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儚い理想
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「では、行ってくる」
「すぐ戻ってくる」
冒険者ギルドに到着したティールたちは、ラストの予定通りラストとアキラだけでギルドの中に入り、ダンジョンの地図を貰ってくる。
ティールから必要であろう金は貰っているため、特に問題はない。
二人が戻ってくるまでの間、ティールは外でお留守番……まさに子ども扱い。
しかし、ティールは実際のところ、まだ青年ではなく少年。
強さはともかく、年齢的には本当にまだ少年である。
(確か、森林暗危とは違って、一階層から五階層までが洞窟……それで、六階層から十五階層までが遺跡。十六階層からニ十階層までは洞窟って感じで、ちょっと変な入れ替え具合? なんだよな)
今回ティールたちが目指すダンジョン……波状試練は全部で、今のところ四十階層。
ダンジョンの地形は合計で四つ確認されている。
ダンジョンの中でも変わる地形が極端に多い。
(ふっふっふ、楽しみだな…………いや、あまりこういった気持ちばかりが心にあると、万が一に繋がってしまう。気を引き締めておかないと)
楽しむだけで乗り越えられる程甘くない。
事前に得た情報から、それほど攻略難易度が高いことは解っていた。
「っ!!!??? な……なんだ?」
急にギルドの中から人が殴られると音と、何かが壁に激突する音が聞こえた。
「喧嘩……か? まぁ、冒険者ギルドなんだし、訓練場からじゃなくてロビーから喧嘩の音が聞こえてもおかしく………………っ!!!!」
確かに冒険者ギルドという場所を考えれば、ロビーから冒険者同士が殴り合う音が聞こえてきてもおかしくはない。
だが……今ティールは、波状試練の階層情報を買いにギルドの中に入った。
つまり、その喧嘩の中心に二人がいてもおかしくない。
それに気付いたティールは直ぐにギルドの中へと入ったが……視界に入った光景は、倒れている数人の冒険者と、無傷のラストだった。
「お、おいラスト……何があったんだ」
「マスター……いや、特に大したことはない…………俺たちがダンジョンの情報を買い終えた後、そこに転がっている奴らがしつこく声を掛けて来たんだ」
「ティール、ラストを攻めないでやってほしい。多少ラストが煽った形ではあるが、先に拳を振りかざしたのは転がっている奴らだ」
「そ、そっか」
だったら問題無いね……とは断言出来ない。
しかし、絡んで来た相手が先に手を出してきたとなれば、ラストを怒る理由もない。
「……と、とりあえず出ようか」
二人にそう伝え、ギルドから出ようとすると、ラストに殴り飛ばされた人物が大声で口を開こうとした……次の瞬間。
「くそっ!!!!????」
「あの、本当に必要ないんで、これ以上二人に絡まないでくださいね」
ティールが放ったのは……ただの魔力の弾丸。
しかし放たれた弾丸は非常に正確であり、ラストを挑発しようとした男の頬に……ギリギリ当たらない位置を通り過ぎた。
「あっ、弁償はそこに転がってる人たちにお願いします」
「は、はい。かしこまりました」
ギルド職員に請求はあいつらにと頼み、ギルドから退出した三人。
ティールは大して時間を掛けず、その場にいた冒険者たちに自分は見た目通りの冒険者ではないと知らしめた。
「やはり、流石マスターだな」
「……別に言わせておいても良いんだけど、それはそれでラスト、お前が苛立つだろ」
「…………」
敬意を抱く主人が馬鹿にされれば、当然苛立つ。
ティールからそういった事をスルーするメンタルの持ちようを教えられたが、やはり完全にスルーすることは出来ない。
「それにしてもあれだったな。結局のところ、ティールが居ても居なくても、どうやら私たちは絡まれてしまうようだ」
「理由は解らなくもないですけど…………はぁ~~~~、ラストが提案してくれた案は良かったと思ったんだけどな~~~」
内容的には子ども扱いだが、ティールとしてはそこは特に気にしていなかったため、これから無駄に絡まれることが減ると思っていたが……結局のところラストが絡まれてしまうので、儚い理想だった。
「すぐ戻ってくる」
冒険者ギルドに到着したティールたちは、ラストの予定通りラストとアキラだけでギルドの中に入り、ダンジョンの地図を貰ってくる。
ティールから必要であろう金は貰っているため、特に問題はない。
二人が戻ってくるまでの間、ティールは外でお留守番……まさに子ども扱い。
しかし、ティールは実際のところ、まだ青年ではなく少年。
強さはともかく、年齢的には本当にまだ少年である。
(確か、森林暗危とは違って、一階層から五階層までが洞窟……それで、六階層から十五階層までが遺跡。十六階層からニ十階層までは洞窟って感じで、ちょっと変な入れ替え具合? なんだよな)
今回ティールたちが目指すダンジョン……波状試練は全部で、今のところ四十階層。
ダンジョンの地形は合計で四つ確認されている。
ダンジョンの中でも変わる地形が極端に多い。
(ふっふっふ、楽しみだな…………いや、あまりこういった気持ちばかりが心にあると、万が一に繋がってしまう。気を引き締めておかないと)
楽しむだけで乗り越えられる程甘くない。
事前に得た情報から、それほど攻略難易度が高いことは解っていた。
「っ!!!??? な……なんだ?」
急にギルドの中から人が殴られると音と、何かが壁に激突する音が聞こえた。
「喧嘩……か? まぁ、冒険者ギルドなんだし、訓練場からじゃなくてロビーから喧嘩の音が聞こえてもおかしく………………っ!!!!」
確かに冒険者ギルドという場所を考えれば、ロビーから冒険者同士が殴り合う音が聞こえてきてもおかしくはない。
だが……今ティールは、波状試練の階層情報を買いにギルドの中に入った。
つまり、その喧嘩の中心に二人がいてもおかしくない。
それに気付いたティールは直ぐにギルドの中へと入ったが……視界に入った光景は、倒れている数人の冒険者と、無傷のラストだった。
「お、おいラスト……何があったんだ」
「マスター……いや、特に大したことはない…………俺たちがダンジョンの情報を買い終えた後、そこに転がっている奴らがしつこく声を掛けて来たんだ」
「ティール、ラストを攻めないでやってほしい。多少ラストが煽った形ではあるが、先に拳を振りかざしたのは転がっている奴らだ」
「そ、そっか」
だったら問題無いね……とは断言出来ない。
しかし、絡んで来た相手が先に手を出してきたとなれば、ラストを怒る理由もない。
「……と、とりあえず出ようか」
二人にそう伝え、ギルドから出ようとすると、ラストに殴り飛ばされた人物が大声で口を開こうとした……次の瞬間。
「くそっ!!!!????」
「あの、本当に必要ないんで、これ以上二人に絡まないでくださいね」
ティールが放ったのは……ただの魔力の弾丸。
しかし放たれた弾丸は非常に正確であり、ラストを挑発しようとした男の頬に……ギリギリ当たらない位置を通り過ぎた。
「あっ、弁償はそこに転がってる人たちにお願いします」
「は、はい。かしこまりました」
ギルド職員に請求はあいつらにと頼み、ギルドから退出した三人。
ティールは大して時間を掛けず、その場にいた冒険者たちに自分は見た目通りの冒険者ではないと知らしめた。
「やはり、流石マスターだな」
「……別に言わせておいても良いんだけど、それはそれでラスト、お前が苛立つだろ」
「…………」
敬意を抱く主人が馬鹿にされれば、当然苛立つ。
ティールからそういった事をスルーするメンタルの持ちようを教えられたが、やはり完全にスルーすることは出来ない。
「それにしてもあれだったな。結局のところ、ティールが居ても居なくても、どうやら私たちは絡まれてしまうようだ」
「理由は解らなくもないですけど…………はぁ~~~~、ラストが提案してくれた案は良かったと思ったんだけどな~~~」
内容的には子ども扱いだが、ティールとしてはそこは特に気にしていなかったため、これから無駄に絡まれることが減ると思っていたが……結局のところラストが絡まれてしまうので、儚い理想だった。
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