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それが知りたい

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「こうまでゴブリン、もしくはその上位種がウルフ系のモンスターと共に行動してるってなると、酒場で聞いた話に信憑性が増すな」

昼食時から数時間が経過。
二人の足元にはゴブリンとウルフ系モンスターの死体が転がっていた。

「……そうだな。今日遭遇したゴブリンは、全てウルフ系のモンスター共に俺たちに襲い掛かってきた。だが、まだトップらしき個体が見当たらないな」

「そう簡単には姿を見せないのか、それとも単に別のところで獲物を狩ってるのか、どちらかだろうな」

群れを束ねる個体ほど危機感知力が高い傾向がある為、既にティールとラストという強者に勘付いている可能性があるかもしれない。

「それより、まだ決めてなかったな。ラスト、お前ヴァルガングと戦いたいか?」

「ッ……」

奴隷という立場を考えれば、ラストの答えは一択しかない。
それがどう考えても正解なのだが……そういうのを自分の主人は求めていない。

ある程度ティールのことが解かってきたラストは、素直に自分の気持ちを伝えた。

「あぁ、是非とも戦ってみたい」

「ふふ、そうか……でもあれだよな、ヴァルガングと戦うことになるってことは、そいつが従っているゴブリンの上位種? とも戦うことになるよな」

「おそらくそうなるだろうな」

「……殺れそうか?」

ヴァルガングが従えるゴブリンが、ただのゴブリンとは思えない。

その考えは正しく、ラストも同じことを考えていた。

「問題はない。寧ろ、そちらの方が盛り上がる」

「自信満々だなぁ……分かった。ラストに任せるよ。でも、ヤバそうになったら流石に俺も手を出すからな」

「ふふ、ではそうならないように気を付けなければならないな」

森林暗危の最下層ボス、アサルトレパードとの戦いで何度も苦い思いをした。
最終的には一人で勝てるようにはなったが、それでもティールの様に安定して勝っているとは言い難い内容。

アサルトレパードとヴァルガング……少しタイプは違うが、それでも同じネコ科のモンスター。

苦い思い出を払拭するには絶好の相手だった。


「……どうやら、あそこがゴブリンたちの巣みたいだな」

「随分とそれらしい家が多いな」

「もしかしたら、ゴブリンの中で知能が高い個体がいるのかもな」

夕方手前、二人はゴブリンたちの巣を発見。
そこには多くの建築物があり、ゴブリンたちが出入りしていた。

(規模を考えれば、人が住んでたってのはちょっと考え辛い。というか、ゴブリンって家とかそういうのを求めるのか?)

人間の様に神経質な生き物とは思えない。
だが……今はそんなことどうでも良かった。

「それじゃ、暴れるとするか」

「あぁ、心が躍るな」

適当に複数の攻撃魔法を放ち、まずは遠距離攻撃で奇襲。

「「「「「「「「「ッ!!!???」」」」」」」」」

ゴブリンやウルフ系のモンスターたちは一斉に驚き混乱するが、一体のゴブリンが吼えた。

「ブァアアアアアアアアッ!!!!」

次の瞬間、ゴブリンやウルフ系モンスターたちの表情から不安が消え、闘争心に火が付いた。

(これは……心を落ち着かせただけじゃなくて、戦意を引き上げた……後、身体能力も多少上がったか?)

吼えたゴブリンは群れのトップであり、その雄叫びは味方にバフをかける効果を持つ。
冒険者からすれば、厄介な司令塔だが……ティールとラストを相手にするには、そもそも戦力的に焼け石に水状態だった。

(リーダー気質があるから、ヴァルガングが従ってる……のか? でも、群れが出来上がれば、自然と適した個体がリーダーになって群れを率いるよな)

襲い掛かるゴブリン、ゴブリンの上位種にウルフ系モンスターを蹴散らしながら、まだ尽きない疑問に対して悩む。

「「「「ゲギャギャッ!!!!」」」」

「「「「ガルルゥアアアアッ!!!」」」」

「はいはい、分かった分かった」

決してモンスターたちが人の言葉を喋った訳ではない。

だが、なんとなく言いたいことが解かったティールは考えることを言ったん止め、自身に襲い掛かる敵の始末に専念した。
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