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「といった案を口にしていました」
「そうか……報告、ご苦労」
「「失礼しました」」
ヴァルターが実戦を行うために護衛として付き添った騎士と魔法使いの二人は、訓練場でティールが口にしたヴァルター以外の令息たちに対する対応策を伝えた。
二人はヴァルターがノンビーラに戻ってくる最中、賊と裏の連中に襲われたと知っている。
もし……もし、仮に万が一のことが起こればと思うと、その案を当主に報告しない訳にはいかなかった。
フローグラ家の令息が家族殺しの手伝いをするかもしれないと考える時点で不敬ではあるものの、それがまた別のフローグラ家の人間を守る為となれば話は別。
「……ふぅ~~~~~~」
「お疲れですね、当主様。今紅茶を淹れます」
「あぁ、ありがとう」
疲れは書類仕事だけのものではない。
(やはり……そう思うのが自然だ。あの二人は、間違ったことは言っていない)
騎士と魔法使いは「オリアス様、もしくは上の御子息二人がヴァルターを殺す為に、何かしらの情報を他家に渡す可能性があります」と、堂々と口にした訳ではない。
とはいえ、そう言いたいということは貴族であれば、よっぽどの馬鹿でなければ解る。
「……子育てとは、珍しいな」
「そうですね。私も苦労しながら息子たちを育ててきました」
「何か良いアドバイスでもあるか?」
「…………正直に申し上げると、これといったアドバイスはありません。ギャルバ様は当主としてだけではなく、父親としてもご立派に動かれています」
長年フローグラ家に仕え、ギャルバのことを生まれた時から支えている執事から見て、どちらも上手く両立させていると思える。
強いて言えば……あまりにもヴァルターが持つ才が大き過ぎた。
強くなる為には才だけでは足りないが、重要な要素であることに変わりはない。
ヴァルターは才だけではなく、強くなる……諦めない意志の強さも並ではない。
そしてそれがここ最近、偶々ヴァルターや騎士たちの命を助けてくれた冒険者の指導によって花開き始めている。
「ですが、私たち親がどれだけ子の為に動いても、どうしようも出来ないことはあります」
「……お前から見て、あの二人が伝えたティール殿が口にした内容はどうだ」
「オリアス様を騙す形になるかもしれませんが、効果的な手段ではあるかと思います。ティール様が何故このような案を思い付くに至ったのかという疑問は残りますが」
「はっはっは! それはそうだな。本当にまだヴァルターとそこまで歳が変わらない子供なのかと疑ってしまうが……ヴァルターはヴァルターで、オリアスはオリアスなのだと気付かせるには確かに有効な手段だ」
ティールが一先ずオリアスがヴァルターに向ける負の感情を薄める為に思い付いた案とは……それなりに条件が揃った女性冒険者、もしくは女性騎士に依頼をしてオリアスにマンツーマン指導を頼む。
そこで何度も何度もオリアスと一対一で対話する機会を作り……簡単に言ってしまうと、惚れさせる。
勿論、その女性冒険者、女性騎士にオリアスとの結婚を強要するのではない。
あくまで惚れさせるのが目的。
当然ヴァルターはその女性になるべく接触させないようにし、女性の方にもなるべくヴァルターと接触しない様に……会話の中でヴァルターを褒めるようなことはしないでほしいと伝える。
(解る……私にも、恥ずかしながらそういう経験はあった。特に今のオリアスぐらいの年齢であれば、まだそういった効果が望める)
まだ世の中を深く知らない男子にとって、歳上の女性は……その女性にもよるが、それでも何故か魅力的に思えてしまう事が多い。
それをギャルバは……ついでに執事も理解してるからこそ、ティールが口にした案が非常に有効であると感じた。
「……そうと決まれば、善は急げだな」
「情報収集はお任せください」
「頼む。給金は弾もう」
「期待しています」
こうして本格的にティールが口にした案は実行に移されることとなった。
「そうか……報告、ご苦労」
「「失礼しました」」
ヴァルターが実戦を行うために護衛として付き添った騎士と魔法使いの二人は、訓練場でティールが口にしたヴァルター以外の令息たちに対する対応策を伝えた。
二人はヴァルターがノンビーラに戻ってくる最中、賊と裏の連中に襲われたと知っている。
もし……もし、仮に万が一のことが起こればと思うと、その案を当主に報告しない訳にはいかなかった。
フローグラ家の令息が家族殺しの手伝いをするかもしれないと考える時点で不敬ではあるものの、それがまた別のフローグラ家の人間を守る為となれば話は別。
「……ふぅ~~~~~~」
「お疲れですね、当主様。今紅茶を淹れます」
「あぁ、ありがとう」
疲れは書類仕事だけのものではない。
(やはり……そう思うのが自然だ。あの二人は、間違ったことは言っていない)
騎士と魔法使いは「オリアス様、もしくは上の御子息二人がヴァルターを殺す為に、何かしらの情報を他家に渡す可能性があります」と、堂々と口にした訳ではない。
とはいえ、そう言いたいということは貴族であれば、よっぽどの馬鹿でなければ解る。
「……子育てとは、珍しいな」
「そうですね。私も苦労しながら息子たちを育ててきました」
「何か良いアドバイスでもあるか?」
「…………正直に申し上げると、これといったアドバイスはありません。ギャルバ様は当主としてだけではなく、父親としてもご立派に動かれています」
長年フローグラ家に仕え、ギャルバのことを生まれた時から支えている執事から見て、どちらも上手く両立させていると思える。
強いて言えば……あまりにもヴァルターが持つ才が大き過ぎた。
強くなる為には才だけでは足りないが、重要な要素であることに変わりはない。
ヴァルターは才だけではなく、強くなる……諦めない意志の強さも並ではない。
そしてそれがここ最近、偶々ヴァルターや騎士たちの命を助けてくれた冒険者の指導によって花開き始めている。
「ですが、私たち親がどれだけ子の為に動いても、どうしようも出来ないことはあります」
「……お前から見て、あの二人が伝えたティール殿が口にした内容はどうだ」
「オリアス様を騙す形になるかもしれませんが、効果的な手段ではあるかと思います。ティール様が何故このような案を思い付くに至ったのかという疑問は残りますが」
「はっはっは! それはそうだな。本当にまだヴァルターとそこまで歳が変わらない子供なのかと疑ってしまうが……ヴァルターはヴァルターで、オリアスはオリアスなのだと気付かせるには確かに有効な手段だ」
ティールが一先ずオリアスがヴァルターに向ける負の感情を薄める為に思い付いた案とは……それなりに条件が揃った女性冒険者、もしくは女性騎士に依頼をしてオリアスにマンツーマン指導を頼む。
そこで何度も何度もオリアスと一対一で対話する機会を作り……簡単に言ってしまうと、惚れさせる。
勿論、その女性冒険者、女性騎士にオリアスとの結婚を強要するのではない。
あくまで惚れさせるのが目的。
当然ヴァルターはその女性になるべく接触させないようにし、女性の方にもなるべくヴァルターと接触しない様に……会話の中でヴァルターを褒めるようなことはしないでほしいと伝える。
(解る……私にも、恥ずかしながらそういう経験はあった。特に今のオリアスぐらいの年齢であれば、まだそういった効果が望める)
まだ世の中を深く知らない男子にとって、歳上の女性は……その女性にもよるが、それでも何故か魅力的に思えてしまう事が多い。
それをギャルバは……ついでに執事も理解してるからこそ、ティールが口にした案が非常に有効であると感じた。
「……そうと決まれば、善は急げだな」
「情報収集はお任せください」
「頼む。給金は弾もう」
「期待しています」
こうして本格的にティールが口にした案は実行に移されることとなった。
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