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大きな子供?
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「ようやく着いたな」
「あぁ……本当に、長かった」
「いや、本当にそうだな」
ウィスタリスが人の迷惑など考えずにイライラし続け、生活地域を変えなかったお陰で、大分イガルディスに到着するのが遅れた。
ダンジョンやダンジョンの中に眠る宝箱が逃げることはないが、それでも二人の心には「やっと挑戦できる」という思いが非常に大きかった。
とはいえ、既に時刻は夕方近く。
今からダンジョンを潜るのはあまり得策ではない。
ダンジョンに挑戦したいという思いが強い二人だが、ちゃんと考える冷静さは頭に残っている為、早急に宿を探した。
「……いつも思うが、マスターは宿に金を使うんだな」
「そうか?」
泊まれるなら、あまりにも汚い場所でなければ別に良い……そう本人は思っているが、無意識にそこそこランクが高い宿を選んでいる。
「こういう宿の方がベッドや料理の質が高いし……それが主な理由かな」
「真っ当な理由だな」
当然、宿のランクによって質は大きく変化する。
体が資本の冒険者にとって、料理や睡眠の質は次の冒険に繋がる大事な要素。
ティールはあまりそこまで考えていなかったが、そこに金を費やすのは懐事情を考えると、悪い判断ではない。
しっかり腹を満たし、質が高い睡眠を取った二人はまずダンジョン探索に必要な道具の調達……などには行かず、そのまま冒険者ギルドに向かい、地図を買った。
「十五層までの地図をお願いします」
「えっと……お金はありますか?」
「はい、あります」
既に出回っている情報とはいえ、ギルドが所有しているダンジョンの地図、情報はある程度の値段がする。
「おいおい、また死人が増えるぞ」
「二人でダンジョンに挑戦かよ。嘗め腐ってるな」
「運良くCランクのモンスターでも倒せたんじゃないか? そういう奇跡で調子に乗るルーキーはいるからな」
「金だけ持ってるボンボンか……ありゃ早死にするな」
ティールがギルドからダンジョンの地図、情報を買う光景に周囲の冒険者たちは好き勝手に言葉を漏らすが、当の本人は全く気にしていない。
パーティーメンバーであるラストは……最初こそ怒りで頭が沸騰しそうになった。
しかし、先日ティールから教わった内容を思い出す。
(……相手の力量を測れる眼がないと、本当に滑稽に見えるな)
ギリギリで武器の能力に頼ったとはいえ、ティールはソロでBランクモンスターを倒す実力を持つ怪物。
そんな異例の存在に対し、さも自分たちの方が格上だと思いながら見下す発言を連発する。
頭が冷えれば、ティールの言葉通り本当にバカで面白く……世の中の広さを知らない子供に見える。
ただ……二人が冷静にそういったバカたちをスルーしようと思ってたいのだが、口だけではなく体を動かしてしまう馬鹿が現れた。
これから新人潰しが行われる。
そんな未来を思い浮かべ、ニヤニヤと汚い笑みを浮かべる者。
もしくは心配そうな表情を浮かべる者。
大体はその二種類。
しかし、結果的に新人潰しが行われることはなかった。
「何か用か」
「っ!?」
バカな男が距離的にどう見ても、ティールとラストに絡もうとしているとしか思えない。
その距離まで来た瞬間、ラストは急に体の向きを変えた。
戦意ではなく、殺気を放った。
勿論、モンスターと戦っている時に放つような本気ではなく、見せかけ。
特に殺すつもりはない。
殺すつもりはないが、それでも自分の主人がこういった連中の相手をする事を望んでいない。
(な、なんだこのガキの圧は)
ティールと比べればラストは体格が大きく、歳も上。
だが、まだまだ青年の域は超えていない。
それでも、二人に絡もうとした中年冒険者はラストの圧に押され、無意識の内に後退った。
「い、いや。なんでもねぇ、よ」
「そうか」
それならば特に問題はない。
これ以上中年冒険者と話す必要はないと判断し、ラストはティールと共に初のダンジョン探索に向かった。
「あぁ……本当に、長かった」
「いや、本当にそうだな」
ウィスタリスが人の迷惑など考えずにイライラし続け、生活地域を変えなかったお陰で、大分イガルディスに到着するのが遅れた。
ダンジョンやダンジョンの中に眠る宝箱が逃げることはないが、それでも二人の心には「やっと挑戦できる」という思いが非常に大きかった。
とはいえ、既に時刻は夕方近く。
今からダンジョンを潜るのはあまり得策ではない。
ダンジョンに挑戦したいという思いが強い二人だが、ちゃんと考える冷静さは頭に残っている為、早急に宿を探した。
「……いつも思うが、マスターは宿に金を使うんだな」
「そうか?」
泊まれるなら、あまりにも汚い場所でなければ別に良い……そう本人は思っているが、無意識にそこそこランクが高い宿を選んでいる。
「こういう宿の方がベッドや料理の質が高いし……それが主な理由かな」
「真っ当な理由だな」
当然、宿のランクによって質は大きく変化する。
体が資本の冒険者にとって、料理や睡眠の質は次の冒険に繋がる大事な要素。
ティールはあまりそこまで考えていなかったが、そこに金を費やすのは懐事情を考えると、悪い判断ではない。
しっかり腹を満たし、質が高い睡眠を取った二人はまずダンジョン探索に必要な道具の調達……などには行かず、そのまま冒険者ギルドに向かい、地図を買った。
「十五層までの地図をお願いします」
「えっと……お金はありますか?」
「はい、あります」
既に出回っている情報とはいえ、ギルドが所有しているダンジョンの地図、情報はある程度の値段がする。
「おいおい、また死人が増えるぞ」
「二人でダンジョンに挑戦かよ。嘗め腐ってるな」
「運良くCランクのモンスターでも倒せたんじゃないか? そういう奇跡で調子に乗るルーキーはいるからな」
「金だけ持ってるボンボンか……ありゃ早死にするな」
ティールがギルドからダンジョンの地図、情報を買う光景に周囲の冒険者たちは好き勝手に言葉を漏らすが、当の本人は全く気にしていない。
パーティーメンバーであるラストは……最初こそ怒りで頭が沸騰しそうになった。
しかし、先日ティールから教わった内容を思い出す。
(……相手の力量を測れる眼がないと、本当に滑稽に見えるな)
ギリギリで武器の能力に頼ったとはいえ、ティールはソロでBランクモンスターを倒す実力を持つ怪物。
そんな異例の存在に対し、さも自分たちの方が格上だと思いながら見下す発言を連発する。
頭が冷えれば、ティールの言葉通り本当にバカで面白く……世の中の広さを知らない子供に見える。
ただ……二人が冷静にそういったバカたちをスルーしようと思ってたいのだが、口だけではなく体を動かしてしまう馬鹿が現れた。
これから新人潰しが行われる。
そんな未来を思い浮かべ、ニヤニヤと汚い笑みを浮かべる者。
もしくは心配そうな表情を浮かべる者。
大体はその二種類。
しかし、結果的に新人潰しが行われることはなかった。
「何か用か」
「っ!?」
バカな男が距離的にどう見ても、ティールとラストに絡もうとしているとしか思えない。
その距離まで来た瞬間、ラストは急に体の向きを変えた。
戦意ではなく、殺気を放った。
勿論、モンスターと戦っている時に放つような本気ではなく、見せかけ。
特に殺すつもりはない。
殺すつもりはないが、それでも自分の主人がこういった連中の相手をする事を望んでいない。
(な、なんだこのガキの圧は)
ティールと比べればラストは体格が大きく、歳も上。
だが、まだまだ青年の域は超えていない。
それでも、二人に絡もうとした中年冒険者はラストの圧に押され、無意識の内に後退った。
「い、いや。なんでもねぇ、よ」
「そうか」
それならば特に問題はない。
これ以上中年冒険者と話す必要はないと判断し、ラストはティールと共に初のダンジョン探索に向かった。
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