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断るには惜しい

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(聖剣技と暗黒剣技の二つを生まれつき持ってる、か……改めて考えると、えげつないな)

聖剣技と暗黒剣技といった超珍しく、尚且つ優秀なスキルを習得している人物は美少年のヴァルター。
そんな彼はまだ十歳という事で体は大きくないが、それでも決してひ弱ではなく、剣を振るえるだけの身体能力は有している。

「ティール殿、ノンビーラに到着した後、何かご予定はありますか?」

「いや、特にないです。最近色々と目標に向かって動き過ぎてたんで、特に目的をつくらずのんびりと旅をしようと思ってたんで」

「そうでしたか……その、もしよろしければ、ヴァルター様に戦い方を教えていただけないでしょうか」

護衛騎士のリーダーである人物の頼みに、先程と同レベルの疑問を感じる。

「……あの、伯爵家には優れた騎士が多くいると思うのですか」

「そう言って頂けると幸いです。ですが、先天性スキルであるにも関わらず、ヴァルター様はまだ聖剣技と暗黒剣技……この二つを自由自在に操る、と言えるレベルには程遠く」

仕える騎士として不躾な言葉であることは解っているが、事実として現状を伝えなければならない。

「……一応こういうことは出来ますけど、こういう技術は役立つんですか?」

ティールは適当に取り出した二振りのロングソードに別の属性魔力を纏わせる。

その技術を見た騎士は確かに驚いた……驚いたが、表情はやや渋い。

「それは、今のところまだ解りません」

「そうですか…………まぁ、でも今後特に予定がないのは事実ですから、別に構いませんよ」

「ほ、本当ですか!!」

「は、はい。本当です」

リースとの会話を思い出し、まだあまり教育、指導系の依頼を受けていないことを思い出した。

(別に無理してギルドから評価を上げる必要はないけど、向こうから依頼を用意してくれるなら、受けないのは勿体ないよな)

とはいえ、ティールとラストに指導という指名依頼を出すか否かはフローグラ家の当主が決めるのだが、ティールの心配はあっさりと解消された。


「それでは、こちらの指名依頼を受けて頂けるということでよろしいでしょうか」

「はい、受けます」

フローグラ伯爵家が治める街、ノンビーラに到着した翌日に冒険者ギルドへ向かうと、早速職員の方から二人に声を掛け、フローグラ伯爵家から届いている指名依頼について伝えられた。

(期間はそれなりに長いけど、白金貨一枚って……超美味しいよな)

金に困らない程貯蓄があるティールだが、やはり金はあるに越したことはない。

「明日からか……」

「浮かない顔だな、マスター」

「そうか?」

「あぁ、あまり良くはないな……俺は、マスターにはそれなりに指導者としての力があると思っている」

「ありがとな。でもな、それだけで上手くいくとは思えなくてな」

指名依頼を受けたのであれば、なるべくヴァルターの力になってあげたいという思いがある。

しかし、残念なことにティールは光と闇属性の魔法スキルを有していない。

(というか、仮にそれらを有していても……その二つのスキルを同時に使用するのは別だよな)

ノンビーラに到着するまでの会話から、ヴァルターが将来的に二刀流で戦える様になりたいことは知っている。
だが、先天性スキルとして二つのスキルを有しているにも関わらず、未だに扱えてるとは言い難い状況。

ティールはそれらの情報から、聖剣技と暗黒剣技を完璧に扱うのには、技術以外の何かが必要なのではないか……と、騎士の一人からヴァルターへの指導を頼まれた時から考えていた。

「……技術だけじゃないなら、どういったからくりなんだろうな」

「同時に二つを発動する方法を考えてるのか?」

「そうだよ。ずっと考え続けてるんだけど、中々良い案が出てこなくてな」

「…………」

出来ることなら自分も考え、アイデアを出したい。

だが、主人よりもそういった才はないラストは下手に何か良い方法はないかと考えられなかった。
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