373 / 702
臆病? そうは思わない
しおりを挟む
「ふぅ、大量だな」
「あぁ、そうだな」
二人が受けていた依頼、ライガルの肉一頭分。
普通に考えれば、一頭を倒せば十分。
ティールとラストの実力なら、ライガルの肉を無駄に消し飛ばすことなく倒せる。
運良く一体と遭遇した時、ティールはラストにライガルとのバトルを譲った。
だが、その一分後に別のライガルがティールに奇襲を仕掛けた。
「どうやら、本当に運が良いみたいだな」
ライガルとの勝負は、ティールも望むところ。
強敵とのバトルに二人が満足し、両者の戦いが終わった頃……そのタイミングを狙ってか、二人が戦っていた個体よりも大きなライガルが襲い掛かる。
「マスター、俺が戦っても良いか」
「あぁ、良いぞ」
体が大きいということは、それだけ通常の個体と比べて身体能力が高い。
それはティールも理解しているが、それぐらいの差でラストが潰されるとは思っていない。
周囲を警戒しながらも、先に倒し終えた二体の血抜きを行う。
そしてティールが一体の解体を進め始めた頃、決着が着いた。
「にしても、思ったより手強かった感じか?」
「あぁ……ふふ、良い緊張感を得られた」
ラストの腕には二つの切り傷があり、それはライガルの執念が負わせた傷だった。
「そりゃ良かったな」
羨ましいと思いながら、三体の解体をその場で行う。
その日の夕食は、ライガルの肉をふんだんに使用した肉料理。
二人とも腹一杯になるまで食べ……ティールは少々食べ過ぎだと、ほんの少し後悔していた。
「そういえば、今のうちに決めておくか」
翌日も二人は順調に探索を進めている。
そんな中、ティールはラスボスであるアサルトレパードと、どちらが戦うかを今決めようと提案。
「…………今回は、マスターに譲る」
五秒ほど考え込んだ後、ラストはティールに譲ると宣言した。
「おっ? 良いのか??」
「あぁ、言葉通りだ」
「俺としては嬉しいけど……その心は?」
「まだ明確な勝てるイメージがない」
アサルトレパードと対峙した時に、勝てるイメージが浮かばないから挑まない。
人によっては、情けないと馬鹿にするかもしれない。
冒険者ともあろう者が、冒険をしないでどうする……そう思う者もいるかもしれないが、パーティーメンバーであるティールは特にそんな事は思わない。
「そっか。なら、今回は俺が挑むな」
アサルトレパードは、森林暗危の最下層のボス部屋に存在するモンスター。
地上で暴れている様な存在ではなく、倒さなかったからといって、誰かに被害が及ぶわけでもない。
十五層のボス部屋まで辿り着けば、いつでも挑戦することが出来る。
そんな存在だからこそ、今回ラストはあまり無茶をしないと決めた。
無茶をするとしても……それは、勝ち筋が見えた時だけ。
そうこうしているうちに、二人は目的の場所であるボス部屋前に到着した。
「あれって……多分、あの二人だよな」
ティールとラストがボス部屋前に現れると、先に並んでいた冒険者たちが、チラチラと二人の方を見始めた。
この場にいる冒険者たちは、まだ二人が自分たちに絡んで来たルーキーを、本当にボコボコにしたことを知らない。
それでも、現在イガルディスに滞在する優秀な冒険者が、二人は普通ではない……もしかしたら、別格な存在かもしれない……そう評価している事は知っていた。
故に、この場で二人にダル絡みする者はいなかった。
ただ……前回と同じく、ティールは同業者たちに料理を売ることになった。
「ふぅーー……よし」
一人で戦う。
そう決めたティールの顔には、少々緊張の色が浮かんでいた。
(一応、準備はしておくか)
ティールなら……マスターなら、自分とは違って既に勝利のイメージを持っている。
心配するだけ無駄かもしれない。
それでも、ダンジョンでは……命を懸けた戦いでは、何が起こるか分からない。
予想外という言葉を忘れず、ラストもティールと共にボス部屋足を踏み入れた。
「あぁ、そうだな」
二人が受けていた依頼、ライガルの肉一頭分。
普通に考えれば、一頭を倒せば十分。
ティールとラストの実力なら、ライガルの肉を無駄に消し飛ばすことなく倒せる。
運良く一体と遭遇した時、ティールはラストにライガルとのバトルを譲った。
だが、その一分後に別のライガルがティールに奇襲を仕掛けた。
「どうやら、本当に運が良いみたいだな」
ライガルとの勝負は、ティールも望むところ。
強敵とのバトルに二人が満足し、両者の戦いが終わった頃……そのタイミングを狙ってか、二人が戦っていた個体よりも大きなライガルが襲い掛かる。
「マスター、俺が戦っても良いか」
「あぁ、良いぞ」
体が大きいということは、それだけ通常の個体と比べて身体能力が高い。
それはティールも理解しているが、それぐらいの差でラストが潰されるとは思っていない。
周囲を警戒しながらも、先に倒し終えた二体の血抜きを行う。
そしてティールが一体の解体を進め始めた頃、決着が着いた。
「にしても、思ったより手強かった感じか?」
「あぁ……ふふ、良い緊張感を得られた」
ラストの腕には二つの切り傷があり、それはライガルの執念が負わせた傷だった。
「そりゃ良かったな」
羨ましいと思いながら、三体の解体をその場で行う。
その日の夕食は、ライガルの肉をふんだんに使用した肉料理。
二人とも腹一杯になるまで食べ……ティールは少々食べ過ぎだと、ほんの少し後悔していた。
「そういえば、今のうちに決めておくか」
翌日も二人は順調に探索を進めている。
そんな中、ティールはラスボスであるアサルトレパードと、どちらが戦うかを今決めようと提案。
「…………今回は、マスターに譲る」
五秒ほど考え込んだ後、ラストはティールに譲ると宣言した。
「おっ? 良いのか??」
「あぁ、言葉通りだ」
「俺としては嬉しいけど……その心は?」
「まだ明確な勝てるイメージがない」
アサルトレパードと対峙した時に、勝てるイメージが浮かばないから挑まない。
人によっては、情けないと馬鹿にするかもしれない。
冒険者ともあろう者が、冒険をしないでどうする……そう思う者もいるかもしれないが、パーティーメンバーであるティールは特にそんな事は思わない。
「そっか。なら、今回は俺が挑むな」
アサルトレパードは、森林暗危の最下層のボス部屋に存在するモンスター。
地上で暴れている様な存在ではなく、倒さなかったからといって、誰かに被害が及ぶわけでもない。
十五層のボス部屋まで辿り着けば、いつでも挑戦することが出来る。
そんな存在だからこそ、今回ラストはあまり無茶をしないと決めた。
無茶をするとしても……それは、勝ち筋が見えた時だけ。
そうこうしているうちに、二人は目的の場所であるボス部屋前に到着した。
「あれって……多分、あの二人だよな」
ティールとラストがボス部屋前に現れると、先に並んでいた冒険者たちが、チラチラと二人の方を見始めた。
この場にいる冒険者たちは、まだ二人が自分たちに絡んで来たルーキーを、本当にボコボコにしたことを知らない。
それでも、現在イガルディスに滞在する優秀な冒険者が、二人は普通ではない……もしかしたら、別格な存在かもしれない……そう評価している事は知っていた。
故に、この場で二人にダル絡みする者はいなかった。
ただ……前回と同じく、ティールは同業者たちに料理を売ることになった。
「ふぅーー……よし」
一人で戦う。
そう決めたティールの顔には、少々緊張の色が浮かんでいた。
(一応、準備はしておくか)
ティールなら……マスターなら、自分とは違って既に勝利のイメージを持っている。
心配するだけ無駄かもしれない。
それでも、ダンジョンでは……命を懸けた戦いでは、何が起こるか分からない。
予想外という言葉を忘れず、ラストもティールと共にボス部屋足を踏み入れた。
26
お気に入りに追加
1,801
あなたにおすすめの小説
D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが
米俵猫太朗
ファンタジー
ただのサッカーマニアである青年ショーキチはひょんな事から異世界へ転移してしまう。
その世界では女性だけが行うサッカーに似た球技「サッカードウ」が普及しており、折りしもエルフ女子がミノタウロス女子に蹂躙されようとしているところであった。
更衣室に乱入してしまった縁からエルフ女子代表を率いる事になった青年は、秘策「Tバック」と「トップレス」戦術を授け戦いに挑む。
果たしてエルフチームはミノタウロスチームに打ち勝ち、敗者に課される謎の儀式「センシャ」を回避できるのか!?
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。
のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて
ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記
大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。
それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。
生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、
まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。
しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。
無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。
これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?
依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、
いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。
誰かこの悪循環、何とかして!
まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて
俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊
北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。
異世界転生 我が主のために ~不幸から始まる絶対忠義~ 冒険・戦い・感動を織りなすファンタジー
紫電のチュウニー
ファンタジー
第四部第一章 新大陸開始中。 開始中(初投稿作品)
転生前も、転生後も 俺は不幸だった。
生まれる前は弱視。
生まれ変わり後は盲目。
そんな人生をメルザは救ってくれた。
あいつのためならば 俺はどんなことでもしよう。
あいつの傍にずっといて、この生涯を捧げたい。
苦楽を共にする多くの仲間たち。自分たちだけの領域。
オリジナルの世界観で描く 感動ストーリーをお届けします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる