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誰かにとっての
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(なんつーか、もしかして元がぶっ壊れてる、のか?)
三歳にして、異性にモテる為に必要なのは……力だ!!!! と思い、そこから約十年、全力で強くなることに費やした。
そんな振り切った生き方をしてた部分を考えれば、根っこがぶっ壊れているか否かはさておき、かなり普通ではないのは間違いなかった。
「今日はここまでにしましょう」
「そうっすね」
日も落ち、手頃な場所を見つけたティールたちは直ぐに野営の準備を開始。
「っ、ティールさん……なんか、無茶苦茶慣れてますね」
普段通り食事を担当していると、深緑のファミリアのメンバーたちは目を点にしながら、普段と変わらない表情で調理を行っているティールを見て驚き固まっていた。
「まだ冒険者活動を始めて二年も経ってないけど、それまでの野営ではずっと作り続けてきたんで」
「それは凄いっすね。てっきり、料理とかはアキラさんが担当してるのかと思ってました」
「私が二人と知り合い、パーティーを組んだのはごく最近だ。私も多少は料理出来るが、ここまで出際良く調理を進められるとなると、ついつい甘えてしまう」
アキラとしては申し訳ない事なのだが、ティールとしては……アキラに頼られるのは非常に嬉しかった。
「どうぞ」
「俺らも、食って良いんすか」
「その為にこれだけの量を作ったんで、寧ろ食べて貰わないと困りますよ」
「あざっす」
四人は飢えに飢えていたという訳ではないが、地上の店で提供される料理と同レベルの食事が採れることに、感動すら覚えていた。
「そういえば、ティールさんってまだ随分と若いっすけど、何か大きな目標とかあって冒険者になったんすか?」
「目標……目標…………」
どこまで話すべきか、何を隠すべきか……非常に迷う。
(モテる為に、彼女云々とかは言わなくて良いよな)
話したくない事は、話したくない。
もっと歳を取って大人になれば笑い話となる、寧ろ俺も同じだったと同意する者もいるだろう。
しかし、今のティールは数年以上はある思春期に突入したばかりの年齢。
当然の事ながら、言えるわけがなかった。
「住んでた村に、元冒険者の人がいたんだ。その人から現役時代の話とかを聞いて、外の世界に凄く興味を持った。本当は……冒険者を育成する学園に入学出来たかもしれないけど、俺はちょっとせっかちでさ。積めることはもう積めた思って、直ぐに冒険者になったんだ」
「外の世界への興味、か。解かるっす。俺が冒険者になった理由も似た様なもんでしたし」
「英雄になりたいってい目標を持ってた気がするけどね」
「バカ野郎!! そんな昔の話、思い出させんなっての」
幼い頃からの腐れ縁男に、冒険者になったもう一つの隠していた理由をバラされ、焦って言否定するリーダー。
「良いじゃないですか。そういうのに憧れるのは、別におかしい事じゃありませんよ」
「は、はは。そう言ってもらえると嬉しいっす。けど、冒険者として活動し続ければ続けるほど、自分はその器じゃないんだって思い知らされますよ」
リーダーの男だけではなく、パーティーメンバーの三人も……同じく物語に出来るような英雄を目指していた訳ではないが、自分が特別な……唯一無二の存在になれると思っていた時期があり、全員が当時を思い出しながら苦笑いを浮かべた。
「……物語に出てくる様な英雄になるのは難しいかもしれませんけど、誰かにとっての英雄であれば……振り絞れる勇気次第でなれると思いますよ」
「誰かにとっての英雄、っすか」
「物語に出てくる英雄は確かに凄いです。でも、ある人にとっては、物語に出てくる主人公よりも、実際に自分を助けてくれたり、憧れを抱いた人の方が英雄だと思う、感じる……かもしれないじゃないですか」
へへっと笑いながら自分なりの考えを口にしたティールを見て、リーダーの男は思った……ヒツギは、この少年に諸々負けてるのではないかと。
三歳にして、異性にモテる為に必要なのは……力だ!!!! と思い、そこから約十年、全力で強くなることに費やした。
そんな振り切った生き方をしてた部分を考えれば、根っこがぶっ壊れているか否かはさておき、かなり普通ではないのは間違いなかった。
「今日はここまでにしましょう」
「そうっすね」
日も落ち、手頃な場所を見つけたティールたちは直ぐに野営の準備を開始。
「っ、ティールさん……なんか、無茶苦茶慣れてますね」
普段通り食事を担当していると、深緑のファミリアのメンバーたちは目を点にしながら、普段と変わらない表情で調理を行っているティールを見て驚き固まっていた。
「まだ冒険者活動を始めて二年も経ってないけど、それまでの野営ではずっと作り続けてきたんで」
「それは凄いっすね。てっきり、料理とかはアキラさんが担当してるのかと思ってました」
「私が二人と知り合い、パーティーを組んだのはごく最近だ。私も多少は料理出来るが、ここまで出際良く調理を進められるとなると、ついつい甘えてしまう」
アキラとしては申し訳ない事なのだが、ティールとしては……アキラに頼られるのは非常に嬉しかった。
「どうぞ」
「俺らも、食って良いんすか」
「その為にこれだけの量を作ったんで、寧ろ食べて貰わないと困りますよ」
「あざっす」
四人は飢えに飢えていたという訳ではないが、地上の店で提供される料理と同レベルの食事が採れることに、感動すら覚えていた。
「そういえば、ティールさんってまだ随分と若いっすけど、何か大きな目標とかあって冒険者になったんすか?」
「目標……目標…………」
どこまで話すべきか、何を隠すべきか……非常に迷う。
(モテる為に、彼女云々とかは言わなくて良いよな)
話したくない事は、話したくない。
もっと歳を取って大人になれば笑い話となる、寧ろ俺も同じだったと同意する者もいるだろう。
しかし、今のティールは数年以上はある思春期に突入したばかりの年齢。
当然の事ながら、言えるわけがなかった。
「住んでた村に、元冒険者の人がいたんだ。その人から現役時代の話とかを聞いて、外の世界に凄く興味を持った。本当は……冒険者を育成する学園に入学出来たかもしれないけど、俺はちょっとせっかちでさ。積めることはもう積めた思って、直ぐに冒険者になったんだ」
「外の世界への興味、か。解かるっす。俺が冒険者になった理由も似た様なもんでしたし」
「英雄になりたいってい目標を持ってた気がするけどね」
「バカ野郎!! そんな昔の話、思い出させんなっての」
幼い頃からの腐れ縁男に、冒険者になったもう一つの隠していた理由をバラされ、焦って言否定するリーダー。
「良いじゃないですか。そういうのに憧れるのは、別におかしい事じゃありませんよ」
「は、はは。そう言ってもらえると嬉しいっす。けど、冒険者として活動し続ければ続けるほど、自分はその器じゃないんだって思い知らされますよ」
リーダーの男だけではなく、パーティーメンバーの三人も……同じく物語に出来るような英雄を目指していた訳ではないが、自分が特別な……唯一無二の存在になれると思っていた時期があり、全員が当時を思い出しながら苦笑いを浮かべた。
「……物語に出てくる様な英雄になるのは難しいかもしれませんけど、誰かにとっての英雄であれば……振り絞れる勇気次第でなれると思いますよ」
「誰かにとっての英雄、っすか」
「物語に出てくる英雄は確かに凄いです。でも、ある人にとっては、物語に出てくる主人公よりも、実際に自分を助けてくれたり、憧れを抱いた人の方が英雄だと思う、感じる……かもしれないじゃないですか」
へへっと笑いながら自分なりの考えを口にしたティールを見て、リーダーの男は思った……ヒツギは、この少年に諸々負けてるのではないかと。
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