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求められる嬉しさ

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「つか、お前らはギルドから指導役を頼まれたりしないのか?」

ローバスは直接助けられたこともあり、多少ティールやラスト、アキラに関してどういった冒険者歴を有してるのか調べた。

ティール、ラストがまだ冒険者として活動を始めて三年も経っていないという事は知っていた。
しかし、調べれば調べるほど……一年弱で体験する内容ではないだろ、といった功績を積み重ねていた。

冒険者歴は短くとも、強敵との経験数や越えてきた修羅場の大きさは間違いなくベテラン以上。

アキラに関しては二人ほどインパクトは強くないが、それでもBランクモンスターとの戦闘経験は一般冒険者と比べて多く、同業者たちと組んだ回数といった点に関しては、二人よりも多い。
そのため、二人には出来ない連携に関する具体的な指導が出来る。

「ん~~~……ほら、俺はこんな見た目だから」

「Bランク冒険者なんだし、功績も広まり始めてるんだから、あまり関係ないんじゃないか?」

「どうだろう…………うん、ルーキーの中にも良い人はいる。最初はウザくとも、そこから変われる人がいるのも知ってる。けど、全員が全員そうじゃない。これはトラウマとかじゃないんだけど、実は……」

ティールは、ある女性冒険者の奴隷であるラストを解放しろという無茶振り事件を話した。

それを聞いたローバスは……スプーンを途中で止めた。
普通に考えれば、とりあえず下ろせば良いのだが……そんな当たり前の考えが浮かばないほどの衝撃を受けた。

「バ、バカじゃ、ねぇのか?」

ようやく出てきた言葉は、ラストを奴隷から解放しろとティールに絡んだ女性冒険者に対するシンプルな罵倒だった。

「うん、本当にバカだと思うよ。でもさ……ほら、恋は盲目っていう言葉があるでしょ」

「あ、あるな…………いや、でもその冒険者の願望って、もろ犯罪だぜ?」

「まぁ、僕がラストを買った金額や、怪我を直した金額分を用意しても、手放す気は一切ないけどね」

「…………」

「嬉しそうだな、ラスト」

「まぁな」

自分は主人に、マスターに必要とされている。
ティールはラストはそういった立場の人間と考えてはいない。
その気持ちはもう十分過ぎるほどラストも解っているが。

ただ……地獄から自分を救ってくれたティール。
ラストにとって、たとえ奴隷ではなくとも……自分はティールの貴族で言うところの執事、従者だという感覚が強い。

だからこそ、金額分を用意しても手放す気は一切ないという言葉は、アキラのからかいに対して素直にその通りだと答えるほど、嬉しかった。

「といった感じで、全員が全員そうではないと解っているけど、やっぱりルーキーだと知らないことが多いでしょ」

「それはまぁ、そうだな」

冒険者として知らない部分はあっても、その件は常識的に考えて駄目だと解る……というツッコミは入れなかった。
何故なら、実際にそういった事例が起こってしまっているから。

「それに、俺はヒツギを大勢の冒険者がいる前で……コケに? した」

「あぁ~~~~、はいはいはい。ヒツギに対して憧れを抱いてる連中は……ルーキーであればあるほど、ティールに対して強い感情を抱いてそうだな。でも、きっちり実力差を教えてやれば黙ると思うぜ?」

「…………直接教えた訳じゃないですけど、確かに考えが変わったルーキー……同期みたいな奴はいました。でも、そういった憧れを持ってる人なら、その憧れを汚さない為にあれこれ意味のないことを考えそうだなと思って」

「すぅーーー……ティール、よくそこまで考えられるな」

確かにその通りだと思ったローバス。
それと同時に、まだ十五を越えてないのに、そこまで直ぐに考えられる思考力に驚かされた。

「良くないことなのかもしれないけど、これまでの経験を考えると……ね」

ポロっと零したその笑みには……僅かに、悲しさが含まれていた。
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