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普通は壊滅

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グリフォンを倒したディレッドビートルは確実に一つ上の強さを手に入れた。

そして気付いた……強敵を倒せば、自分は強くなる。
当たり前過ぎる事実かもしれないが、それでも自分の強さに自信があるモンスターがそれに気付き、把握してしまうと……厄介な存在になりえる。

街、という場所には多くの人間がいることは知っていた。
そして人間の中にも強い存在がいることを知っていた……だからこそ、直接攻め込んだ。

同族たちと共にであればともかく、一人で攻めるのは無謀が過ぎる?
ディレッドビートルにとって、そんな考えは一切なかった。
自分の力に自信があり過ぎる? そう思えるかもしれないが……実際のところ、ジラーニにティールたちがいなければ、かなり危なかった。

全滅とはいかずとも、有力な冒険者や騎士たちが多く殺されていたかもしれない。

実際にティールたちが駆け付けるまでに対応していた兵士たちの何人かは死亡している。

「強敵を倒し、自信を身に着け……一歩先に進んだBランクモンスター、か……これ以上なく、恐ろしいね」

ティールとラストはこれまで何度もBランクモンスターを倒してきた。
アキラもBランクモンスターとの戦闘経験は何度かあり、彼らの感覚は少々常識から外れてきているが……Bランクモンスターが本気で村を襲えば壊滅し、街を襲っても……その街で活動している冒険者、領主に使える騎士のレベルによっては……同じく壊滅するかもしれない戦闘力を有している。

「そうですね。でも、今日は俺たちが居ますから」

ラストがディレッドビートルと戦い始めてから、既に五分以上が経過していた。

「っ!!!!」

「ッ……タイムリミット、か。マスター」

「そんな大袈裟なことじゃないけど、これ以上時間を掛けるべきではないと思ってね」

「私も戦らせてもらうよ」

「……仕方ない、か。リミット以内に倒せなかった俺が悪い」

「…………………」

ずっと気になっていた二人が参戦した。

一人の竜人族が相手でも中々決着しなかったにもかかわらず、同レベル……もしくはそれ以上の実力を持つ戦闘者の参加。

ディレッドビートルからすれば絶望的な状況……ではなかった。
この脅威を乗り越えることが出来れば、自分は更に強くなることが出来る。

(俺とアキラさんが加わっただけで、自分の方が不利になることぐらいは解ってそうだけど……戦る気満々で、変わらず闘志が燃え上がり続けるね)

昆虫の表情は無機質であり、何を考えているのか非常に解り辛い。

だが……ティールはこの時、ディレッドビートルが凶悪な笑みを浮かべている様な錯覚を得た。

(…………本気で、潰そう)

それほどまでの強敵だと再確認し、パーティーメンバー全員で討伐することに成功。
途中でアキラが抜刀でディレッドビートルの角を切断し、一気に三人が有利になったのだが……赫い甲虫は自身の最大の武器を失っても尚闘志が萎えることはなく、最後の最後まで……果敢に強敵と認めた相手に攻め続けた。

「強かったね」

「あぁ……そうだな」

ラストとしては自分の力だけで倒したいという思いがまだ残っていた為、不服な気持ちがほんの少しだけ顔に出ていた。

「うむ、本当に強かったな。私の刀の方が折れるかと思った」

アキラは途中でディレッドビートル最大の武器である角を切断するという功績を果たしたが、本人としては……ディレッドビートルの振りがティールの援護によって完全ではなかった。
だからこそ、刀が欠けず折れず切断できたという思いがあり……ラストとは少し違うが、今回の戦いでまだまだだと
思い知った。

そして三人はディレッドビートルの解体を終えれば、目的の街に向けて出発しようと思っていたが……領主に引き留められる豪華な料理をご馳走されることになった。
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