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音の正体
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「っ!!??」
朝……七時ごろ。
基本的にティールが目覚めることは少ない時間帯。
しかしこの時、ティールは飛びあがる様にベッドから起きた。
それはティールだけではなく、ラストも同じだった。
「マスター、今のは……」
「宿に泊まってる人間同士が喧嘩を始めた……って感じではなさそうだな」
二人だけではなくアキラも同じく目を覚まし、直ぐに合流した三人は朝食も食べず、音が聞こえた方向へと向かう。
「また音が……盗賊が攻めてきたか?」
「それはさすがにないんじゃないか。小さな村とかならともかく、ここは明らかに街だ」
冒険者や兵士、騎士の質とかはともかく、大規模な盗賊団でもまず攻めようとはしない。
「では、消去法でモンスターということになるか」
「だと思うぞ。多分…………かなり強い」
まだ敵の強さを直感的に測れる距離ではない。
しかし、ティールはこっそり聴覚強化を使用して何かと戦っている者たちの悲鳴を聞き取っていた。
「っ、こいつは……」
ダッシュで現場に到着した三人。
そこにいたのは、一体の赫色の甲殻を持つカブトムシ、ディレッドビートル。
カーターの周辺では……ギルドの記録を遡れば、目撃情報はある。
しかし、その情報はもう何十年も前の話。
基本的にカーターの周りでディレッドビートルが現れるのは非常に珍しく……カーターを拠点として活動する冒険者たちからすれば、あり得ないという感覚の方が近い。
「マスター、まずは俺が前に出る」
「分かった」
「お前たち、どけッ!!!!!」
「「「「「「「ッ!!!???」」」」」」」
既にディレッドビートルと戦っていた兵士や冒険者たちが何事だ? といった眼を向けると、一人の竜人族が大剣を背負って跳び……いきなり最前線に現れた。
「シッ!!!!!」
「ッ!!!!」
振るわれた大剣と赫い角がぶつかり……結果は互角。
両者とも後方に下がる形となった。
(っ……少し、痺れたか)
既に身体強化などのスキルを使用しているディレッドビートルに対し、ラストは初撃から強化系のスキルを発動し、大剣に魔力を纏って振り下ろしたが、結果的にダメージを与えることは敵わなかった。
「お前たち、下がって負傷した仲間の手当てをしていろ」
「なっ!!! まっ」
兵士の一人が言い終わる前に飛び出したラスト。
ラストは……ティール、少し前から共に行動しているアキラと共にであれば一緒に戦う気になるが、残念ながらこの場には共に戦おうと思える強者いない。
下手に一緒に戦ったとしても邪魔になる。
言葉は少々悪いが、それでもそれは兵士や他の冒険者を考えてのものだった。
(ディレッドビートル、か。Bランクのモンスター。初めて見るモンスターだけど……多分、メタルアーマードビートルと同じ強さか?)
初見のモンスターではあるが、以前に似た様なモンスターと戦ったことがあるティール。
転移トラップに引っ掛かってしまった護衛対象を守るために共に転移した部屋で、鋼鉄のカブトムシと遭遇。
思い出しても……かなり強かったと断言出来る。
(それでも、Bランクのモンスターなら……ラスト一人だけでも対処出来ると思ってたけど…………そろそろ、手を貸した方が良いかもしれないな)
ディレッドビートルは火を纏うことが出来る。
その扱いにも慣れており、角に纏い……遠距離攻撃を放つことが可能。
そういった技術面を含めても、ティールはなんだかんだで自分の手助けは必要ないと思っていた。
しかし……それらの技術にではなく、ラストは単純なパワーで押され始めていた。
「ティール、このままラストに戦わせ続けるのか?」
ラストは、ティールの奴隷。
それを知っているアキラは、ラストの主人であるティールに無断で参戦しようとはしなかった。
「もう少しだけ、様子を見ます」
と言いつつも、ティールは直ぐにでも援護が出来るよう、疾風瞬閃を抜剣していた。
朝……七時ごろ。
基本的にティールが目覚めることは少ない時間帯。
しかしこの時、ティールは飛びあがる様にベッドから起きた。
それはティールだけではなく、ラストも同じだった。
「マスター、今のは……」
「宿に泊まってる人間同士が喧嘩を始めた……って感じではなさそうだな」
二人だけではなくアキラも同じく目を覚まし、直ぐに合流した三人は朝食も食べず、音が聞こえた方向へと向かう。
「また音が……盗賊が攻めてきたか?」
「それはさすがにないんじゃないか。小さな村とかならともかく、ここは明らかに街だ」
冒険者や兵士、騎士の質とかはともかく、大規模な盗賊団でもまず攻めようとはしない。
「では、消去法でモンスターということになるか」
「だと思うぞ。多分…………かなり強い」
まだ敵の強さを直感的に測れる距離ではない。
しかし、ティールはこっそり聴覚強化を使用して何かと戦っている者たちの悲鳴を聞き取っていた。
「っ、こいつは……」
ダッシュで現場に到着した三人。
そこにいたのは、一体の赫色の甲殻を持つカブトムシ、ディレッドビートル。
カーターの周辺では……ギルドの記録を遡れば、目撃情報はある。
しかし、その情報はもう何十年も前の話。
基本的にカーターの周りでディレッドビートルが現れるのは非常に珍しく……カーターを拠点として活動する冒険者たちからすれば、あり得ないという感覚の方が近い。
「マスター、まずは俺が前に出る」
「分かった」
「お前たち、どけッ!!!!!」
「「「「「「「ッ!!!???」」」」」」」
既にディレッドビートルと戦っていた兵士や冒険者たちが何事だ? といった眼を向けると、一人の竜人族が大剣を背負って跳び……いきなり最前線に現れた。
「シッ!!!!!」
「ッ!!!!」
振るわれた大剣と赫い角がぶつかり……結果は互角。
両者とも後方に下がる形となった。
(っ……少し、痺れたか)
既に身体強化などのスキルを使用しているディレッドビートルに対し、ラストは初撃から強化系のスキルを発動し、大剣に魔力を纏って振り下ろしたが、結果的にダメージを与えることは敵わなかった。
「お前たち、下がって負傷した仲間の手当てをしていろ」
「なっ!!! まっ」
兵士の一人が言い終わる前に飛び出したラスト。
ラストは……ティール、少し前から共に行動しているアキラと共にであれば一緒に戦う気になるが、残念ながらこの場には共に戦おうと思える強者いない。
下手に一緒に戦ったとしても邪魔になる。
言葉は少々悪いが、それでもそれは兵士や他の冒険者を考えてのものだった。
(ディレッドビートル、か。Bランクのモンスター。初めて見るモンスターだけど……多分、メタルアーマードビートルと同じ強さか?)
初見のモンスターではあるが、以前に似た様なモンスターと戦ったことがあるティール。
転移トラップに引っ掛かってしまった護衛対象を守るために共に転移した部屋で、鋼鉄のカブトムシと遭遇。
思い出しても……かなり強かったと断言出来る。
(それでも、Bランクのモンスターなら……ラスト一人だけでも対処出来ると思ってたけど…………そろそろ、手を貸した方が良いかもしれないな)
ディレッドビートルは火を纏うことが出来る。
その扱いにも慣れており、角に纏い……遠距離攻撃を放つことが可能。
そういった技術面を含めても、ティールはなんだかんだで自分の手助けは必要ないと思っていた。
しかし……それらの技術にではなく、ラストは単純なパワーで押され始めていた。
「ティール、このままラストに戦わせ続けるのか?」
ラストは、ティールの奴隷。
それを知っているアキラは、ラストの主人であるティールに無断で参戦しようとはしなかった。
「もう少しだけ、様子を見ます」
と言いつつも、ティールは直ぐにでも援護が出来るよう、疾風瞬閃を抜剣していた。
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