上 下
506 / 702

珍しい思考

しおりを挟む
(さて、何で戦うか)

主人はバゼスと戦うことになり、自分は同じ種族の女性冒険者と戦うことになった。

そんな中……ラストは今回の模擬戦、全く本気で戦おうとは思っていなかった。
ロズルから万が一の状況が起きた場合、二人をメインとして対応してほしい……そう伝えられていたこともあり、ゼペラの戦闘力がどれほどのものか測る。

ラストにしては珍しく上から目線な考えで対戦相手を見ていた。

「……ねぇ、私のことを嘗めてるの?」

「いや、そんなことはない」

自然と上から目線な考えになっていることを自覚はしておらず、ハッキリと嘗めてはいないと口にした。

「あんたが使うメイン武器って大剣なんでしょ。なのに、それは何?」

「見ての通り槍だ。以前、ダンジョンに潜った時に宝箱から手に入れた物でな、埃をかぶせておくのは勿体ないと思ってな」

それは解る。
槍をメインに扱うということもあり、ゼペラは槍の目利きに関しては優れていた。

故に取り出された槍が優れた逸品であることは解るが……ラストがそれを扱うに足りる実力者だとは思えない。

「…………まっ、別に良いわ。でも、後で大剣じゃなかったから負けたなんて言い訳はしないでよ」

「勿論だ。そんな事をするようであれば、マスターの隣に立ち続けることなど出来ない」

「二人共、準備は良いか?」

軽い口戦? が終了した二人がゴルダの言葉に頷く。

ゴルダとしてはゼペラの技量を知っていることもあり、ラストに今からでも大剣に変えた方が良いと伝えたかったが……顔を見れば、既に覚悟が決まっていることが解かる。

「模擬戦という事を忘れずに戦うように……では、始め!!!!!」

開始の合図が行われた瞬間……どちらも動かなかった。

(……まるっきりの素人って訳じゃないみたいね)

構え……重心などから、ゼペラはラストが槍に関して全くの素人ではない把握。

(ふむ。自信満々なだけはある……といったところか)

ラストの対応に少しイラっとしているところがあり、ゼペラの圧は普段よりも強く放たれているが……ラストからすれば、これまで対峙してきた強敵と比べれば……適当に楽しめる程度のものであった。

「このままではつまらないな」

そう一言呟き、ラストから一歩踏み出し……突き合いを始めた。

当然、ゼペラはラストの攻撃に引くことなく対応。
即座に回避からカウンター……また防御から攻撃へと即座に移り、実際はどの程度の腕なのかを確かめていく。

(……やはり、技量は俺よりも、上だな。それでこそ、槍で挑む甲斐があるというもの、だ!!)

既に百を越える攻防が行われ、ラストは素直に自分の技量はゼペラよりも下だと認めた。

それはゼペラも同じであり、やはり槍の技量は自分の方が上だと確信。
しかし……まだ強化系のスキルなどを使用していない状態で……その技量を用いて押すことが出来ない。

(チッ!! 身体能力、だけじゃなくて、危機回避能力も、高いわね!!)

隙が大きくなる払いは使用されず、互いに突きをメインに攻防を繰り返すが……その中で、確かにゼペラの技量が為せる技は炸裂していた。

しかし、ラストはこれまでに対槍との経験がゼロではなく、おそらくこういった攻撃が飛んでくるだろうという予想が出来ていた。

そしてラストにはその予想への対処を実行出来る肉体を有している。
故に……その技術に対してタイミングと力を合わせて潰すことも出来る。

「ッ!!! ふぅーーーー……私を相手に、槍で戦うだけの自信に見合う力はあるみたいね」

「それは光栄だ、と言っておこう。それで、まだ戦るのか?」

「当然でしょう!!!!!」

口論し合わなくても解る。
現時点での戦闘内容に限れば、どう考えても自分の負け。

ゼペラとしては勝ち逃げされるなど、堪ったものではない。
強化系スキルを発動し、槍に旋風を纏い、第二ラウンドを始めた。
しおりを挟む
感想 122

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて

ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記  大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。 それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。  生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、 まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。  しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。 無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。 これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?  依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、 いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。 誰かこの悪循環、何とかして! まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて

村人からの貴族様!

森村壱之輔
ファンタジー
リヒャルトは、ノブルマート世界の創造神にして唯一神でもあるマリルーシャ様の加護を受けている稀有な人間である。固有スキルは【鑑定】【アイテムボックス】【多言語理解・翻訳】の三つ。他にも【火・風・土・無・闇・神聖・雷魔法】が使える上に、それぞれLvが3で、【錬金術】も使えるが、Lvは2だ。武術も剣術、双短剣術、投擲術、弓術、罠術、格闘術ともにLv:5にまで達していた。毎日山に入って、山菜採りや小動物を狩ったりしているので、いつの間にか、こうなっていたのだ。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

チュートリアル場所でLv9999になっちゃいました。

ss
ファンタジー
これは、ひょんなことから異世界へと飛ばされた青年の物語である。 高校三年生の竹林 健(たけばやし たける)を含めた地球人100名がなんらかの力により異世界で過ごすことを要求される。 そんな中、安全地帯と呼ばれている最初のリスポーン地点の「チュートリアル場所」で主人公 健はあるスキルによりレベルがMAXまで到達した。 そして、チュートリアル場所で出会った一人の青年 相斗と一緒に異世界へと身を乗り出す。 弱体した異世界を救うために二人は立ち上がる。 ※基本的には毎日7時投稿です。作者は気まぐれなのであくまで目安くらいに思ってください。設定はかなりガバガバしようですので、暖かい目で見てくれたら嬉しいです。 ※コメントはあんまり見れないかもしれません。ランキングが上がっていたら、報告していただいたら嬉しいです。 Hotランキング 1位 ファンタジーランキング 1位 人気ランキング 2位 100000Pt達成!!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...