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誰の事なのか

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「本当の強者、か……」

ティールたちとの食事を終え、一人でクランハウスへと戻るローバス。

そんな中、食事中にティールが語った本当の強者について考えていた。

(普通なら、ティールさんぐらいの年齢の少年がそんな事を語っても、一丁前に生意気に語りやがってと思ってしまうが…………気になるな)

夕食中、ティールはその本当の強者に関する詳細は語らなかった。

そのため、ローバスは事前にクランが調べたティールの情報を思い出しながら、彼が語る本当の強者とは誰のことを指しているのか考え始めた。

(冒険者になってから半年も経たないうちに遭遇したBランクモンスター、ブラッディ―タイガーか? 確か、倒すことには倒せたが、討伐直後にティールさんも倒れてしまったんだよな)

二人の師匠がいたこともあり、ティールは冒険者になる前から並以上の実力を持っていた。

そんなティールであっても、ブラッディ―タイガーという猛獣は非常に強敵であり……遭遇するまで共に行動していたルーキー二人が先輩冒険者たちに応援を頼んでいなければ、他のモンスターたちに食われていた可能性が非常に高かった。

(それか……紅いリザードマンとの戦いか? その戦いでは倒れなかったらしいが、腕を切断されたんだよな…………森林暗危ってダンジョンの最下層ボスは……あれもBランクモンスターだけど、多分ティールさん的に……ラストさん的にも、強敵ではないんだろうな)

漁夫の利を狙おうとしていたリザードマンの群れと戦闘になった際、ラストはリザードマンジェネラルと戦い、ティールはスカーレットリザードマンと戦った。
戦闘中、虚を突いたと確信したティールに対し、本能的に超反応したスカーレットリザードマンの斬撃によって、片腕を斬り裂かれた。

だが、同じBランクモンスターとの戦闘でも、冒険者ギルドの情報には二人が何回も森林暗危を攻略したという情報が記されており、最下層のボスであるアサルトレパードとの戦闘はあまり苦に感じていなかったのが窺える。

(グリフォンとも戦った経験があるらしいが、そこまで苦戦したという情報もない……そういえば、え……エンリルオーガ、だったか? 珍しいオーガと戦ったという情報もあったが……こっちもあまり苦戦したという情報はない)

グリフォンに関しては二人で戦って討伐。

エンリルオーガとは、哀れな童貞魔法使いの魂が転生した特殊なオーガであり、従来のオーガとは違った強さを持っていたものの……ティールが強敵と断言するほどの強さは持っていなかった。

(…………いや、待て待て。確か、戦ってはいないん……だよな? でも、実際にドラゴンの涙を手に入れたらしいし……実は、手合わせ的なことはしていたのか?)

最後にローバスの脳内に浮かんだモンスターの名は、岩窟竜レグレザイア。
ドラゴンの中でも正真正銘、Aランクの怪物。

二人がある貴族から依頼を受け、見事ドラゴンの涙を手に入れたという情報は残っている。
ただ……今でもその岩窟竜レグレザイアは生きており、二人が討伐したわけではない。

「でも、Aランクの怪物を見たことがあるなら……そうだよなぁ…………というか、そう考えると、やっぱりヒツギの奴が少し可哀想に思えてくるな」

結果としてヒツギ……紫獅の誓いというクランは、生物ピラミッドの頂点に君臨するドラゴンの中でも、Aランクドラゴンという暴力の化身と比べられた。

いくらヒツギが期待の超新星であり、世界各国にあるクランと比べても中の上の実力を持つ紫獅の誓いであっても……そんな怪物と比べられては、どうしても小さく見えてしまう。

(まぁ、あそこのマスターもうちのマスターみたいな冒険者らしからぬ賢いタイプではないだろうけど、安直にバカな真似をするほど愚かではない……ない、よな?)

深緑のファミリアに在籍するローバスにとって、紫獅の誓いがライバルクランであることに変わりはないが、それでも存在しなければそれはそれで困るため、うっかり何かの拍子で消えてしまうのだけは勘弁してほしかった。
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