上 下
411 / 693

最悪な目覚めと覚醒

しおりを挟む
二人は更に噂のモンスター、オーガについて情報を集めた。
ギルドに関しては二人の戦績を知っているため、喜んで情報を与えた。

「なるほどなぁ……いや、理解出来た訳じゃないけど、そういうオーガもいるんだな」

詳しい情報を得たティールは、帰ってきた宿の部屋のベッドで転がりながら、その情報について考え続けていた。

「得た情報からすれば、ある意味オーガらしくないオーガ、といったところだな、マスター」

「そうだな、ラスト。ただ、普通のオーガじゃない……ナイトやウォーリアーよりも上の上位種なのは確実だろうな」

噂のオーガは肉体だけで戦うのではなく、魔法を使いながら戦う。
オーガメイジという珍しい個体は存在するが、肉体はオーガらしくとも、積極的に肉弾戦は行わない。

しかし、生き残った冒険者たちの証言では、肉弾戦と魔法も同時に使用するとのこと。

「戦い方は、ややマスターと似ているな」

「……だな。魔法の発動にも時間が掛かってないっぽいし、同時に行う肉弾戦もモンスターらしからぬ強さだったらしいしからな……まっ、戦うのが本当に楽しみな個体ではある」

周りに同業者や主に女性が居ないからこそ入れる発言。

「ただ、女性ばかりに執着することを考えると……オークやゴブリン並みに性に目覚めた特殊個体のオーガ、といったところか」

「そういう見解になあるよな……無茶苦茶質が悪いというか、恐ろしいな」

「あぁ、そうだな。俺たちからすれば良質な得物ではあるが」

オーガはゴブリンやオークと比べ、元々の戦闘力が高い。
加えて今回の件で動いているオーガは性欲? に目覚めただけではなく、魔法と技術を使用する。

まさに、最悪のオールラウンダーと言える存在。

「それに、人の言葉まで喋る……実行してるのはそのオーガだけだとしても、持ち帰った女性たちを逃がさない様に、同族を従えてるかもな」

「考える頭を持っている個体であれば、間違いなく同族を従えるだろう」

ティールとラストの男しかいないパーティーには関係無いが、女性がメンバーとして活動しているパーティーや、女性だけのパーティーにとっては、悪夢としか思えない存在。

対策として、恥と思いながらも女性メンバーを説得して、件のモンスターを倒せるまで待ちから出ないでもらう。
活動休止を考えるパーティーもいる。

「マスター、早めに動いた方が良い」

「……ギルドが、他の街のギルドに応援を頼むってことか」

「デブリフーリルの戦力が低いとは思わないが、用心するに越したことはないと考えるだろう」

生き残った冒険者たちから報告を受けたギルドの上役たちは、事態を重く見て直ぐにラストが考える行動を起こしていた。

「獲物を取られるのは、癪だな」

そう思うあたり、ティールは中々の少々悪い部類のエゴイストと言えるだろう。

翌日、二人は飯を食べ終えた後、ギルドで依頼を受けずに街を出た。
二人が取った作戦は、何処かに居るかもしれない特殊個体のオーガを探すのではなく、そのオーガが連れ去った女性たちを捉えている場所を探した。

勿論、移動時には強い存在を見逃さない様に、周囲への警戒は怠っていない。

(しかし、人の言葉を喋れるほど、知能が高い……もしかしたら、他種族のモンスターと意思疎通して、万が一の時に手を借りる、なんて約束を結んでたりしないよな?)

限りなく低い可能性であっても、一度頭の中に思い浮かんでしまった可能性は、悲しくも否定出来なかった。

「グガァアアアアッ!!!!」

「ツインヘッドベアーか」

頭が二つに腕が四本の大型熊さん。

普段であれば戦闘欲を満たせると考える二人だが、今回ばかりは判断を変えていた。

「美味そうな肉だな」

牙竜を抜き、襲い掛かる四本腕を切断後、一瞬で背後に回って切断。
思いっきり強化スキルを使ったとはいえ、圧巻の瞬殺劇と言えた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

魔獣の友

猫山知紀
ファンタジー
女冒険者です。魔獣に返り討ちにあったら、竜を殺しにいくことになりました――。 貴族の娘として生まれ、騎士としても活躍していたリディ。18歳になったある日、この国のことをもっと知るために冒険者として国中を巡る旅に出る。 村を転々としながら魔獣の退治を手伝ったりして日銭を稼ぐ中、とある村を旅立とうとしたとき、強大な魔獣が村に近づいているという凶報が入る。 そこで出会ったのは、魔獣であるケルベロス、グリフォン、バジリスクを従えるニケという少年。 ニケは6年前、昔話にうたわれた竜に村を滅ぼされ、竜に復讐するための旅をしていた。 二人は共に旅をすることに決め、竜を殺すために村が消されていると噂される北の地へと向かっていく。

死んだら男女比1:99の異世界に来ていた。SSスキル持ちの僕を冒険者や王女、騎士が奪い合おうとして困っているんですけど!?

わんた
ファンタジー
DVの父から母を守って死ぬと、異世界の住民であるイオディプスの体に乗り移って目覚めた。 ここは、男女比率が1対99に偏っている世界だ。 しかもスキルという特殊能力も存在し、イオディプスは最高ランクSSのスキルブースターをもっている。 他人が持っているスキルの効果を上昇させる効果があり、ブースト対象との仲が良ければ上昇率は高まるうえに、スキルが別物に進化することもある。 本来であれば上位貴族の夫(種馬)として過ごせるほどの能力を持っているのだが、当の本人は自らの価値に気づいていない。 贅沢な暮らしなんてどうでもよく、近くにいる女性を幸せにしたいと願っているのだ。 そんな隙だらけの男を、知り合った女性は見逃さない。 家で監禁しようとする危険な女性や子作りにしか興味のない女性などと、表面上は穏やかな生活をしつつ、一緒に冒険者として活躍する日々が始まった。

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から「破壊神」と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

私の代わりが見つかったから契約破棄ですか……その代わりの人……私の勘が正しければ……結界詐欺師ですよ

Ryo-k
ファンタジー
「リリーナ! 貴様との契約を破棄する!」 結界魔術師リリーナにそう仰るのは、ライオネル・ウォルツ侯爵。 「彼女は結界魔術師1級を所持している。だから貴様はもう不要だ」 とシュナ・ファールと名乗る別の女性を部屋に呼んで宣言する。 リリーナは結界魔術師2級を所持している。 ライオネルの言葉が本当なら確かにすごいことだ。 ……本当なら……ね。 ※完結まで執筆済み

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

固有スキルガチャで最底辺からの大逆転だモ~モンスターのスキルを使えるようになった俺のお気楽ダンジョンライフ~

うみ
ファンタジー
 恵まれない固有スキルを持って生まれたクラウディオだったが、一人、ダンジョンの一階層で宝箱を漁ることで生計を立てていた。  いつものように一階層を探索していたところ、弱い癖に探索者を続けている彼の態度が気に入らない探索者によって深層に飛ばされてしまう。  モンスターに襲われ絶体絶命のピンチに機転を利かせて切り抜けるも、ただの雑魚モンスター一匹を倒したに過ぎなかった。  そこで、クラウディオは固有スキルを入れ替えるアイテムを手に入れ、大逆転。  モンスターの力を吸収できるようになった彼は深層から無事帰還することができた。  その後、彼と同じように深層に転移した探索者の手助けをしたり、彼を深層に飛ばした探索者にお灸をすえたり、と彼の生活が一変する。  稼いだ金で郊外で隠居生活を送ることを目標に今日もまたダンジョンに挑むクラウディオなのであった。 『箱を開けるモ』 「餌は待てと言ってるだろうに」  とあるイベントでくっついてくることになった生意気なマーモットと共に。

処理中です...