上 下
370 / 693

まだ子供

しおりを挟む
「おい、お前あんま調子に乗ってんじゃねぇぞ」

アサルトレパードの魔石を受付嬢に店、十五層のボスを攻略したという証明を行った二人。

要らない素材は既に買い取ってもらい、もう冒険者ギルドに残る必要はない。
冒険者ギルドから出ていこうとする二人に……まだ、まだ目の前で見た現状を信じられない者がいた。

「いや、特に調子に乗ってないけど」

見たところ、自分たちとそう歳が変わらない者たち。
であれば、敬語を使う必要はないと思い、堂々とした態度で対応。

「金でランクを買おうとして、この恥知らずが!!!」

「……なんか、元気一杯だな」

ティールは受付嬢にアサルトレパードの魔石を見せ、十五層のボスを倒すだけの実力は一応ある、という証明を行った。

これだけの実力があるのだから、今すぐにCランクからBランクに上げろ!! などという無茶苦茶な言葉は吐いていない。

「俺は、俺たちは別に金をランクで買おうとしてないぞ」

「お前ら如きが、アサルトレパードを倒せるわけがないだろ!!!」

立った二人でBランクのモンスターを倒した。
この事実を信じられないのは仕方ないが……二人が金でアサルトレパードの魔石を購入したという証拠もない。

「だから、先に挑んだ冒険者が傷を負わせてたからって……もう、面倒だな」

目の前の同じルーキーを相手にしたところで、利益はない。

それでも、ここでスルーしたところで、面倒が消えるわけがない。
そこで、ティールは目の前のルーキーたちに真剣勝負を提案した。

何かを賭ける戦いではない。
ただ……己の思いやプライドをぶつけ合う勝負。

(珍しいな)

ラストは、主人が自分たちが勝った場合、対戦相手に何も要求しないことを疑問に思った。

「そういうことか」

真剣勝負が始まってから、周囲に聞こえない程度に小さく呟く。

「ふんっ!!!」

「うわぁあああああっ!!!???」

二人にいちゃもんを付けてきた人族、獣人族のルーキーたちは皆Dランク。
誰一人として、二人と同じCランクの者はいなかった。

普通に考えれば、手加減しなければいけない相手。
ティールは当然本気こそ出していないが……手加減する、という気持ちが微塵もなかった。

「よっ」

「ぎゃあああああっ!!??」

普段のティールであれば、適当にあしらう……しっかりと実力の差を体験させ、現実を突き付ける。

しかし、今回はある意味現実を突き付けているが、その内容は制裁と言って差し支えない内容だった。

指を、足を、腕も……命に関わらない程度に潰していった。
主人がそういった行動を行うのであれば、自分も我慢する必要はない。

ラストは今までティールの命によって我慢してきた鬱憤が、もう暴発する寸前だった。
先程の場面でも、許されるなら直ぐにバカ共の首を絞めたかった。

勿論、この場でもさすがに首を絞めることは出来ない。
それでも……死なない程度であれば、何をしても構わない。
それを理解したラストの行動は早かった。

真剣勝負の内容は二人に嫉妬している者たち一団と、二人のバトル。
ラストが潰す分はまだ残っていた。

「お、おい。止めた方が良いんじゃ」

「いや、まぁ……あいつらから喧嘩売ったんだし」

「殺すつもりはなさそう、だし……放っておいて良いんじゃね?」

どちらが勝つか賭けていた同業者たちも、目の前の惨劇に少々引き始めていた。

(人を馬鹿するのも! いい加減にして欲しい、もんだ!!!)

まずは話し合い。最終手段として暴力。
ぶつからないで解決出来ることに越したことはないと考えているが、ティールはこれでも十二歳の少年。

そう……まだ、十二歳の少年なのだ。
人に馬鹿にされれば、当然イラつく。
威圧すれば竦み、逃げるかもしれない。

それでも……完全にイラつきが消える訳ではない。

「はぁ……もう、いいかな」

誰かが止めに入ることはなく、二人に喧嘩を売ってしまったルーキーたちは、最低でも四肢の骨を完全に砕かれ、芋虫の様に地面に転がることとなった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります

古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。 一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。 一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。 どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。 ※他サイト様でも掲載しております。

処理中です...