゃないですけど、確かに考えが変わったルーキー……同期みたいな奴はいました。でも、そういった憧れを持ってる人なら、その憧れを汚さない為にあれこれ意味のないことを考えそうだなと思って」
「すぅーーー……ティール、よくそこまで考えられるな」
確かにその通りだと思ったローバス。
それと同時に、まだ十五を越えてないのに、そこまで直ぐに考えられる思考力に驚かされた。
「良くないことなのかもしれないけど、これまでの経験を考えると……ね」
ポロっと零したその笑みには……僅かに、悲しさが含まれていた。
256
お気に入りに追加
1,801
あなたにおすすめの小説
D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが
米俵猫太朗
ファンタジー
ただのサッカーマニアである青年ショーキチはひょんな事から異世界へ転移してしまう。
その世界では女性だけが行うサッカーに似た球技「サッカードウ」が普及しており、折りしもエルフ女子がミノタウロス女子に蹂躙されようとしているところであった。
更衣室に乱入してしまった縁からエルフ女子代表を率いる事になった青年は、秘策「Tバック」と「トップレス」戦術を授け戦いに挑む。
果たしてエルフチームはミノタウロスチームに打ち勝ち、敗者に課される謎の儀式「センシャ」を回避できるのか!?
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。
のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
異世界災派 ~1514億4000万円を失った自衛隊、海外に災害派遣す~
ス々月帶爲
ファンタジー
元号が令和となり一年。自衛隊に数々の災難が、襲い掛かっていた。
対戦闘機訓練の為、東北沖を飛行していた航空自衛隊のF-35A戦闘機が何の前触れもなく消失。そのF-35Aを捜索していた海上自衛隊護衛艦のありあけも、同じく捜索活動を行っていた、いずも型護衛艦2番艦かがの目の前で消えた。約一週間後、厄災は東北沖だけにとどまらなかった事を知らされた。陸上自衛隊の車両を積載しアメリカ合衆国に向かっていたC-2が津軽海峡上空で消失したのだ。
これまでの損失を計ると、1514億4000万円。過去に類をみない、恐ろしい損害を負った防衛省・自衛隊。
防衛省は、対策本部を設置し陸上自衛隊の東部方面隊、陸上総隊より選抜された部隊で混成団を編成。
損失を取り返すため、何より一緒に消えてしまった自衛官を見つけ出す為、混成団を災害派遣する決定を下したのだった。
派遣を任されたのは、陸上自衛隊のプロフェッショナル集団、陸上総隊の隷下に入る中央即応連隊。彼等は、国際平和協力活動等に尽力する為、先遣部隊等として主力部隊到着迄活動基盤を準備する事等を主任務とし、日々訓練に励んでいる。
其の第一中隊長を任されているのは、暗い過去を持つ新渡戸愛桜。彼女は、この派遣に於て、指揮官としての特殊な苦悩を味い、高みを目指す。
海上自衛隊版、出しました
→https://ncode.syosetu.com/n3744fn/
※作中で、F-35A ライトニングⅡが墜落したことを示唆する表現がございます。ですが、実際に墜落した時より前に書かれた表現ということをご理解いただければ幸いです。捜索が打ち切りとなったことにつきまして、本心から残念に思います。搭乗員の方、戦闘機にご冥福をお祈り申し上げます。
「小説家になろう」に於ても投稿させて頂いております。
→https://ncode.syosetu.com/n3570fj/
「カクヨム」に於ても投稿させて頂いております。
→https://kakuyomu.jp/works/1177354054889229369
転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて
ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記
大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。
それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。
生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、
まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。
しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。
無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。
これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?
依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、
いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。
誰かこの悪循環、何とかして!
まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて
俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります
京衛武百十
ファンタジー
俺の名前は阿久津安斗仁王(あくつあんとにお)。いわゆるキラキラした名前のおかげで散々苦労もしたが、それでも人並みに幸せな家庭を築こうと仕事に精を出して精を出して精を出して頑張ってまあそんなに経済的に困るようなことはなかったはずだった。なのに、女房も娘も俺のことなんかちっとも敬ってくれなくて、俺が出張中に娘は結婚式を上げるわ、定年を迎えたら離婚を切り出されれるわで、一人寂しく老後を過ごし、2086年4月、俺は施設で職員だけに看取られながら人生を終えた。本当に空しい人生だった。
なのに俺は、気付いたら五歳の子供になっていた。いや、正確に言うと、五歳の時に危うく死に掛けて、その弾みで思い出したんだ。<前世の記憶>ってやつを。
今世の名前も<アントニオ>だったものの、幸い、そこは中世ヨーロッパ風の世界だったこともあって、アントニオという名もそんなに突拍子もないものじゃなかったことで、俺は今度こそ<普通の幸せ>を掴もうと心に決めたんだ。
しかし、二週目の人生も取り敢えず平穏無事に二十歳になるまで過ごせたものの、何の因果か俺の暮らしていた村が戦争に巻き込まれて家族とは離れ離れ。俺は難民として流浪の身に。しかも、俺と同じ難民として戦火を逃れてきた八歳の女の子<リーネ>と行動を共にすることに。
今世では結婚はまだだったものの、一応、前世では結婚もして子供もいたから何とかなるかと思ったら、俺は育児を女房に任せっきりでほとんど何も知らなかったことに愕然とする。
とは言え、前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に、何とかしようと思ったのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる