あっさりと初恋が破れた俺、神からのギフトで倒して殺して奪う

Gai

文字の大きさ
上 下
482 / 723

扱い方が解ってきた

しおりを挟む
とにかく、自身の強い背中を見せ続ける。
それだけであれば……不可能ではないと思ったヴァルターは、集中力が更に高まる。

何だかんだでヴァルターもまだ幼いため、本当はもっと自分に出来ることがあるのではないかと考えてしまう。
しかし、真剣に自身の兄弟関係について悩んでくれる師たちがや、家に仕えている騎士たちもヴァルター自身が直接動くのは難しいと断言する。

そんな中でも、自分に出来ることがあると教えられた。
それは直接関係改善の為に動いているとは言い難いが、それでも可能性の一つとなるのであれば……俄然、意欲が高まるというもの。

(……この前のアドバイスから、聖剣技の技量は順調に高まってる。ただ、暗黒剣技の方が成長幅が大きいな……もしかして、オリアス様や他の兄弟たちとの一件を上手く力に変えられてる、のか?)

まだ子供であるからこそ……仲良くしたいという思いと同時に、何故自分がここまで歩み寄ろうとしているにもかかわらず、あいつらはこの手を振り払おうとするんだ!!! という怒りもある。

戦闘時における感情の大切さを学んだヴァルターは、直ぐに学習してその怒りを上手く剣に乗せていた。

(弟様や他の兄弟たちがヴァルター様に嫉妬するのは解らなくもないが……これはあんまりにも不貞腐れている期間が長いと、手遅れになるぞ)

稽古を終えた翌日、再び街の外に出てモンスターとの実戦訓練を行う。

「ハッ!!!」

「ギギギギィ!!??」

(アイアンアントをあんなにバッサリと……切れ味も徐々に増してきてるか?)

鋼の甲殻を持つアリ、アイアンアント。
ランクはDであるものの、その防御力はDランクの中でもトップクラス。

まだ十歳のヴァルターには荷が重い相手ではあるが……約三分間、じっくりと相手の動きを観察し続け、最後の数撃で一気に追い詰めることに成功。

「お疲れ様です、ヴァルターさん」

「あ、ありがとう、ございます」

先日もゴブリンの上位種やオークなどといった、決して弱くはないモンスターたちと戦ってきたが、まだまだモンスターが発する純粋な殺気には慣れていない模様。

(でも、たった一人でアイアンアントを倒したというのは事実……末恐ろしいとはこのことだな)

お前が言うな、とティールに関わってきた者たちが聞けば、全員同じツッコミをしてもおかしくない。

「ラストから見て、今の戦いはどこか反省点はあったか?」

「…………いや、特にないな」

全くないわけではない。
身体能力の関係上、ヴァルターがアイアンアントの攻撃を回避だけで対応し続けるのは難しい。

何割かの攻撃は聖光、もしくは暗黒を纏った剣で弾きながら対応していた
その対応自体は決して悪いことではないが、あまりそれに頼り過ぎてしまうと肝心な時に魔力が尽きてしまうかもしれない。

何度が一歩奥へ踏み込み、アイアンアントに渾身の一撃を叩きこめる場面はあった。
しかし、更に一歩踏み出すにはリスクが伴う。

まだヴァルターは十歳。
これから……まだこれからが本番であり、成長する重要な時期。
そもそもモンスターと戦うという、実戦訓練を行うだけでも中々の無茶である。

その出来たかもしれない踏み込みについて指摘するというのは、酷であった。

「ラストさん、本当に……ありませんか」

「…………」

だが、アイアンアントと戦っていたヴァルターは気付いていた。

もしかしたら、優しさで隠しているのではないのかと。

「……まだ、先の話だ。今はまだ無茶をする時ではないと思うが……可能なら、一歩踏み出すべき場面がいくつかあった。実戦を考慮すれば、なるべく魔力を温存して倒せることに越したことはない」

「なるほど…………確かに、少し慎重に戦い過ぎたかも、しれません」

「いや、それが悪いわけではないのだがな」

ラストとしても、実戦訓練でそこまで弟子を追い詰めるほど鬼ではなかった。
ただ……ヴァルターは今現在、自分がどれだけ恵まれた環境にいるのか解っているからこそ、一歩前に踏み出せなかった自分を恥じていた。
しおりを挟む
感想 122

あなたにおすすめの小説

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

追放された薬師でしたが、特に気にもしていません 

志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、自身が所属していた冒険者パーティを追い出された薬師のメディ。 まぁ、どうでもいいので特に気にもせずに、会うつもりもないので別の国へ向かってしまった。 だが、密かに彼女を大事にしていた人たちの逆鱗に触れてしまったようであった‥‥‥ たまにやりたくなる短編。 ちょっと連載作品 「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」に登場している方が登場したりしますが、どうぞ読んでみてください。

偽物の侯爵子息は平民落ちのうえに国外追放を言い渡されたので自由に生きる。え?帰ってきてくれ?それは無理というもの

つくも茄子
ファンタジー
サビオ・パッツィーニは、魔術師の家系である名門侯爵家の次男に生まれながら魔力鑑定で『魔力無し』の判定を受けてしまう。魔力がない代わりにずば抜けて優れた頭脳を持つサビオに家族は温かく見守っていた。そんなある日、サビオが侯爵家の人間でない事が判明した。妖精の取り換えっ子だと神官は告げる。本物は家族によく似た天使のような美少年。こうしてサビオは「王家と侯爵家を謀った罪人」として国外追放されてしまった。 隣国でギルド登録したサビオは「黒曜」というギルド名で第二の人生を歩んでいく。

スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?

山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。 2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。 異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。 唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

伯爵家の三男は冒険者を目指す!

おとうふ
ファンタジー
2024年8月、更新再開しました! 佐藤良太はとある高校に通う極普通の高校生である。いつものように彼女の伶奈と一緒に歩いて下校していたところ、信号無視のトラックが猛スピードで突っ込んで来るのが見えた。良太は咄嗟に彼女を突き飛ばしたが、彼は迫り来るトラックを前に為すすべも無く、あっけなくこの世を去った。 彼が最後に見たものは、驚愕した表情で自分を見る彼女と、完全にキメているとしか思えない、トラックの運転手の異常な目だった... (...伶奈、ごめん...) 異世界に転生した良太は、とりあえず父の勧める通りに冒険者を目指すこととなる。学校での出会いや、地球では体験したことのない様々な出来事が彼を待っている。 初めて投稿する作品ですので、温かい目で見ていただければ幸いです。 誤字・脱字やおかしな表現や展開など、指摘があれば遠慮なくお願い致します。 1話1話はとても短くなっていますので、サクサク読めるかなと思います。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

ズボラな私の異世界譚〜あれ?何も始まらない?〜

野鳥
ファンタジー
小町瀬良、享年35歳の枯れ女。日々の生活は会社と自宅の往復で、帰宅途中の不運な事故で死んでしまった。 気が付くと目の前には女神様がいて、私に世界を救えだなんて言い出した。 自慢じゃないけど、私、めちゃくちゃズボラなんで無理です。 そんな主人公が異世界に転生させられ、自由奔放に生きていくお話です。 ※話のストックもない気ままに投稿していきますのでご了承ください。見切り発車もいいとこなので設定は穴だらけです。ご了承ください。 ※シスコンとブラコンタグ増やしました。 短編は何処までが短編か分からないので、長くなりそうなら長編に変更いたします。 ※シスコンタグ変更しました(笑)

処理中です...