あっさりと初恋が破れた俺、神からのギフトで倒して殺して奪う

Gai

文字の大きさ
上 下
419 / 727

体と魂

しおりを挟む
闇の魔力を解放させたオーガ……エンソルオーガは体こそ、元々はただのオーガだった。
しかし、その魂は……元人間。

死んだ人間がオーガに転生したのでなく、死んだ人間の魂が死んだオーガの肉体に憑依し、奇跡の生還を果たした。

憑依した魂は、元々冴えない魔術師の青年だった。
青年は自身の肉体、容姿に自信がない。

当然、異性にモテることなく青春時代を過ごした。
出身は平民であり、肉体も容姿も全くダメな青年だったが、それでも魔法の才能だけは並以上の物を持っていた。

その才能と青年の努力の甲斐もあり、青年は魔術師を育成する学園に入学出来た。
そこから卒業するまでの三年間、魔法の腕を磨くことだけに時間を費やす。

並み以上の才能は持っていたが、貴族の令息や令嬢たちはそれと同等、それ以上の才能を持つ者が殆ど。
故に、青年は少しでもダラけ、魔法以外の事に時間を費やせば、彼らに付いて行くことは出来ない……今は下の者たちに追い抜かされてしまう。

その焦りから、学科と実技の勉強、訓練に青春を費やした。

同級生たちが楽しく街を散策したり、恋愛に現を抜かしている間、彼は努力に努力を重ねた。

本当は友人を作り、同級生たちと少しぐらいは遊びたかった。
十代の学生らしく、好きな子の一人や二人はいた。
なんなら、その女子生徒の気を少しでも引くために魔法の腕を磨いた……と言っても過言ではない、かもしれない。

だが……そんな甘い欲を全て捨てて努力し続けた。
そして、トップに立つことは出来なかったが、それでも平民出身の生徒としては歴代最高の成績で卒業することに成功。
教師たちからも将来を期待される存在だった。

青年は卒業後、これから……これからようやく、自分の努力が報われる生活が始まる。
そう思い、顔に出てしまう程に心を躍らせていた。

しかし、現実はそう甘くない。

「えっと、ごめんなさい」

「えっ」

卒業後、気になっていた同僚の女性魔術師に告白した青年。
結果は……残念ながら、玉砕。

魔法の腕は周囲の動力と比べていた青年だが、いかせん……顔面偏差値が三十弱ほどであり、魔法の腕云々や稼ぎ云々関係無しに……女性たちは青年を、まず顔で無理だと判断していた。

青年は自信満々で告白したこともあり、あっさりと玉砕した結果を……受け入れはした。
自分はフラれたという結果を受け入れはしたが、中々立ち直ることが出来なかった。

そんな状態でも、課せられた仕事は行わなければならない。

その任務で……青年は命を落とした。
青年の事を前から鬱陶しく思っていた同僚に嵌められた、という訳ではなく、純粋に討伐任務のモンスターが青年たちの実力を上回っており、退却となったが、青年は運悪く逃げ遅れてしまった。

(恋人が……お嫁さんが、欲しい!!!!!)

死に際、青年が心の底から叫んだ魂の本音は、それだった。

その結果……青年の魂は天に召されることはなく、人間界に留まった。
とはいえ、魂になった青年に意識はなく、偶々近くにあったオーガの死体に憑依する結果となった。

死んだモンスターの肉体に、死んだ人間の魂が憑依する。
これは一切前例がない事情であり、目を覚ました青年は驚きのあまり絶叫。

死に際に恋人がほしい! お嫁さんがほしい! と叫んだ青年にとって、結局は死刑宣告と変わらなかった。

モンスターになったのであれば、モンスターの嫁、番を探せば良い?
残念ながら、肉体はモンスターになっても魂は人のまま。
つまり、雌のモンスターは生理的に受け付けない。

数日間程青年はただただ絶望の中、ボーっと過ごした。
生きる気力が湧かないが、それでももう一度死にたいとも思わない。

そこで青年はようやく理解した。
いや……理解してしまったという方が正しい。
自分は魂こそ人間のままだが、もう……体は立派なモンスターなのだと。
しおりを挟む
感想 122

あなたにおすすめの小説

拝啓、愛しの侯爵様~行き遅れ令嬢ですが、運命の人は案外近くにいたようです~

藤原ライラ
ファンタジー
心を奪われた手紙の先には、運命の人が待っていた――  子爵令嬢のキャロラインは、両親を早くに亡くし、年の離れた弟の面倒を見ているうちにすっかり婚期を逃しつつあった。夜会でも誰からも相手にされない彼女は、新しい出会いを求めて文通を始めることに。届いた美しい字で洗練された内容の手紙に、相手はきっとうんと年上の素敵なおじ様のはずだとキャロラインは予想する。  彼とのやり取りにときめく毎日だがそれに難癖をつける者がいた。幼馴染で侯爵家の嫡男、クリストファーである。 「理想の相手なんかに巡り合えるわけないだろう。現実を見た方がいい」  四つ年下の彼はいつも辛辣で彼女には冷たい。  そんな時キャロラインは、夜会で想像した文通相手とそっくりな人物に出会ってしまう……。  文通相手の正体は一体誰なのか。そしてキャロラインの恋の行方は!? じれじれ両片思いです。 ※他サイトでも掲載しています。 イラスト:ひろ様

伯爵令嬢の秘密の知識

シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のルナリス伯爵家にミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。

前世は最強の宝の持ち腐れ!?二度目の人生は創造神が書き換えた神級スキルで気ままに冒険者します!!

yoshikazu
ファンタジー
主人公クレイは幼い頃に両親を盗賊に殺され物心付いた時には孤児院にいた。このライリー孤児院は子供達に客の依頼仕事をさせ手間賃を稼ぐ商売を生業にしていた。しかしクレイは仕事も遅く何をやっても上手く出来なかった。そしてある日の夜、無実の罪で雪が積もる極寒の夜へと放り出されてしまう。そしてクレイは極寒の中一人寂しく路地裏で生涯を閉じた。 だがクレイの中には創造神アルフェリアが創造した神の称号とスキルが眠っていた。しかし創造神アルフェリアの手違いで神のスキルが使いたくても使えなかったのだ。  創造神アルフェリアはクレイの魂を呼び寄せお詫びに神の称号とスキルを書き換える。それは経験したスキルを自分のものに出来るものであった。  そしてクレイは元居た世界に転生しゼノアとして二度目の人生を始める。ここから前世での惨めな人生を振り払うように神級スキルを引っ提げて冒険者として突き進む少年ゼノアの物語が始まる。

異世界に行ったら才能に満ち溢れていました

みずうし
ファンタジー
銀行に勤めるそこそこ頭はイイところ以外に取り柄のない23歳青山 零 は突如、自称神からの死亡宣言を受けた。そして気がついたら異世界。 異世界ではまるで別人のような体になった零だが、その体には類い稀なる才能が隠されていて....

転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ

karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。 しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。

転生チートは家族のために~ユニークスキルで、快適な異世界生活を送りたい!~

りーさん
ファンタジー
 ある日、異世界に転生したルイ。  前世では、両親が共働きの鍵っ子だったため、寂しい思いをしていたが、今世は優しい家族に囲まれた。  そんな家族と異世界でも楽しく過ごすために、ユニークスキルをいろいろと便利に使っていたら、様々なトラブルに巻き込まれていく。 「家族といたいからほっといてよ!」 ※スキルを本格的に使い出すのは二章からです。

社畜から卒業したんだから異世界を自由に謳歌します

湯崎noa
ファンタジー
ブラック企業に入社して10年が経つ〈宮島〉は、当たり前の様な連続徹夜に心身ともに疲労していた。  そんな時に中高の同級生と再開し、その同級生への相談を行ったところ会社を辞める決意をした。  しかし!! その日の帰り道に全身の力が抜け、線路に倒れ込んでしまった。  そのまま呆気なく宮島の命は尽きてしまう。  この死亡は神様の手違いによるものだった!?  神様からの全力の謝罪を受けて、特殊スキル〈コピー〉を授かり第二の人生を送る事になる。  せっかくブラック企業を卒業して、異世界転生するのだから全力で謳歌してやろうじゃないか!! ※カクヨム、小説家になろう、ノベルバでも連載中

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~

イノナかノかワズ
ファンタジー
 助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。  *話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。  *他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。  *頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。  *無断転載、無断翻訳を禁止します。   小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。 カクヨムにても公開しています。 更新は不定期です。

処理中です...