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それは……ありなのか?
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「く、クララさん!! いったい何故ここに!!??」
先程からずっとティールとラストの前に居たのだが、二人に集中し過ぎていたブルードは一切クララの存在に気付けていなかった。
「私が彼らにグリフォンと、グリフォンに従う他のモンスターから救ってくれたからに決まっているじゃないですか」
「そ、そうだったのですね」
情報収集も疎かな状態。
ラストは目の前の令息に呆れた目を向けていた。
(こいつ……本当に貴族の子供なのか? 全員が全員、物事を冷静に考えられる常識人だとは思わないが……それにしても、インタールとは天と地ほどの差があるな)
同じ貴族の子供とは思えないほど、二人に大きな差があるとラストは感じた。
「それはさておき、先程から私たちの命の恩人に対して随分と失礼で身勝手な発言をしていましたが、これ以上その汚い口を開くおつもりですか?)
「ッ!!!」
クララがここまでブルードに対して強気なのは、親の爵位の差があるため。
クララの父親は伯爵であり、ブルードの父親は子爵。
爵位の差が絶対という訳ではないが、この場の状況を考えれば、愚かな行為をしているのは……どう考えてもブルード。
ラストだけではなく、店の従業員や他の客たちもブルードたちに対して呆れた目を向けていた。
その状況にようやく気付いたブルードは更に慌て始める。
「……くっ、失礼する!!!」
「失礼するのは構いませんが、もしお二人に被害を与えようとするならば……解りますよね」
「え、えぇ。解って、いますよ」
クララの貴族特有の圧をぶつけられ、ブルードは冷や汗をダラダラと流しながら、高級喫茶店から出ていった。
「あいつらは、何がしたかったんだ?」
「ブルードはお気に入りのご令嬢と婚約するために、実績を積もうとしているのです」
「婚約するために、実績……そのご令嬢は、強い者が好みということか」
「強いだけで良いという訳ではありませんが、それが自身の婚約者として認める第一要素らしいです」
珍しい条件だと思ったラストは、ここで一つ疑問が浮かんだ。
「強者と認めさせるための実績であれば、複数人で強敵に挑むのはその条件に反するのではないのか?」
「私もそう思うのですが……なりふり構ってられない状態なのでしょう。とはいえ、あのような態度はいただけませんが」
目的のために、常識の範囲内で手を尽くそうとするのは悪いと思わないクララだが、自分が目標を達成出来なかった腹いせに、成功者に難癖をつけるのはよろしいと思わない。
「あまり良くない意味で貴族らしい思考を持っていますが、それでも三男なので大したことは出来ないでしょう」
「そうか……まぁ、あの者が何かをしようとしても、大した結果にならないと思うが」
「ふふ、それは私も同感ですね」
面倒な客が去り、店内に平和が訪れた……にも拘わらず、ティールはまだ頭がショートした状態から戻ってきていなかった。
「マスター、大丈夫か? 意識はあるか」
「ッ!? え、えっと……あっ、ラスト」
「戻ってきたか……先程、面倒な客が来たのだが、覚えているか?」
「面倒な客って……もしかしてイギルか?」
「確かにそいつも面倒な奴ではあったが……覚えていないなら、それはそれで構わない」
実力が足りないくせに、自分たちに咬みついてきたという点に関しては、イギルも二人にとって厄介な客であることに変わりはない。
しかし、イギルという冒険者を全くしらないクララたちにとっては「誰?」と頭にはてなマークが浮かんでしまう。
「マスター……返事はどうするんだ?」
「え、あっ! そうだよな。えっと、その……」
どう返すのが正解なのか悩みに悩むをティールを見て、クララ楽し気に小さく笑った。
「ティールさん、あまり深く考えなくても大丈夫ですよ。ただ、あなたの事が気になっている女性がいる。それだけは覚えていてください」
「わ、分かりました」
その後、紅茶や昼食代を全て奢られ二人はクララたちと別れた。
先程からずっとティールとラストの前に居たのだが、二人に集中し過ぎていたブルードは一切クララの存在に気付けていなかった。
「私が彼らにグリフォンと、グリフォンに従う他のモンスターから救ってくれたからに決まっているじゃないですか」
「そ、そうだったのですね」
情報収集も疎かな状態。
ラストは目の前の令息に呆れた目を向けていた。
(こいつ……本当に貴族の子供なのか? 全員が全員、物事を冷静に考えられる常識人だとは思わないが……それにしても、インタールとは天と地ほどの差があるな)
同じ貴族の子供とは思えないほど、二人に大きな差があるとラストは感じた。
「それはさておき、先程から私たちの命の恩人に対して随分と失礼で身勝手な発言をしていましたが、これ以上その汚い口を開くおつもりですか?)
「ッ!!!」
クララがここまでブルードに対して強気なのは、親の爵位の差があるため。
クララの父親は伯爵であり、ブルードの父親は子爵。
爵位の差が絶対という訳ではないが、この場の状況を考えれば、愚かな行為をしているのは……どう考えてもブルード。
ラストだけではなく、店の従業員や他の客たちもブルードたちに対して呆れた目を向けていた。
その状況にようやく気付いたブルードは更に慌て始める。
「……くっ、失礼する!!!」
「失礼するのは構いませんが、もしお二人に被害を与えようとするならば……解りますよね」
「え、えぇ。解って、いますよ」
クララの貴族特有の圧をぶつけられ、ブルードは冷や汗をダラダラと流しながら、高級喫茶店から出ていった。
「あいつらは、何がしたかったんだ?」
「ブルードはお気に入りのご令嬢と婚約するために、実績を積もうとしているのです」
「婚約するために、実績……そのご令嬢は、強い者が好みということか」
「強いだけで良いという訳ではありませんが、それが自身の婚約者として認める第一要素らしいです」
珍しい条件だと思ったラストは、ここで一つ疑問が浮かんだ。
「強者と認めさせるための実績であれば、複数人で強敵に挑むのはその条件に反するのではないのか?」
「私もそう思うのですが……なりふり構ってられない状態なのでしょう。とはいえ、あのような態度はいただけませんが」
目的のために、常識の範囲内で手を尽くそうとするのは悪いと思わないクララだが、自分が目標を達成出来なかった腹いせに、成功者に難癖をつけるのはよろしいと思わない。
「あまり良くない意味で貴族らしい思考を持っていますが、それでも三男なので大したことは出来ないでしょう」
「そうか……まぁ、あの者が何かをしようとしても、大した結果にならないと思うが」
「ふふ、それは私も同感ですね」
面倒な客が去り、店内に平和が訪れた……にも拘わらず、ティールはまだ頭がショートした状態から戻ってきていなかった。
「マスター、大丈夫か? 意識はあるか」
「ッ!? え、えっと……あっ、ラスト」
「戻ってきたか……先程、面倒な客が来たのだが、覚えているか?」
「面倒な客って……もしかしてイギルか?」
「確かにそいつも面倒な奴ではあったが……覚えていないなら、それはそれで構わない」
実力が足りないくせに、自分たちに咬みついてきたという点に関しては、イギルも二人にとって厄介な客であることに変わりはない。
しかし、イギルという冒険者を全くしらないクララたちにとっては「誰?」と頭にはてなマークが浮かんでしまう。
「マスター……返事はどうするんだ?」
「え、あっ! そうだよな。えっと、その……」
どう返すのが正解なのか悩みに悩むをティールを見て、クララ楽し気に小さく笑った。
「ティールさん、あまり深く考えなくても大丈夫ですよ。ただ、あなたの事が気になっている女性がいる。それだけは覚えていてください」
「わ、分かりました」
その後、紅茶や昼食代を全て奢られ二人はクララたちと別れた。
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