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侮ってはいない
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「なぁ、あいつ確かロングソード系の武器で戦ってたよな」
「う、うん。そうだった……でも、槍を使ってるね」
ダンジョン探索中、ライガルと戦うティールの姿を偶々発見した冒険者たち。
先日のモンスターパーティー討伐にも参加してたため、全て見てはいないが、ティールだけではなくラストの戦闘スタイルも覚えている。
ラストは大剣を力強く、加えて器用に扱っていた。
それに対して、ティールは二刀流で偶に攻撃魔法を使用する、魔法剣士スタイル。
彼らが見たその情報は間違っていない。
ティールが最も使用する戦闘スタイルはそれだが、現在は風槍を使って十一層から十五層に出現するモンスターの中でも要注意個体、ライガルと互角に渡り合っている。
「ロングソードだけじゃなくて、長槍まで使えるのか? マジで何者なんだよ」
まだまだ一流には届かない腕。
それでも、決してド三流には思えない槍捌きでライガルの動きに対応。
ライガルの咬みつきや爪撃を一度も食らうことなく、確実に風槍による攻撃でダメージを与えていた。
(同業者が見ているな。声を掛けて追い払うべきか? だが、ダンジョンという空間、場所を考えれば戦闘を他者に見られるのは当然……こちら側に追い払う権利はない、か)
ギリギリ睨みつける寸前で止め、現在目の前で楽し気な表情でライガルと戦闘を繰り広げるティールに視線を戻す。
ティールの力を持ってすれば、身体能力を武器にしてライガルを三十秒と掛けずに倒すことは難しくない。
だが、それを抑えて戦うからこそ、実戦で腕を磨くことが出来る。
「槍で、勝っちまいやがった」
勝負が始まってから数分後、ライガルの脳天を貫き、勝利を収めたティール。
一部始終を見ていた同業者たちは、驚き固まり、その場から動けなかった……が、ラストに視線を向けられ「失せろ」と手を振られ、慌てて移動した。
「どうだった、ラスト」
「槍の名手ではないから、偉そうなことは言えないが……二流は卒業した、といったレベルだと思う」
「二流卒業か。悪くないペースだな」
「…………」
悪くない、どころのペースではない。
ラストはその成長速度に感嘆を覚えた。
(元々槍の基礎は出来ていた。故に、直ぐに応用へ取り掛かることが出来た。実戦で実行する方が腕は上がるというが……我が主ながら、恐ろしい人だ)
万が一の危機が身に降りかかれば、他の力で脱することが出来る。
強者こそが実践できる訓練。
他者が聞けば大半は嫉妬する内容だが……今までティールが積み重ねてきた努力と無茶があってこそ、実行出来る内容と言える。
「マスター。アサルトレパードを相手にも、その風槍で挑むのか?」
「…………いや、今回はまだ早いと思ってる」
実戦で槍を使った訓練を始めてから数日。
まだ、どう足掻いても超えられない壁は感じないティール。
もっと今以上の境地に辿り着けるという自信はある。
しかし……壁は超えれば超えるほど分厚く、高くなるもの。
奪えばそのスキルはティールの物ではあるが、完璧に扱えるかどうかは別問題。
(風槍で挑んでみたい気持ちはある。ただ、アサルトレパードが相手ではちょっとな……うん、せめて一流の域に到達してからだな)
先日のモンスターパーティーという大乱戦を超え、確実に一段強くなったティールだが、それでもアサルトレパードという狩人を侮ることはなかった。
万が一の危機を脱する力がある。
本人もそれは自覚しているが、当然相手によって脱することが出来るか否かは変わる。
「まず、アサルトレパードと槍では、ちょっと相性が悪そうだからな」
「ふむ……そうかもしれないな」
ラストは槍を持った自分がアサルトレパードと戦う姿を、脳内でイメージ。
先日はアサルトレパードを相手に勝利を収めたラストだが、脳内の中でとはいえ、自身の負けが浮かんだ。
「それよりマスター、早く解体しよう」
「おっと、忘れてたぜ」
慌ててライガルの解体を始める二人。
そして数日後、当然と言った様子で二人はアサルトレパードを倒し、地上へ戻った。
「う、うん。そうだった……でも、槍を使ってるね」
ダンジョン探索中、ライガルと戦うティールの姿を偶々発見した冒険者たち。
先日のモンスターパーティー討伐にも参加してたため、全て見てはいないが、ティールだけではなくラストの戦闘スタイルも覚えている。
ラストは大剣を力強く、加えて器用に扱っていた。
それに対して、ティールは二刀流で偶に攻撃魔法を使用する、魔法剣士スタイル。
彼らが見たその情報は間違っていない。
ティールが最も使用する戦闘スタイルはそれだが、現在は風槍を使って十一層から十五層に出現するモンスターの中でも要注意個体、ライガルと互角に渡り合っている。
「ロングソードだけじゃなくて、長槍まで使えるのか? マジで何者なんだよ」
まだまだ一流には届かない腕。
それでも、決してド三流には思えない槍捌きでライガルの動きに対応。
ライガルの咬みつきや爪撃を一度も食らうことなく、確実に風槍による攻撃でダメージを与えていた。
(同業者が見ているな。声を掛けて追い払うべきか? だが、ダンジョンという空間、場所を考えれば戦闘を他者に見られるのは当然……こちら側に追い払う権利はない、か)
ギリギリ睨みつける寸前で止め、現在目の前で楽し気な表情でライガルと戦闘を繰り広げるティールに視線を戻す。
ティールの力を持ってすれば、身体能力を武器にしてライガルを三十秒と掛けずに倒すことは難しくない。
だが、それを抑えて戦うからこそ、実戦で腕を磨くことが出来る。
「槍で、勝っちまいやがった」
勝負が始まってから数分後、ライガルの脳天を貫き、勝利を収めたティール。
一部始終を見ていた同業者たちは、驚き固まり、その場から動けなかった……が、ラストに視線を向けられ「失せろ」と手を振られ、慌てて移動した。
「どうだった、ラスト」
「槍の名手ではないから、偉そうなことは言えないが……二流は卒業した、といったレベルだと思う」
「二流卒業か。悪くないペースだな」
「…………」
悪くない、どころのペースではない。
ラストはその成長速度に感嘆を覚えた。
(元々槍の基礎は出来ていた。故に、直ぐに応用へ取り掛かることが出来た。実戦で実行する方が腕は上がるというが……我が主ながら、恐ろしい人だ)
万が一の危機が身に降りかかれば、他の力で脱することが出来る。
強者こそが実践できる訓練。
他者が聞けば大半は嫉妬する内容だが……今までティールが積み重ねてきた努力と無茶があってこそ、実行出来る内容と言える。
「マスター。アサルトレパードを相手にも、その風槍で挑むのか?」
「…………いや、今回はまだ早いと思ってる」
実戦で槍を使った訓練を始めてから数日。
まだ、どう足掻いても超えられない壁は感じないティール。
もっと今以上の境地に辿り着けるという自信はある。
しかし……壁は超えれば超えるほど分厚く、高くなるもの。
奪えばそのスキルはティールの物ではあるが、完璧に扱えるかどうかは別問題。
(風槍で挑んでみたい気持ちはある。ただ、アサルトレパードが相手ではちょっとな……うん、せめて一流の域に到達してからだな)
先日のモンスターパーティーという大乱戦を超え、確実に一段強くなったティールだが、それでもアサルトレパードという狩人を侮ることはなかった。
万が一の危機を脱する力がある。
本人もそれは自覚しているが、当然相手によって脱することが出来るか否かは変わる。
「まず、アサルトレパードと槍では、ちょっと相性が悪そうだからな」
「ふむ……そうかもしれないな」
ラストは槍を持った自分がアサルトレパードと戦う姿を、脳内でイメージ。
先日はアサルトレパードを相手に勝利を収めたラストだが、脳内の中でとはいえ、自身の負けが浮かんだ。
「それよりマスター、早く解体しよう」
「おっと、忘れてたぜ」
慌ててライガルの解体を始める二人。
そして数日後、当然と言った様子で二人はアサルトレパードを倒し、地上へ戻った。
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