446 / 693
疎かになると、死ぬ
しおりを挟む
「にしても、いきなりBランクのモンスターにソロで挑んだって話を聞いたときは、かなりびっくりしたぜ」
「ジン……あなた、笑い転げてなかった?」
うんうんと頷きながらティールを心配していたと口にするジンに対し、ジト目で睨むリース。
「そりゃお前、ソロで挑んで結局倒しちまったんだ。驚き過ぎて笑い転げるに決まってるだろ」
「……反応に困るところね」
リースもその話を聞いたときは、勿論驚きを隠せなかった。
しかし、ティールの実力を深く知っている者として、数分も考え込むと……あり得なくもないなと納得していた。
「ジンさん、そんなに笑ってたんですか? 俺、一応あの戦いの後、ぶっ倒れたんですよ」
「その話も聞いたぜ。にしても、ダチになった連中を守るためにBランクのモンスターに……よりによってブラッディ―タイガーに挑むなんてな」
「もしかして、過去に戦ったことがあるんですか?」
「いや、先輩冒険者が戦ってるところを見たことがあるだけだ」
ジン自身は実際にブラッディ―タイガーと戦ったことはない。
それでも、記憶を掘り返せば当時の光景を鮮明に思い出せる激闘の一つだった。
「いくらティールでも、その豹雷って武器がなかったらヤバかっただろうな」
「ヤバいどころの話じゃなかったですよ。まっ、緊張感で言えば、ヤドラスの遺跡で遭遇した黒衣の四人組との戦いも負けてませんでしたけど」
「? それは手紙になかった話ね」
ティールは家族を一応心配させない為にも、冒険とはあまり関係無い件に関しては、手紙に記していなかった。
「貴族の学園所属の学生を護衛してたんですけど、途中で怪しげな四人組に遭遇してしまったんですよ。キラータイガーとの遭遇よりも、あの四人組との遭遇の方が命の危機を感じました……本当に、ラストがいなきゃ危なかったです」
「護衛中か~。そりゃ確かに、ブラッディ―タイガーを倒してレベルアップしたティールでも厳しいかもな」
「万全な状況であれば、マスター一人でもなんとかなった筈だ」
それでもティールは強いと主人を褒める。
しかし、その褒め言葉にはさすがにティールも苦笑いを浮かべる。
「そりゃさすがに褒め過ぎだ、ラスト。自分が全体的に平均以上の力を持ってるのは自覚してた。でも、それは向こうも同じ話だっただろ」
ティールは二人にその当時襲って来た四人組の強さを伝える為、亜空間の中から四人の内、一人が使用していた武器……オーバーサイズを取り出す。
「これが、その内の一人が使ってた武器です」
「ほぉ~~~……中々切れ味が鋭そうな得物じゃねぇか」
「ティール、これに鑑定を使っても良いかしら」
「えぇ、勿論」
ランク五のマジックアイテムであり、腕力強化と斬撃の飛距離と範囲と速さの強化。
それらに加えて、生物以外の存在をすり抜けることが出来る凶悪な効果。
オーバーサイズの詳細を知ったリースは、改めて自分の教え子はとんでもなく強いと再把握。
「ティール……良く生き残ったわね」
「運が良かったというのもあります」
謙虚が過ぎると思われる発言に対し、ジンは一切茶化さなかった。
「運の良さもあっただろうな。冒険者が意外と死ぬケースは、対人戦の技術が疎かにしてる場合に起こる。ティールに関しては……俺と偶に戦ってたし、そこら辺が活きたかもな」
「はは、確かにそうですね」
「その一件は確かに可哀想というか、不幸だと思うが……あれだな、ティールだけに要点を絞れば、バカがラストを口説こうとしたのが……また、爆笑ものだよな」
ジンの言葉選びに少しの苛立ちを感じたものの、当時と比べて少し大人になったこともあって「他人から見れば、そう思うものか」と冷静に受け入れる。
「は、ははは。あれに関しては……もう少しこっちの立場も考えてくれって思いましたね」
恋する乙女の暴走は恐ろしい、ティールにとってそんな教訓になる一件だった。
「ジン……あなた、笑い転げてなかった?」
うんうんと頷きながらティールを心配していたと口にするジンに対し、ジト目で睨むリース。
「そりゃお前、ソロで挑んで結局倒しちまったんだ。驚き過ぎて笑い転げるに決まってるだろ」
「……反応に困るところね」
リースもその話を聞いたときは、勿論驚きを隠せなかった。
しかし、ティールの実力を深く知っている者として、数分も考え込むと……あり得なくもないなと納得していた。
「ジンさん、そんなに笑ってたんですか? 俺、一応あの戦いの後、ぶっ倒れたんですよ」
「その話も聞いたぜ。にしても、ダチになった連中を守るためにBランクのモンスターに……よりによってブラッディ―タイガーに挑むなんてな」
「もしかして、過去に戦ったことがあるんですか?」
「いや、先輩冒険者が戦ってるところを見たことがあるだけだ」
ジン自身は実際にブラッディ―タイガーと戦ったことはない。
それでも、記憶を掘り返せば当時の光景を鮮明に思い出せる激闘の一つだった。
「いくらティールでも、その豹雷って武器がなかったらヤバかっただろうな」
「ヤバいどころの話じゃなかったですよ。まっ、緊張感で言えば、ヤドラスの遺跡で遭遇した黒衣の四人組との戦いも負けてませんでしたけど」
「? それは手紙になかった話ね」
ティールは家族を一応心配させない為にも、冒険とはあまり関係無い件に関しては、手紙に記していなかった。
「貴族の学園所属の学生を護衛してたんですけど、途中で怪しげな四人組に遭遇してしまったんですよ。キラータイガーとの遭遇よりも、あの四人組との遭遇の方が命の危機を感じました……本当に、ラストがいなきゃ危なかったです」
「護衛中か~。そりゃ確かに、ブラッディ―タイガーを倒してレベルアップしたティールでも厳しいかもな」
「万全な状況であれば、マスター一人でもなんとかなった筈だ」
それでもティールは強いと主人を褒める。
しかし、その褒め言葉にはさすがにティールも苦笑いを浮かべる。
「そりゃさすがに褒め過ぎだ、ラスト。自分が全体的に平均以上の力を持ってるのは自覚してた。でも、それは向こうも同じ話だっただろ」
ティールは二人にその当時襲って来た四人組の強さを伝える為、亜空間の中から四人の内、一人が使用していた武器……オーバーサイズを取り出す。
「これが、その内の一人が使ってた武器です」
「ほぉ~~~……中々切れ味が鋭そうな得物じゃねぇか」
「ティール、これに鑑定を使っても良いかしら」
「えぇ、勿論」
ランク五のマジックアイテムであり、腕力強化と斬撃の飛距離と範囲と速さの強化。
それらに加えて、生物以外の存在をすり抜けることが出来る凶悪な効果。
オーバーサイズの詳細を知ったリースは、改めて自分の教え子はとんでもなく強いと再把握。
「ティール……良く生き残ったわね」
「運が良かったというのもあります」
謙虚が過ぎると思われる発言に対し、ジンは一切茶化さなかった。
「運の良さもあっただろうな。冒険者が意外と死ぬケースは、対人戦の技術が疎かにしてる場合に起こる。ティールに関しては……俺と偶に戦ってたし、そこら辺が活きたかもな」
「はは、確かにそうですね」
「その一件は確かに可哀想というか、不幸だと思うが……あれだな、ティールだけに要点を絞れば、バカがラストを口説こうとしたのが……また、爆笑ものだよな」
ジンの言葉選びに少しの苛立ちを感じたものの、当時と比べて少し大人になったこともあって「他人から見れば、そう思うものか」と冷静に受け入れる。
「は、ははは。あれに関しては……もう少しこっちの立場も考えてくれって思いましたね」
恋する乙女の暴走は恐ろしい、ティールにとってそんな教訓になる一件だった。
26
お気に入りに追加
1,798
あなたにおすすめの小説
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
私の代わりが見つかったから契約破棄ですか……その代わりの人……私の勘が正しければ……結界詐欺師ですよ
Ryo-k
ファンタジー
「リリーナ! 貴様との契約を破棄する!」
結界魔術師リリーナにそう仰るのは、ライオネル・ウォルツ侯爵。
「彼女は結界魔術師1級を所持している。だから貴様はもう不要だ」
とシュナ・ファールと名乗る別の女性を部屋に呼んで宣言する。
リリーナは結界魔術師2級を所持している。
ライオネルの言葉が本当なら確かにすごいことだ。
……本当なら……ね。
※完結まで執筆済み
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
髪の色は愛の証 〜白髪少年愛される〜
あめ
ファンタジー
髪の色がとてもカラフルな世界。
そんな世界に唯一現れた白髪の少年。
その少年とは神様に転生させられた日本人だった。
その少年が“髪の色=愛の証”とされる世界で愛を知らぬ者として、可愛がられ愛される話。
⚠第1章の主人公は、2歳なのでめっちゃ拙い発音です。滑舌死んでます。
⚠愛されるだけではなく、ちょっと可哀想なお話もあります。
俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
理想郷 - 私と幼馴染みの異世界物語 -
由奈(YUNA)
ファンタジー
1ヶ月前、幼馴染みの井黒揚羽が行方不明になって、私の世界は一変した。
*
どこかへ一人で行けるはずがない病弱な幼馴染みの謎の失踪理由を探して辿り着いたのが都市伝説“ユートピア”という異世界の話だった。
*
私はただ、アゲハを心配だったから、ただそれだけだったのに。
*
理想郷とは名ばかりのその世界で見たのは『破壊者と救済者』二つの勢力が争う荒れ果てた世界だった。
*
*
*
異世界で異能力を手に入れて戦う冒険物語。
※タイトルほどポップな内容ではありません。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から「破壊神」と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる