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体と魂
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闇の魔力を解放させたオーガ……エンソルオーガは体こそ、元々はただのオーガだった。
しかし、その魂は……元人間。
死んだ人間がオーガに転生したのでなく、死んだ人間の魂が死んだオーガの肉体に憑依し、奇跡の生還を果たした。
憑依した魂は、元々冴えない魔術師の青年だった。
青年は自身の肉体、容姿に自信がない。
当然、異性にモテることなく青春時代を過ごした。
出身は平民であり、肉体も容姿も全くダメな青年だったが、それでも魔法の才能だけは並以上の物を持っていた。
その才能と青年の努力の甲斐もあり、青年は魔術師を育成する学園に入学出来た。
そこから卒業するまでの三年間、魔法の腕を磨くことだけに時間を費やす。
並み以上の才能は持っていたが、貴族の令息や令嬢たちはそれと同等、それ以上の才能を持つ者が殆ど。
故に、青年は少しでもダラけ、魔法以外の事に時間を費やせば、彼らに付いて行くことは出来ない……今は下の者たちに追い抜かされてしまう。
その焦りから、学科と実技の勉強、訓練に青春を費やした。
同級生たちが楽しく街を散策したり、恋愛に現を抜かしている間、彼は努力に努力を重ねた。
本当は友人を作り、同級生たちと少しぐらいは遊びたかった。
十代の学生らしく、好きな子の一人や二人はいた。
なんなら、その女子生徒の気を少しでも引くために魔法の腕を磨いた……と言っても過言ではない、かもしれない。
だが……そんな甘い欲を全て捨てて努力し続けた。
そして、トップに立つことは出来なかったが、それでも平民出身の生徒としては歴代最高の成績で卒業することに成功。
教師たちからも将来を期待される存在だった。
青年は卒業後、これから……これからようやく、自分の努力が報われる生活が始まる。
そう思い、顔に出てしまう程に心を躍らせていた。
しかし、現実はそう甘くない。
「えっと、ごめんなさい」
「えっ」
卒業後、気になっていた同僚の女性魔術師に告白した青年。
結果は……残念ながら、玉砕。
魔法の腕は周囲の動力と比べていた青年だが、いかせん……顔面偏差値が三十弱ほどであり、魔法の腕云々や稼ぎ云々関係無しに……女性たちは青年を、まず顔で無理だと判断していた。
青年は自信満々で告白したこともあり、あっさりと玉砕した結果を……受け入れはした。
自分はフラれたという結果を受け入れはしたが、中々立ち直ることが出来なかった。
そんな状態でも、課せられた仕事は行わなければならない。
その任務で……青年は命を落とした。
青年の事を前から鬱陶しく思っていた同僚に嵌められた、という訳ではなく、純粋に討伐任務のモンスターが青年たちの実力を上回っており、退却となったが、青年は運悪く逃げ遅れてしまった。
(恋人が……お嫁さんが、欲しい!!!!!)
死に際、青年が心の底から叫んだ魂の本音は、それだった。
その結果……青年の魂は天に召されることはなく、人間界に留まった。
とはいえ、魂になった青年に意識はなく、偶々近くにあったオーガの死体に憑依する結果となった。
死んだモンスターの肉体に、死んだ人間の魂が憑依する。
これは一切前例がない事情であり、目を覚ました青年は驚きのあまり絶叫。
死に際に恋人がほしい! お嫁さんがほしい! と叫んだ青年にとって、結局は死刑宣告と変わらなかった。
モンスターになったのであれば、モンスターの嫁、番を探せば良い?
残念ながら、肉体はモンスターになっても魂は人のまま。
つまり、雌のモンスターは生理的に受け付けない。
数日間程青年はただただ絶望の中、ボーっと過ごした。
生きる気力が湧かないが、それでももう一度死にたいとも思わない。
そこで青年はようやく理解した。
いや……理解してしまったという方が正しい。
自分は魂こそ人間のままだが、もう……体は立派なモンスターなのだと。
しかし、その魂は……元人間。
死んだ人間がオーガに転生したのでなく、死んだ人間の魂が死んだオーガの肉体に憑依し、奇跡の生還を果たした。
憑依した魂は、元々冴えない魔術師の青年だった。
青年は自身の肉体、容姿に自信がない。
当然、異性にモテることなく青春時代を過ごした。
出身は平民であり、肉体も容姿も全くダメな青年だったが、それでも魔法の才能だけは並以上の物を持っていた。
その才能と青年の努力の甲斐もあり、青年は魔術師を育成する学園に入学出来た。
そこから卒業するまでの三年間、魔法の腕を磨くことだけに時間を費やす。
並み以上の才能は持っていたが、貴族の令息や令嬢たちはそれと同等、それ以上の才能を持つ者が殆ど。
故に、青年は少しでもダラけ、魔法以外の事に時間を費やせば、彼らに付いて行くことは出来ない……今は下の者たちに追い抜かされてしまう。
その焦りから、学科と実技の勉強、訓練に青春を費やした。
同級生たちが楽しく街を散策したり、恋愛に現を抜かしている間、彼は努力に努力を重ねた。
本当は友人を作り、同級生たちと少しぐらいは遊びたかった。
十代の学生らしく、好きな子の一人や二人はいた。
なんなら、その女子生徒の気を少しでも引くために魔法の腕を磨いた……と言っても過言ではない、かもしれない。
だが……そんな甘い欲を全て捨てて努力し続けた。
そして、トップに立つことは出来なかったが、それでも平民出身の生徒としては歴代最高の成績で卒業することに成功。
教師たちからも将来を期待される存在だった。
青年は卒業後、これから……これからようやく、自分の努力が報われる生活が始まる。
そう思い、顔に出てしまう程に心を躍らせていた。
しかし、現実はそう甘くない。
「えっと、ごめんなさい」
「えっ」
卒業後、気になっていた同僚の女性魔術師に告白した青年。
結果は……残念ながら、玉砕。
魔法の腕は周囲の動力と比べていた青年だが、いかせん……顔面偏差値が三十弱ほどであり、魔法の腕云々や稼ぎ云々関係無しに……女性たちは青年を、まず顔で無理だと判断していた。
青年は自信満々で告白したこともあり、あっさりと玉砕した結果を……受け入れはした。
自分はフラれたという結果を受け入れはしたが、中々立ち直ることが出来なかった。
そんな状態でも、課せられた仕事は行わなければならない。
その任務で……青年は命を落とした。
青年の事を前から鬱陶しく思っていた同僚に嵌められた、という訳ではなく、純粋に討伐任務のモンスターが青年たちの実力を上回っており、退却となったが、青年は運悪く逃げ遅れてしまった。
(恋人が……お嫁さんが、欲しい!!!!!)
死に際、青年が心の底から叫んだ魂の本音は、それだった。
その結果……青年の魂は天に召されることはなく、人間界に留まった。
とはいえ、魂になった青年に意識はなく、偶々近くにあったオーガの死体に憑依する結果となった。
死んだモンスターの肉体に、死んだ人間の魂が憑依する。
これは一切前例がない事情であり、目を覚ました青年は驚きのあまり絶叫。
死に際に恋人がほしい! お嫁さんがほしい! と叫んだ青年にとって、結局は死刑宣告と変わらなかった。
モンスターになったのであれば、モンスターの嫁、番を探せば良い?
残念ながら、肉体はモンスターになっても魂は人のまま。
つまり、雌のモンスターは生理的に受け付けない。
数日間程青年はただただ絶望の中、ボーっと過ごした。
生きる気力が湧かないが、それでももう一度死にたいとも思わない。
そこで青年はようやく理解した。
いや……理解してしまったという方が正しい。
自分は魂こそ人間のままだが、もう……体は立派なモンスターなのだと。
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