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考えるだけ無駄
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無事、モンスターパーティーの討伐が完了。
全てのモンスターを倒したわけではないが、あらかた倒し終えていれば問題はない。
ただ……冒険者たちには、これから十一階層に戻るという、決して楽ではない道のりが待っている。
勿論、休息を取ってから戻るが、超乱戦を経験した後では、休んでもあまり休んだ気にはならない。
(……ぱぱっと帰りたいな)
元々体力があるティールや、そんなティールと一緒に行動しているラストだけは別だったが、ここで別行動を取って他の冒険者に迷惑を掛けようとは思わなかった。
「ティール、よくあのゴリラを倒したな」
「結構ギリギリでしたよ。一発でも攻撃が当たってたら……ゾッとしますね」
再生という、一般の人間が習得出来ないスキルを有しているが、それでも恐ろしいものは恐ろしい。
「本当は俺らが戦るべきだったんだけどな。悪かったな」
「いえ、強敵と戦うのは嫌いじゃないんで」
そもそもアドバースコングとの戦闘には、自分から一番槍として突っ込んだ。
なので、先輩たちにその件に謝れられるのも気持ち悪いと感じる。
「嫌いじゃない、か……ったく、本当に頼もしいな」
十一階層の転移場所までの戻る間、ティールやラストは先輩冒険者たちに囲まれながら過ごしていた。
当然ティールは若干緊張していたが、先輩冒険者たちの中に悪い意味で意地悪な連中はいないため、直ぐにその緊張感は解けた。
その他の冒険者……特に、Dランクの冒険者たちは、討伐前と比べてやや二人に対して嫉妬の気持ちが大きくなっていた。
先輩たちから褒められている二人が羨ましい、自分たちより歳が下なのに、高い実力を身に付けていてズルい。
様々な不満が出てくる。
それでも……今回の討伐戦に参加するだけあって、常識は持っている。
自分たちの考えはただの逆ギレ。
加えて、二人の活躍によって命を救われたルーキーは決して少なくない。
彼ら彼女たちも、命を救ってくれた恩人に対して無礼を働くほど、愚かではない。
なにより……今回の超乱戦で、圧倒的な格の違いを見せ付けられた。
二人を先輩冒険者たちが気に入っている事もあり、下手な絡みをすれば……先輩たちから説教を食らうのは目に見えている。
こうして大人数で十一階層へ戻り、地上に帰還。
ダンジョンの入り口では出張ギルド先の受付嬢や職員が交代で待機しており、ティールたちが戻ってきた瞬間、涙を浮かべて報告を聞くよりも先にギルドへダッシュで戻った。
「おいおい、まずは報告を聞いてくれよ」
「はは、そんなに嬉しかったんだろ。俺たちが戻ってきたってことは、モンスターパーティーの討伐が終了したっていう報告と同じだからな」
「それもそうか」
基本的に、モンスターパーティーによって大量発生した数の、七割から八割ほどを倒せば、目的は倒せたも同然。
もっと数さえ減らしてしまえば、極論アドバースコングを倒す必要はなかった。
とはいえ、あまり数を残してしまえば、地上へモンスターが向かうことはなくなっても、十四層へ降りるのが難しくなることに変わりはなかった。
地上に戻った後、何割かの冒険者はダンジョン周辺の宿屋で寝泊まりし、ティールやラストを含めた主力組は街へ戻り、ギルドマスターを含めたお偉いさん達に内容を報告。
「トップはアドバースコングだったか、良く倒せたな」
「倒したのは俺じゃなくて、このスーパールーキーだぜ」
「それは聞いた……いや、今更疑いはしない。君や、仲間の竜人族の青年の活躍も他ギルドから聞いている」
ギルドマスターだけではなく、他の者たちも二人の功績は聞いていた。
だが……実際にその姿を見ると、やや信じられない部分があるのが否めない。
(これ以上このルーキーの強さに考えても仕方ない。先輩冒険者であるこいつらが認めているんだ。考えるだけ無駄だ)
冒険者たちの証言から、特別戦果を上げた者にはギルドから報酬金が渡され……当然、ティールがトップの報酬金を貰った。
全てのモンスターを倒したわけではないが、あらかた倒し終えていれば問題はない。
ただ……冒険者たちには、これから十一階層に戻るという、決して楽ではない道のりが待っている。
勿論、休息を取ってから戻るが、超乱戦を経験した後では、休んでもあまり休んだ気にはならない。
(……ぱぱっと帰りたいな)
元々体力があるティールや、そんなティールと一緒に行動しているラストだけは別だったが、ここで別行動を取って他の冒険者に迷惑を掛けようとは思わなかった。
「ティール、よくあのゴリラを倒したな」
「結構ギリギリでしたよ。一発でも攻撃が当たってたら……ゾッとしますね」
再生という、一般の人間が習得出来ないスキルを有しているが、それでも恐ろしいものは恐ろしい。
「本当は俺らが戦るべきだったんだけどな。悪かったな」
「いえ、強敵と戦うのは嫌いじゃないんで」
そもそもアドバースコングとの戦闘には、自分から一番槍として突っ込んだ。
なので、先輩たちにその件に謝れられるのも気持ち悪いと感じる。
「嫌いじゃない、か……ったく、本当に頼もしいな」
十一階層の転移場所までの戻る間、ティールやラストは先輩冒険者たちに囲まれながら過ごしていた。
当然ティールは若干緊張していたが、先輩冒険者たちの中に悪い意味で意地悪な連中はいないため、直ぐにその緊張感は解けた。
その他の冒険者……特に、Dランクの冒険者たちは、討伐前と比べてやや二人に対して嫉妬の気持ちが大きくなっていた。
先輩たちから褒められている二人が羨ましい、自分たちより歳が下なのに、高い実力を身に付けていてズルい。
様々な不満が出てくる。
それでも……今回の討伐戦に参加するだけあって、常識は持っている。
自分たちの考えはただの逆ギレ。
加えて、二人の活躍によって命を救われたルーキーは決して少なくない。
彼ら彼女たちも、命を救ってくれた恩人に対して無礼を働くほど、愚かではない。
なにより……今回の超乱戦で、圧倒的な格の違いを見せ付けられた。
二人を先輩冒険者たちが気に入っている事もあり、下手な絡みをすれば……先輩たちから説教を食らうのは目に見えている。
こうして大人数で十一階層へ戻り、地上に帰還。
ダンジョンの入り口では出張ギルド先の受付嬢や職員が交代で待機しており、ティールたちが戻ってきた瞬間、涙を浮かべて報告を聞くよりも先にギルドへダッシュで戻った。
「おいおい、まずは報告を聞いてくれよ」
「はは、そんなに嬉しかったんだろ。俺たちが戻ってきたってことは、モンスターパーティーの討伐が終了したっていう報告と同じだからな」
「それもそうか」
基本的に、モンスターパーティーによって大量発生した数の、七割から八割ほどを倒せば、目的は倒せたも同然。
もっと数さえ減らしてしまえば、極論アドバースコングを倒す必要はなかった。
とはいえ、あまり数を残してしまえば、地上へモンスターが向かうことはなくなっても、十四層へ降りるのが難しくなることに変わりはなかった。
地上に戻った後、何割かの冒険者はダンジョン周辺の宿屋で寝泊まりし、ティールやラストを含めた主力組は街へ戻り、ギルドマスターを含めたお偉いさん達に内容を報告。
「トップはアドバースコングだったか、良く倒せたな」
「倒したのは俺じゃなくて、このスーパールーキーだぜ」
「それは聞いた……いや、今更疑いはしない。君や、仲間の竜人族の青年の活躍も他ギルドから聞いている」
ギルドマスターだけではなく、他の者たちも二人の功績は聞いていた。
だが……実際にその姿を見ると、やや信じられない部分があるのが否めない。
(これ以上このルーキーの強さに考えても仕方ない。先輩冒険者であるこいつらが認めているんだ。考えるだけ無駄だ)
冒険者たちの証言から、特別戦果を上げた者にはギルドから報酬金が渡され……当然、ティールがトップの報酬金を貰った。
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