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良い事尽くし

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「二人に頼みがあるんだが……良いかな」

目的のエルダートレントを倒し終わり、いきなり襲い掛かって来た面倒な黒衣の二人組を倒し終えてから……ティールとラストはまだ次の目的が決まっていなかった。

「内容にもよりますけど、とりあえず聞きますよ」

アキラからの頼み。
隣に座っているラストは……マスターはアキラからの頼みであれば、なんでも頷いてしまうのでは? と、やや失礼な事を考えていた。

そしてそれは……割と間違っていなかった。
とはいえ、アキラも物凄く自分勝手な事を二人に頼もうとはしていなかった。

「もし良かったら、私と一緒にダンジョンに潜ってくれないか」

「ダンジョン、ですか」

「あぁ、そうだ。二人は既に探索の経験があるのだろう」

「えぇ、一応」

全部で十五階層のダンジョン。
しかし、十層のボスモンスターはCランクが一体とDランクが三体。
十五階層のボスモンスターはBランクモンスターが一体。

完全攻略するのは、決して楽なダンジョンではない。
二人はそのダンジョン……森林暗危でモンスターパーティーも経験しているため、十分ダンジョン探索の経験があると言える。

「迷宮、魔窟とも呼ばれるそこは、一人で冒険するには危ない場所なのだろう」

「まぁ……そう、ですね。トラップとかがありますし、ダンジョン内で同じ冒険者に狙われるとかもありますね」

二人は冒険者ではないが、ダンジョンの外でとある貴族の令息から恨みを買い、暗殺者を送り込まれた。

「ふむ、やはり聞きしに勝る魔窟のようだな……と言う訳で、可能であれば二人と一緒にそのダンジョンを探索してみたいのだ」

アキラからの頼みは、少し心配していたラストからしても悪い頼みではなかった。

最終的に決めるのはティールではあるが、ラストは全く反対する気はない。

「俺としては寧ろ嬉しいお誘いですけど……ラストはどうだ?」

「俺も全く構わない。あそこは非常に楽しい場所だからな。ただ、どうせ潜るなら前回とは違うダンジョンが良い」

「確かにそれはそうだな」

二人が了承してくれたことで、真剣な表情だったアキラの顔が嬉しさ満面の笑みに変わり……ティールは必死に隠すも、心の中でその笑みにやられていた。

「じ、実は以前から少し調べていてだな」

嘘ではなく、アキラは本当に二人に出会う前からダンジョンという魔窟に対して調べていた。

「へぇ……面白そうな場所ですね」

「マスターの意言う通り、中々面白そうな場所だな」

アキラが提案したダンジョンは……ベテラン冒険者たちであっても、完全攻略するのは非常に困難な場所。

スーパールーキーたちが順当に成長した面子か……経験豊富に加えて、高い戦闘力と技術力を有しているベテラン達か。
そういったとにかく全体的に見て数が少ない優秀なメンバーでなければ、完全攻略は不可能。

「よし……それじゃ、今度の目的地はここにしましょうか」

闘争心、冒険心が燃え上がる場所。
加えて……もう少し、アキラと共に冒険が続けられる。
ティールに取って良い事尽くしである。

目指す場所は……ジラーニ。

一行はその日に準備を終え、トルトコを出発。

しかし、一行はそのまますんなりと到着することはなく……とある街で一旦足を止めた。

「…………何か、匂うな」

「風呂に入ってなかったからか?」

三人はトルトコからジラーニの途中にある街、カーターに到着し、今夜はそこの宿に泊まろうと決めていた。

「いや、そういう事じゃない。ただ………………ん~~~、言葉に表すのが難しいな」

「解る、解るぞラスト。言葉に表すのは非常に難しいが、とにかく何かを感じるのだろ」

「……物凄く簡単に、大雑把に説明するとそういう事だな」

「あぁ、なるほど。そういう感覚なら、解らなくもないな。でも……ここ、カーターだっけ? 何か周辺に特筆すべき場所ってあったっけ?」

具体的に尋ねられてしまうと、やはり上手く言葉に出来ない。

ただ、そこまで急いでいるというわけでもないので、ティールは数日間だけカーターに滞在してみようと決めた。
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