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去っても消えない影響

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十五層のボスモンスターを安定して倒せる実力を有しており、依頼もこまめに受ける。

特に自分から問題を起こす様な性格ではない。
加えて、ただ戦闘力が高いだけではなく、モンスターパーティーの様な大乱戦と対峙しても、高い殲滅力を持つ。

そんな二人が旅立ったことを知ると、受付嬢だけではなく、ギルドの上役たちも二人の旅立ちを惜しんだ。

「おっ、ついにあの二人もイガルディスを離れたか」

「あれじゃねぇか、やっぱりそろそろ森林暗危には飽きたんじゃねぇか?」

「森林暗危レベルのダンジョンを攻略するのに、飽きるってことは基本あり得ねぇと思うが……でも、あの二人ならそう感じるのも無理はねぇかもな」

「あの二人、向上心も高いから次はAランクのモンスターを標的にしたんじゃない?」

「……絶対にあり得ないって言えないのが、あの二人の恐ろしいところだよな」

良い出会いだった。
互いに冒険者を続けていれば、また出会えるだろうと思い、今日もダンジョンに向かう。

そんなベテランたちの反応とは違い、冒険者としての活動期間を考えれば同じルーキーである者たちは、なんとも言えない表情をしながら……それでも依頼を受けてモンスターを狩り、またはギルドの訓練場で懸命に得物を振るっていた。

ルーキーたちにとってラストとティールという存在は、非常に目障りだった。

自分たちと歳がそう変わらない……寧ろ歳下であるにも関わらず、高い戦闘力と探索力を有しており、質の高い装備も金も持っている。

ルーキーという立場は同じであっても、何もかもが圧倒的に違う。
そんな存在が消えてくれて、気分は爽快……とはならない。

あまりにも二人の存在感が強く、イガルディスから去った後も、彼らの記憶にはラストとティールの強さが残っている。

「くそっ!!!!」

強くなる為に剣を振るうルーキーは、以前ティールにダル絡みした結果、四肢の骨をバキバキに折られた青年。

特に後遺症が残ることなく、冒険者として復帰したが……その後、ティールやラストを評価する声や話が耳に入らないことはない。
酒場で飯を食べている時などでも、ベテラン冒険者やギルド職員が二人について話していることが多く……二人に対する苛立ち、嫉妬といった感情が止まることはない。

(何が何でも、追いついて、追い抜いてやる!!!!)

とはいえ、ここで折れないのは彼らの強い部分と言えた。

心が弱く、下手なプライドに囚われていれば、一生その位置から前に進めなくなることも珍しくない。

二人との出会いを糧にするか否か、それを決められるのは……やはり彼ら自身。
そこが本物か偽物かを決める分岐点となった。

そんな同じルーキーたちに少なくない影響、衝撃を与えた二人は……現在、デブリフーリルという名の街に滞在していた。

街の大きさは中の上と、それなりの広さを誇り、周辺の土地の気候が極端でもないため、街中は常に活気あふれる状態……なのだが、二人が街に到着する前から、少しずつその活気に陰りが見えていた。

「なぁ、また連れ去られたらしいぞ」

「またかよ。これで何件目だ?」

「十は超えていないっぽいけど……このまま続けば十人は余裕で超えそうだな」

ギルド内で冒険者たちが話している内容は、最近デブリフーリルの住人や、少し離れた場所にある街や村の住人が連れ去られている件について。

街の中で暮らしている住人がいきなり消えることはなく、森や山近くで探索している冒険者や、木の実などを取りに森の中へ向かった女性など。

ここ最近、女性限定で何者かに連れ去られる事件が多発している。

「買取、お願いします」

「はい、かしこまりました」

女性ばかりを狙った事件ということもあり、いつも通り作業をこなす受付嬢だが、その心の中には小さくない怒りが宿っていた。

(……面白そう、って言うのは良くないな。でも、放っておけない事件みたいだし、デブリフーリルに滞在する期間を伸ばしてみるか)

今回の事件に、ティールは動く意思を見せ、翌日からパーティーメンバーのラストと共に調査へ向かった。
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