上 下
414 / 693

驚きの連続

しおりを挟む
「「っ!?」」

(マジか、ちょっと手抜き過ぎたか)

奇襲を仕掛けた二人だったが、武器を持つ二体のオーガは見事に反応し、防御に成功。

「マスター、直ぐに殺すか?」

「……ちょっと気になる。二分から三分ほど戦るぞ」

「分った」

一人一体を相手にし、正面からのバトルがスタート。

「「ガァァアアアアッ!!!!」」

オーガらしく声を荒げて反撃に出る二体。

しかし、二人は開始三十秒ほどで完全に普通のオーガではないと判断。

(このオーガ……いったい何年生きたオーガだ?)

ただ力任せに武器を振るうことはなく、完全に技術を交えてティールの命を刈り取ろうとする。

加えて、攻撃の最中にフェイントを織り交ぜ、二人の呼吸をズラす。
攻撃の中にフェイクを入れることは、決して珍しい動きではなく、戦闘者であれば当たり前の動き。

ただ、モンスターが……加えて、そういった動きをまず使うことがないオーガが使った。
その事実は、二人に決して小さくない衝撃を与えた。

(いや、見た目的に何年も生きたオーガには見えない。なら上位種か?)

ぱっと見は通常種だが、もしかしたら上位種なのかもしれないと思い、鑑定を発動。

しかし、結果は通常のオーガ。
状態も普通である、ただのオーガだった。

(やっぱり普通のオーガか……だとしたら、この技術力は何なんだよ)

二人が完全に押されるほど圧倒的な強さを持っている訳ではないため、戦況は基本的にティールとラストが有利なまま。

それでも、二人は目の前のオーガに対し、興味を持たずにはいられない。

(武器は……モンスターが持っているとは思えないほど、整備されている)

余裕があるティールは、オーガが見た目に似合わない動きをしながら振るう武器を見て、口から感嘆の息が零れた。

(武器を造れる個体がいる? いや、さすがにそれはないか……でも、武器の手入れに関しては誰かに教えられない限り、砥石を使って整備するとか思い付く筈が……っ、まさかこいつら)

戦闘の最中、嫌な予感が浮かび、表情が歪む。

主人と同じく、ラストは表情にこそ現れなかったが、同じ答えに辿り着いた。

(予想してた中で、一番最悪な展開になってそうだな)

とはいえ、欲しい情報は手に入れた。
もう目の前のオーガと戦う必要はないため、倒す準備に移る。

二人がそう決めた瞬間、オーガ側も決意を目に表し……逃亡した。

「「……はっ!!!???」」

追いかける……敵を逃がすまいと、追いかける。
逃げる敵を追いかけるという、常識的な動きを無意識に行うものの、驚きが全く隠せない。

あのオーガが、力が一番の自慢であるオーガが……敵前逃亡。
もうボロボロで戦う意志を持てない程、闘争心がバキバキに折られたという訳ではない。

そうなるのは、これから先の話。
であるにも関わらず、二体はティールとラストから逃げた。

自分たちの攻撃が全く通用しないという点を考えれば、逃げたくなるという心理は理解出来てしまう。
ただ……基本的にそうではないのがオーガという存在。

「ったく、ほんの数分の間に何度も驚かされたな」

「全くもってその通りだな。まさかあのオーガ、敵との戦闘から逃げるとは……やはり、件のオーガが絡んでいるか?」

「絶対に絡んでるだろうな」

結局逃げようとしたところで、オーガが二人から逃げられることはなく、あっさりと首を切断された。

オーガに武器の扱い、人の戦闘技術や、勝てないと感じれば思い切って逃げる。
そういった知識を叩きこんだ存在が、確実にいる。

二人は本日の狩りをその場で切り上げ、デブリフーリルへ戻り、冒険者ギルドへ直行。
採集依頼の報告を終えた後、即座にある意味特殊な二体のオーガについて情報を伝え、持っていた武器は参考資料として引き渡した。

「ティール、これであの女性騎士は今回の件から退くと思うか?」

「ますますこのまま放っておいては駄目だと、討伐に力を入れると思うが」

なんとも騎士の考えらしい答えに、ティールは思わず深いため息を吐いた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

私の代わりが見つかったから契約破棄ですか……その代わりの人……私の勘が正しければ……結界詐欺師ですよ

Ryo-k
ファンタジー
「リリーナ! 貴様との契約を破棄する!」 結界魔術師リリーナにそう仰るのは、ライオネル・ウォルツ侯爵。 「彼女は結界魔術師1級を所持している。だから貴様はもう不要だ」 とシュナ・ファールと名乗る別の女性を部屋に呼んで宣言する。 リリーナは結界魔術師2級を所持している。 ライオネルの言葉が本当なら確かにすごいことだ。 ……本当なら……ね。 ※完結まで執筆済み

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から「破壊神」と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

理想郷 - 私と幼馴染みの異世界物語 -

由奈(YUNA)
ファンタジー
1ヶ月前、幼馴染みの井黒揚羽が行方不明になって、私の世界は一変した。 * どこかへ一人で行けるはずがない病弱な幼馴染みの謎の失踪理由を探して辿り着いたのが都市伝説“ユートピア”という異世界の話だった。 * 私はただ、アゲハを心配だったから、ただそれだけだったのに。 * 理想郷とは名ばかりのその世界で見たのは『破壊者と救済者』二つの勢力が争う荒れ果てた世界だった。 * * * 異世界で異能力を手に入れて戦う冒険物語。 ※タイトルほどポップな内容ではありません。

異世界召喚に巻き込まれたエステティシャンはスキル【手】と【種】でスローライフを満喫します

白雪の雫
ファンタジー
以前に投稿した話をベースにしたもので主人公の名前と年齢が変わっています。 エステティックで働いている霧沢 奈緒美(24)は、擦れ違った数人の女子高生と共に何の前触れもなく異世界に召喚された。 そんな奈緒美に付与されたスキルは【手】と【種】 異世界人と言えば全属性の魔法が使えるとか、どんな傷をも治せるといったスキルが付与されるのが当然なので「使えねぇスキル」と国のトップ達から判断された奈緒美は宮殿から追い出されてしまう。 だが、この【手】と【種】というスキル、使いようによっては非常にチートなものだった。 設定はガバガバ+矛盾がある+ご都合主義+深く考えたら負けである事だけは先に言っておきます。

処理中です...