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もう会えないかもしれない
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「そういえば……ティール君は、子供の頃……今より幼い頃に別の道へ向かった友人たちとは、全く連絡を取っていないのか?」
「…………そう、ですね。本当に全く連絡は取ってません」
初恋の女の子、ミレット。
村の多くの女の子の初恋相手となった美男子、レント。
ティールに絡んできたヤンチャなクソガキ、マックス。
一定の時期から殆ど関わることはなくなっていったが、それでも一応……一応、友人……もしくは腐れ縁と呼べる人物たちと、全く連絡は取っていない。
実家に帰った時に、三人の両親たちから軽い近況報告などは聞いており、元気に学園で頑張ってることだけは知っている。
「そうか。余計なお世話かもしれないが、友人とは会える時に会っておいた方が良いぞ」
「ん~~~~~……なんとなく、解らなくはないんですけど、約一名は絶対に俺と会うなり暴言を吐いてきそうなんですよね」
「??? その人物は……友人なのか?」
「腐れ縁、って感じの人物かと。他の面子は友人と呼べそうなので、そいつらに会うとなったら、絶対に会ってしまうと思うんですよ」
「マスターに暴言、か……」
「ラスト、お願いだから偶々偶然会って、そいつがいきなり暴言を吐いても、思いっきり殴らないでくれよ」
「……三割ぐらいの力なら良いか?」
「いや、とりあえず殴らないでくれ」
「…………分かった」
物凄く不服そうな顔ではあるが、一応出会い頭に殴らないと口にした。
本当に守られるかは……凄く怪しい。
「アキラさんは……今みたいに別の大陸に移る前、いつからかあまり友達と会わなくなったんですか?」
「うむ、そうだな…………というより、多くは家庭に入ってしまってな」
「か、家庭に……つ、つまり結婚した、と?」
「そうだ。おそらく、この大陸と比べて比較的結婚する年齢が早いだろう。私も、武者修行の期限を終えれば、戻って直ぐに結婚する」
「そ、そうでしたね……」
自国、地元……実家に戻れば、直ぐに結婚。
その言葉を聞いたティールは……まだ完治してない傷跡に痛みを感じた。
「何と言うか、結婚すると……あまり会わなくなる。家庭を守るという大事な役目があるからな」
「家庭を守る、ですか」
「そうだ。それに、私の同世代では既に子供を産んでいる者もいる。子供……赤子は自分の子と言えど、世話をするのが難しいだろ」
だろ、と言われてもアラッドに弟はいないため、あまり詳しいことは解らない。
ただ……ラストは解るのか、何度も顔を縦に動かす。
「とはいえ、また集まって話したいとは思う。ティールの場合は……その友人たちも、冒険者になろうとしているのだろ」
「そうですね」
「それなら尚更、彼らの冒険が始まって何かが起こる前に、一度会ってこれまでの事を話し合った方が良いのでは、と思う」
約一名……そこそこ本気で会うと面倒だなと思ってしまう人物がいるものの、確かに……彼らが学園を卒業して冒険者として活動を始めれば……もう二度と会えない可能性は十分にある。
あの村から都会の学園に入学する権利を得た子供たちの中で、ずば抜けた才を持つ者は…………レントのみ。
レントだけが……一般的な意味での頂点に到達出来る可能性を持っている。
他の者たちは、ティールの初恋の相手であるミレットを含めて……どれだけ頑張ってもBランクが限界。
早い段階で強敵と出会ってしまえば、そこで死んでしまう全然あり得る。
(そう、だな…………うん。そう考えると……一度、あいつらがまだ学生の間に、会っておきたいな)
ティールは自分の為に生きると決めている。
彼等が命の危機に瀕する可能性があると解っていても、わざわざ救済系のマジックアイテムを渡してどうこうしようとは思えない。
ただ……それでも、死んだと知ればそれなりに大きな悲しみ感じる相手。
それほど、これまでの人生で出会ってきたなかでも、ティールの価値観の中で決して低くない順位に位置している。
「「「っ!?」」」
軽く過去を思い出し、これからの予定に組み込もうとかと……人間が何かを考えている最中なんて空気を読まずに襲ってくるのが……モンスターである。
「…………そう、ですね。本当に全く連絡は取ってません」
初恋の女の子、ミレット。
村の多くの女の子の初恋相手となった美男子、レント。
ティールに絡んできたヤンチャなクソガキ、マックス。
一定の時期から殆ど関わることはなくなっていったが、それでも一応……一応、友人……もしくは腐れ縁と呼べる人物たちと、全く連絡は取っていない。
実家に帰った時に、三人の両親たちから軽い近況報告などは聞いており、元気に学園で頑張ってることだけは知っている。
「そうか。余計なお世話かもしれないが、友人とは会える時に会っておいた方が良いぞ」
「ん~~~~~……なんとなく、解らなくはないんですけど、約一名は絶対に俺と会うなり暴言を吐いてきそうなんですよね」
「??? その人物は……友人なのか?」
「腐れ縁、って感じの人物かと。他の面子は友人と呼べそうなので、そいつらに会うとなったら、絶対に会ってしまうと思うんですよ」
「マスターに暴言、か……」
「ラスト、お願いだから偶々偶然会って、そいつがいきなり暴言を吐いても、思いっきり殴らないでくれよ」
「……三割ぐらいの力なら良いか?」
「いや、とりあえず殴らないでくれ」
「…………分かった」
物凄く不服そうな顔ではあるが、一応出会い頭に殴らないと口にした。
本当に守られるかは……凄く怪しい。
「アキラさんは……今みたいに別の大陸に移る前、いつからかあまり友達と会わなくなったんですか?」
「うむ、そうだな…………というより、多くは家庭に入ってしまってな」
「か、家庭に……つ、つまり結婚した、と?」
「そうだ。おそらく、この大陸と比べて比較的結婚する年齢が早いだろう。私も、武者修行の期限を終えれば、戻って直ぐに結婚する」
「そ、そうでしたね……」
自国、地元……実家に戻れば、直ぐに結婚。
その言葉を聞いたティールは……まだ完治してない傷跡に痛みを感じた。
「何と言うか、結婚すると……あまり会わなくなる。家庭を守るという大事な役目があるからな」
「家庭を守る、ですか」
「そうだ。それに、私の同世代では既に子供を産んでいる者もいる。子供……赤子は自分の子と言えど、世話をするのが難しいだろ」
だろ、と言われてもアラッドに弟はいないため、あまり詳しいことは解らない。
ただ……ラストは解るのか、何度も顔を縦に動かす。
「とはいえ、また集まって話したいとは思う。ティールの場合は……その友人たちも、冒険者になろうとしているのだろ」
「そうですね」
「それなら尚更、彼らの冒険が始まって何かが起こる前に、一度会ってこれまでの事を話し合った方が良いのでは、と思う」
約一名……そこそこ本気で会うと面倒だなと思ってしまう人物がいるものの、確かに……彼らが学園を卒業して冒険者として活動を始めれば……もう二度と会えない可能性は十分にある。
あの村から都会の学園に入学する権利を得た子供たちの中で、ずば抜けた才を持つ者は…………レントのみ。
レントだけが……一般的な意味での頂点に到達出来る可能性を持っている。
他の者たちは、ティールの初恋の相手であるミレットを含めて……どれだけ頑張ってもBランクが限界。
早い段階で強敵と出会ってしまえば、そこで死んでしまう全然あり得る。
(そう、だな…………うん。そう考えると……一度、あいつらがまだ学生の間に、会っておきたいな)
ティールは自分の為に生きると決めている。
彼等が命の危機に瀕する可能性があると解っていても、わざわざ救済系のマジックアイテムを渡してどうこうしようとは思えない。
ただ……それでも、死んだと知ればそれなりに大きな悲しみ感じる相手。
それほど、これまでの人生で出会ってきたなかでも、ティールの価値観の中で決して低くない順位に位置している。
「「「っ!?」」」
軽く過去を思い出し、これからの予定に組み込もうとかと……人間が何かを考えている最中なんて空気を読まずに襲ってくるのが……モンスターである。
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