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全員に権利はある
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「……考え事か、マスター」
現在三人はディレッドビートルに襲われていた街を出発し、目的の街であるジラーニとの間にある街で夕食を食べていた。
「そんなに深い事じゃないよ。ただ、ディレッドビートルの素材を使って、鍛冶師に何か造ってもらおうかと思ってさ」
先日、最終的には三人で協力して討伐したBランクモンスター、赫い甲虫、ディレッドビートル。
強者に分類される三人、全員が強敵と認めるモンスター。
三人のメイン武器が斬撃であるため、甲殻や角は無事と言い難いが、武器の素材として使うには特に問題はない。
「ふむ、良い考えだと思うぞ。ディレッドビートルは非常に手強かった。あのモンスターの素材を使えば武器であれ防具であれ、高品質な逸品が出来上がるのは間違いないだろう」
制作を行う職人の腕にもよるが、一先ず素材が一級品であることは間違いない。
「俺もそう思います。ただ、俺は武器に関しては十分持ってるんで……」
ティールのメイン武器、疾風瞬閃と豹雷はまだまだ十分現役。
そして現在使用しているメイン防具、スカーレッドリザードマンの素材を使用した皮鎧も、買い替えるほどの大きな損傷はない。
「……ラスト、何か新しい武器とか欲しくないか」
「マスター、俺は既にマスターから十分に武器や防具、ポーションなどを貰っている。牙竜が折れた、現在使用している皮鎧が大きく破損してしまったなどであればまだしも、今はまだ新しい物を造る必要はない」
「欲が薄いなぁ~~~」
「それはお互い様というやつだろう」
そもそも奴隷が大きな欲を持ってどうするんだ、とツッコミたいラスト。
ティールはラストを奴隷ではなく一人の仲間として接しており、それをラストも理解している。
何度感謝してもしきれないが、それはそれでこれはこれ。
ラストとしては感謝しているからこそ、それなりの心構えを保ち続けなければならない。
「それはそうかもな。アキラさんは、何かこういうの造りたいなとかありますか」
「私か? 素材の持ち主はティールだろう?」
「いやいや、途中から三人で一緒に戦ったんですから、使う権利は全員にありますよ」
素材を保管するのにティールの空間収納が一番適しているのでティールが保管しているだけであり、ディレッドビートルの素材を使う権利は全員にある……というのがティールの意見。
とはいえ、ラストにとってティールは主人であるため、基本的にそういった使用権利に関しては主人を優先する。
そしてアキラは……ディレッドビートルとの戦いで自分が全く役立っていなかったとは思わない。
ディレッドビートルの最大の武器である角を切断したのはアキラであり、十分過ぎる戦果を挙げた。
だが、アキラは今現在、一人でダンジョンに潜るのには抵抗があるため、良ければ一緒に潜ってくれないかと二人に頼んでいる立場。
そういった事情を忘れてはおらず、ディレッドビートルに関してはダンジョン外で倒したモンスターということもあって、特に使用権利を主張するつもりはなかった。
「あの甲殻や角を使って、新しい刀を造ってもらおうとか考えないんですか?」
「……それは、確かに魅力的ではあるが……無暗に刀を増やしてもという気持ちもある」
現在アキラが使用している愛刀は業物であり、まだ新しい刀を購入するほど錆びても欠けてもいない。
一つランクは落ちるが、予備の刀も有している。
今のところわざわざ新しい刀を用意する必要はない。
「な、なるほど。でも、ディレッドビートルの素材を使った刀だったら、おそらく火属性が付与される。戦うモンスターによっては属性による相性の有利不利があるのを考えれば、火属性の刀を持っていても損はないかと思いますよ」
「むむむ………………分かった。真剣に考えておこう」
持っていて後悔するものではないため、アキラはジラーニに到着するまで真剣に考え続けた。
因みに、ティールはまだアキラに惚れているからディレッドビートルの素材使用を勧めたのではない。
ラストは一瞬そこが関係しているのかと考えたが、主人の顔に一切照れがないのを確認し、それ以上考えるのを止めた。
現在三人はディレッドビートルに襲われていた街を出発し、目的の街であるジラーニとの間にある街で夕食を食べていた。
「そんなに深い事じゃないよ。ただ、ディレッドビートルの素材を使って、鍛冶師に何か造ってもらおうかと思ってさ」
先日、最終的には三人で協力して討伐したBランクモンスター、赫い甲虫、ディレッドビートル。
強者に分類される三人、全員が強敵と認めるモンスター。
三人のメイン武器が斬撃であるため、甲殻や角は無事と言い難いが、武器の素材として使うには特に問題はない。
「ふむ、良い考えだと思うぞ。ディレッドビートルは非常に手強かった。あのモンスターの素材を使えば武器であれ防具であれ、高品質な逸品が出来上がるのは間違いないだろう」
制作を行う職人の腕にもよるが、一先ず素材が一級品であることは間違いない。
「俺もそう思います。ただ、俺は武器に関しては十分持ってるんで……」
ティールのメイン武器、疾風瞬閃と豹雷はまだまだ十分現役。
そして現在使用しているメイン防具、スカーレッドリザードマンの素材を使用した皮鎧も、買い替えるほどの大きな損傷はない。
「……ラスト、何か新しい武器とか欲しくないか」
「マスター、俺は既にマスターから十分に武器や防具、ポーションなどを貰っている。牙竜が折れた、現在使用している皮鎧が大きく破損してしまったなどであればまだしも、今はまだ新しい物を造る必要はない」
「欲が薄いなぁ~~~」
「それはお互い様というやつだろう」
そもそも奴隷が大きな欲を持ってどうするんだ、とツッコミたいラスト。
ティールはラストを奴隷ではなく一人の仲間として接しており、それをラストも理解している。
何度感謝してもしきれないが、それはそれでこれはこれ。
ラストとしては感謝しているからこそ、それなりの心構えを保ち続けなければならない。
「それはそうかもな。アキラさんは、何かこういうの造りたいなとかありますか」
「私か? 素材の持ち主はティールだろう?」
「いやいや、途中から三人で一緒に戦ったんですから、使う権利は全員にありますよ」
素材を保管するのにティールの空間収納が一番適しているのでティールが保管しているだけであり、ディレッドビートルの素材を使う権利は全員にある……というのがティールの意見。
とはいえ、ラストにとってティールは主人であるため、基本的にそういった使用権利に関しては主人を優先する。
そしてアキラは……ディレッドビートルとの戦いで自分が全く役立っていなかったとは思わない。
ディレッドビートルの最大の武器である角を切断したのはアキラであり、十分過ぎる戦果を挙げた。
だが、アキラは今現在、一人でダンジョンに潜るのには抵抗があるため、良ければ一緒に潜ってくれないかと二人に頼んでいる立場。
そういった事情を忘れてはおらず、ディレッドビートルに関してはダンジョン外で倒したモンスターということもあって、特に使用権利を主張するつもりはなかった。
「あの甲殻や角を使って、新しい刀を造ってもらおうとか考えないんですか?」
「……それは、確かに魅力的ではあるが……無暗に刀を増やしてもという気持ちもある」
現在アキラが使用している愛刀は業物であり、まだ新しい刀を購入するほど錆びても欠けてもいない。
一つランクは落ちるが、予備の刀も有している。
今のところわざわざ新しい刀を用意する必要はない。
「な、なるほど。でも、ディレッドビートルの素材を使った刀だったら、おそらく火属性が付与される。戦うモンスターによっては属性による相性の有利不利があるのを考えれば、火属性の刀を持っていても損はないかと思いますよ」
「むむむ………………分かった。真剣に考えておこう」
持っていて後悔するものではないため、アキラはジラーニに到着するまで真剣に考え続けた。
因みに、ティールはまだアキラに惚れているからディレッドビートルの素材使用を勧めたのではない。
ラストは一瞬そこが関係しているのかと考えたが、主人の顔に一切照れがないのを確認し、それ以上考えるのを止めた。
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