上 下
387 / 693

基本、拒否しては駄目だが……

しおりを挟む
「? 何かギルド内が騒がしいな」

「そうだな。もしかしたら、アサルトレパード以外のBランクモンスターが現れたのかもしれないな」

「そうだとしたら、是非とも討伐しに行きたいな」

普通は遭遇を恐れてダンジョンに潜らなくなるものだが、二人の常識は他の同業者と異なる為、その程度のイレギュラーでは特に恐れない。

恐れるどころか、嬉々として現場に向かい、強敵に勝負を挑む。

「っ!! ティールとラストか!!!」

「えっ、はい。そうですけど……どうしたんですか?」

二人がギルドに入ると、先輩冒険者の一人が速足で二人の方にやって来た。

「実はな、十三層でモンスターパーティーが起きたんだ」

「っ!!?? なるほど。それでこんなに騒がしかったんですね」

冒険者ギルドは、朝方と夕方以降は基本的に騒がしい。

しかし、本日の騒がしいレベルは少々異常だった。

「十三層となると……結構ヤバい感じですよね」

「け、結構ってな……いや、まぁとにかくヤバい感じなのは間違いない」

ダンジョンで出現するモンスターの強さは、階層によって異なる。

十層より上と、十一階層よりも下では明確な区切りがある。
特例の可能性を除き、過去のデータでは、十層より上の階層で起きたモンスターパーティーのトップは、Cランクモンスター。

しかし、十一階層以降で起きたモンスターパーティーのトップは、どのケースでもBランクモンスターだった。

Bランクモンスターが一体だけであれば、脅威ではあるが、取り除くのは不可能ではない。
イガルディスを拠点とする冒険者たちが協力すれば、大きな被害を出さずに倒せる。

ただ、モンスターパーティーは強力なモンスターが一般階層に出現するだけではなく、特定の階層が大量のモンスターで溢れかえる。

一定の時間までは放置していても、その階層から移動することはないが、放っておけば地上に進出してしまう。
それだけは、なんとしでも阻止しなければならない。

「どんなBランクモンスターがいるか、確認されてるんですか?」

「いや、まだ確認されていないが、報告した冒険者曰く、おそらくコング系のモンスターがトップだ」

コング系とは、見た目がゴリラのモンスター。
一撃の攻撃力が非常に高く、タンク系の冒険者であっても、なるべく攻撃を防ぎたくない。

他にも攻撃力が高いモンスターはいるが、コング系モンスターの一撃は、まさに敵と潰す、圧殺する暴力。

「コング系ですか……メタルアーマードビートルよりは、相性が良いですね」

「……そういえば、事故でそんな馬鹿強いモンスターと戦ってたんだな」

「はい。あの防御力は色々とドン引きでした」

Bランクモンスターとの戦闘を話す際に、自慢することなく……震えることもない。

先輩冒険者は、改めて目の前の少年が理解不能なルーキーだと思い知らされた。
それと同時に、自分たちにとって最大の希望がいると確信。

「と、とりあえずギルドからは、お前ら二人に絶対討伐戦に参加してくれと通達が来る。受けてくれるよな」

「えぇ、勿論」

「当然だ」

二人は異例の速さでCランクに昇格しており、基本的にこういった緊急事態に対し、ギルドから参戦命令が伝えられると、拒否することは出来ない。

無理矢理逃げたところで、永遠に白い眼で見られ続ける。
それが解かっているからこそ、Cランクのベテラン達は逃げようなどと考えてはいないが……若干表情が優れない者たちがチラホラといる。

「良かったぜ。まっ、ギルドからの指令だから、不参加って選択肢はないんだけどな」

二人に参加の意志があることを確認し、ホッと一安心する先輩冒険者。

そんな様子を離れた場所から見ていたDランク以下のルーキーたちは……非常に嫉妬していた。
以前ティールがダル絡みしてきたアンチたちの骨をバキバキに折ったため、二の舞いにりたいとは思わず、特に行動に起こしはしないが……それでも、嫉妬する感情までは止められなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

成長チートと全能神

ハーフ
ファンタジー
居眠り運転の車から20人の命を救った主人公,神代弘樹は実は全能神と魂が一緒だった。人々の命を救った彼は全能神の弟の全智神に成長チートをもらって伯爵の3男として転生する。成長チートと努力と知識と加護で最速で進化し無双する。 戦い、商業、政治、全てで彼は無双する!! ____________________________ 質問、誤字脱字など感想で教えてくださると嬉しいです。

死んだら男女比1:99の異世界に来ていた。SSスキル持ちの僕を冒険者や王女、騎士が奪い合おうとして困っているんですけど!?

わんた
ファンタジー
DVの父から母を守って死ぬと、異世界の住民であるイオディプスの体に乗り移って目覚めた。 ここは、男女比率が1対99に偏っている世界だ。 しかもスキルという特殊能力も存在し、イオディプスは最高ランクSSのスキルブースターをもっている。 他人が持っているスキルの効果を上昇させる効果があり、ブースト対象との仲が良ければ上昇率は高まるうえに、スキルが別物に進化することもある。 本来であれば上位貴族の夫(種馬)として過ごせるほどの能力を持っているのだが、当の本人は自らの価値に気づいていない。 贅沢な暮らしなんてどうでもよく、近くにいる女性を幸せにしたいと願っているのだ。 そんな隙だらけの男を、知り合った女性は見逃さない。 家で監禁しようとする危険な女性や子作りにしか興味のない女性などと、表面上は穏やかな生活をしつつ、一緒に冒険者として活躍する日々が始まった。

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

髪の色は愛の証 〜白髪少年愛される〜

あめ
ファンタジー
髪の色がとてもカラフルな世界。 そんな世界に唯一現れた白髪の少年。 その少年とは神様に転生させられた日本人だった。 その少年が“髪の色=愛の証”とされる世界で愛を知らぬ者として、可愛がられ愛される話。 ⚠第1章の主人公は、2歳なのでめっちゃ拙い発音です。滑舌死んでます。 ⚠愛されるだけではなく、ちょっと可哀想なお話もあります。

理想郷 - 私と幼馴染みの異世界物語 -

由奈(YUNA)
ファンタジー
1ヶ月前、幼馴染みの井黒揚羽が行方不明になって、私の世界は一変した。 * どこかへ一人で行けるはずがない病弱な幼馴染みの謎の失踪理由を探して辿り着いたのが都市伝説“ユートピア”という異世界の話だった。 * 私はただ、アゲハを心配だったから、ただそれだけだったのに。 * 理想郷とは名ばかりのその世界で見たのは『破壊者と救済者』二つの勢力が争う荒れ果てた世界だった。 * * * 異世界で異能力を手に入れて戦う冒険物語。 ※タイトルほどポップな内容ではありません。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

固有スキルガチャで最底辺からの大逆転だモ~モンスターのスキルを使えるようになった俺のお気楽ダンジョンライフ~

うみ
ファンタジー
 恵まれない固有スキルを持って生まれたクラウディオだったが、一人、ダンジョンの一階層で宝箱を漁ることで生計を立てていた。  いつものように一階層を探索していたところ、弱い癖に探索者を続けている彼の態度が気に入らない探索者によって深層に飛ばされてしまう。  モンスターに襲われ絶体絶命のピンチに機転を利かせて切り抜けるも、ただの雑魚モンスター一匹を倒したに過ぎなかった。  そこで、クラウディオは固有スキルを入れ替えるアイテムを手に入れ、大逆転。  モンスターの力を吸収できるようになった彼は深層から無事帰還することができた。  その後、彼と同じように深層に転移した探索者の手助けをしたり、彼を深層に飛ばした探索者にお灸をすえたり、と彼の生活が一変する。  稼いだ金で郊外で隠居生活を送ることを目標に今日もまたダンジョンに挑むクラウディオなのであった。 『箱を開けるモ』 「餌は待てと言ってるだろうに」  とあるイベントでくっついてくることになった生意気なマーモットと共に。

私の代わりが見つかったから契約破棄ですか……その代わりの人……私の勘が正しければ……結界詐欺師ですよ

Ryo-k
ファンタジー
「リリーナ! 貴様との契約を破棄する!」 結界魔術師リリーナにそう仰るのは、ライオネル・ウォルツ侯爵。 「彼女は結界魔術師1級を所持している。だから貴様はもう不要だ」 とシュナ・ファールと名乗る別の女性を部屋に呼んで宣言する。 リリーナは結界魔術師2級を所持している。 ライオネルの言葉が本当なら確かにすごいことだ。 ……本当なら……ね。 ※完結まで執筆済み

処理中です...