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あぁはなりたくないだろ

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「それじゃあ、予定通り戦ろう」

「「あぁ」」

自分たちの番が回ってきたティールたちは意気揚々と扉を開け、ボスが待つ部屋へと乗り込む。

「…………やっぱり、あいつがあのパーティーのリーダーなんだよな?」

ティールたちが自分たちの番を持っていた間に、当然ながら他の冒険者パーティーも三十階層のボス部屋へと到着していた。

既に数組のパーティーが三人の後ろに並んでおり……彼等はティールが真ん中で、ラストが右、アキラが左の位置しながらボス部屋に入っていく光景を見た。

「見た感じそうだけど……やっぱ、まだ半々って感じだな」

「あんたねぇ~~、バカな気を起こそうとした瞬間に、竜人族の彼に……ラスト君に睨まれたのを覚えてないの?」

悪気百パーセントではないものの、あるバカが順番を変わってくれないかと交渉しようと動いた。

しかし、そんなバカにラストが「戦んのか? 戦んならボス戦前だろうが容赦なく叩き潰すぞ」と言いたげな鋭い視線を向けて追い返した。

「いや、あの竜人族の野郎が強いってのは解ったっての。けど、あのティールって奴は、なんつ~か……強い奴が持つオーラ的なのを全く感じなくてよ」

「あなたが強いと認めた竜人族の青年が付き従っている。それであの少年が強いという証明になるんじゃないの?」

「あの少年が何らかの方法で竜人族の野郎を危機的状況から救ったから、付き従ってるって可能性もあるだろ」

やらかしかけたバカの言葉に、別パーティーの冒険者も頷いていた。

「……又聞きの話だが、ティールは冒険者になって間もない頃にBランクのモンスターを一人で討伐したことがあるらしいぞ」

「………………はっ? んだそれ。笑えねぇ冗談だぞ」

「俺もそれを聞いた時は同じ気持ちになった。ただ、その記録は冒険者ギルドに明確に記されてるらしいぞ」

ギルドに記録されている。

その言葉が本当か否かという論争はさておき、仮に本当だった場合……自分たちが所属している冒険者ギルドを疑うことになる。

「まぐれ、じゃねぇのか?」

「おいおい、もう何年冒険者として活動してるんだ。Bランクのモンスターが本当の意味でのまぐれで勝てる相手ではない事は知ってるだろ」

「ッ、それは…………チッ、そうだな」

「忘れて内容でなによりだ。ともかく、形は違えどヒツギの二の舞になるような真似はするんじゃないぞ」

ヒツギという、ある冒険者の名前を聞き……そのパーティーだけではなく、他の順番待ちしている冒険者たちも吹き出し、笑いが零れた。

容姿端麗、実力本物なパーフェクト人間と思われていた男が、気になった女性にアプローチをしたが、冒険者ギルド内でキッパリとその女性からあなたには興味がないと断言された事件。

確かにあぁはなりたくないと、ボス部屋前にいる冒険者たちの答えは同じだった。


「あの鷲が俺の相手だな」

「毒蜘蛛は俺」

「私は、あの鋼鉄の蜥蜴だな」

ティールたちの前には、三十層のボスであるCランクのロンリーイーグル、Bランクのベネルトスパイダー、Cランクのメタルリザードが待ち構えていた。

「孤高の大鷲…………ふふ、本当にCランクなのか?」

「…………ッ!!!!!」

「フンッ!!!!!!!」

ロンリーイーグルはソロで戦う戦況に特化した大鷲。

モンスターサイドにはベネルトスパイダーとメタルリザードがいるが、その二体はティールとアキラが相手をしている為、実質ラストという敵をロンリーイーグル一体で相手をしていると捉えられる。

(翼から放たれる斬撃刃が、この威力か……一対一、タイマン勝負の際には更に諸々の身体能力が増すというのは本当だったようだな)

一対多数での戦闘の際にも身体能力が向上するが、ロンリーイーグルが最も真価を発揮するのはタイマン勝負時。

そして今、まさにラストとのタイマン勝負が始まり、ロンリーイーグルの総合的な戦闘力はBランククラスまで成長。
鳥獣系のモンスターであろうとも、ラストにとって闘争心が燃え上がる強敵となった。
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