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いっその事……

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「今日はここまでにしようか」

基本的に日差しが強いエリアであっても、夜は必ず訪れる。

丁度良い平地を見つけてテントを設置し、ティールとアキラが夕食の準備を始めた。

「今日一日探索して思ったが、この樹海というエリア……食料の調達が難しいのかもしれないな」

三人が最初に遭遇したコボルトの肉は、食えないことはないが、固くて食用には向かない。

夕方ごろにフォレストオークに遭遇したので、亜空間に食料を溜め込んでいなくても、一応大丈夫ではあったが……食べられるモンスターと遭遇したのは……二体のフォレストオークのみ。

それ以外は食用に適さないモンスターばかりだった。

「遭遇したモンスターの中で、食えそうなのはフォレストオークだけでしたからね。果物とかは割と実ってましたけど、大飯食らいの冒険者からすれば、物足りないでしょう」

「そう考えると、やはりティールの空間収納は有難い限りだな」

フォレストオークの肉も勿論収納して保存しているが、亜空間の中には他のモンスターの肉も入っている。

水もあるため、三人が食糧難で追い詰められることはない。

「自分でもそう思います。それにしても、そう簡単にディレッドビートルに匹敵するモンスターとは遭遇出来ませんでしたね」

Eランク、Dランク、Cランクと一日で遭遇したモンスターの幅は広かった。

Cランクのモンスターは地上の一般的なモンスターよりも、一部分だけであればBランクモンスターに匹敵するステータスを持っている個体がちらほらといた。

だが、それらのモンスターでもアキラが納得出来る個体はいなかった。

「……もしや、雷鳥の時と同じになってしまうか?」

「それは…………えっと………………ど、どうでしょう、か」

ティールは物欲センサーという言葉を知らない。

ただ、前回の雷鳥探しで、欲しい……遭遇したいという気持ちが大きくなればなるほど、願いが遠ざかるという現実を身をもって体験した。

「大丈夫なんじゃないか」

「ラスト……なんで、そう思う?」

「マスターの時は、雷鳥と細かく限定されていただろう。だが、今回はディレッドビートルの角に見合うモンスター……おそらく、Bランクのモンスターになるだろう。Bランクモンスターであれば、雷鳥の時に何体も遭遇しただろう」

「それは、確かにそうだっただな」

ティールが何日も掛けて雷鳥を探している間、Bランクモンスターとは何体か遭遇しており、ラストとアキラが有難く相手をしていた。

「二十六階層以降であれば、これまでよりBランクモンスターに遭遇する機会が増えるだろう。それか……いっそ、Aランクモンスターの素材を手に入れるか?」

「っ、それは……ふ、ふっふっふ。素材云々以前に、闘争心が湧き上がる話だな」

Aランクモンスター。

まだアキラは対峙したことはない。
ただ……冷静に評価は出来ている。
自分一人の力では、絶対に勝てない超難敵だと。

しかし、今アキラの傍には……これまで臨時でパーティーを組んできた冒険者たちと比べて、最も頼りになる者たちがいる。

「でもさ、ラスト。そうなると、今度はディレッドビートルの角が格落ちしない?」

「かもしれないな。とはいえ、それはそれで気分が上がらないか、マスター?」

「…………そうだね。この前は、手合わせするだけだったけど……うん、もし機会が巡って来たのであれば……全力で、ぶつかりたいね」

二人は以前、岩窟竜レグレザイアというAランクのドラゴンと対面し……一度だけ、自分たちの攻撃力とレグレザイアの防御力を比べてみたことがあった。

その際、結果として二人の攻撃力はレグレザイアが生み出した壁を突破した。
だが……その壁が、レグレザイアの本気の防御だとは限らない。

ティールとて、Aランクモンスターがどれほど恐ろしい怪物なのかは理解している。
ラストほど強敵との戦闘を好んではいないが……ティールの中にも、確かに挑戦心は存在していた。


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新作、異世界バーテンダー。冒険者が副業で、バーテンダーが本業ですので、お間違いなく。を投稿しました!!

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