343 / 723
退路なし
しおりを挟む
二人がマリアにダンジョンに質問した翌日、ティールは先日グリフォンとその他の鳥系モンスターに襲われているところを助けたご令嬢と、その護衛たちに捕まった。
(正当な理由がない限り、断るのはよろしくなさそうだな)
そういう結論に至り、ティールはご令嬢……クララ・イスタールからの誘いを受けた。
(うわぁ~~、普通に生活してたら絶対にこんなとこ来ないぞ)
(華やかな店、だな)
二人がクララの誘いを受けて訪れた店は、喫茶店。
しかし、ただの喫茶店ではなく高級喫茶店。
店の内装や外装は当然一流であり、取り扱う道具や食材、従業員の腕なども一流のお店。
喫茶店なので庶民も訪れることは出来るが、庶民には……少々財布にダメージが大きい店ではある。
クララはティールとラストに軽く好みを尋ねた後、従業員に慣れた様子でメニューを頼んだ。
(まぁ、金の心配はする必要ないよな)
先日、グリフォンの翼は一応ギルドが買い取ったので、大金が懐に入ってきた。
訪れた店のメニューはどれも平均より高いが、そこまで痛手にはならない。
なんてティールは考えているが、そもそもクララは二人にお金を払わせるつもりなど、一ミリもない。
「改めて、お礼を言わせてください。お二人のお陰で、私たちは命を散らさずに済みました。本当に、感謝しています」
クララが二人に頭を下げたと同時に、護衛の者たちも綺麗に腰を折り、二人に感謝の意を伝えた。
「ど、どうも」
俺たちは元々グリフォンを狙っていたので、別にお礼なんて結構ですよ。
そんな言葉が口から出そうになったが、それをグッと堪えてクララたちの感謝を素直に受け取った。
「ただ、その……私の様な者がこんな事を言うべきではないと思いますが、倒し終えたのなら一度街に戻った方がよろしいかと思います」
「そ、そうですね。以後気を付けます」
ティールとラストがバラックに戻ってから、関わりのあったBランクの先輩冒険者に思いっきり抱きしめられたという話は、クララの耳にも入っていた。
「ティールさん、ラストさん。こちらを受け取ってください」
話が戻り、クララは自分たちの命を救ってくれた二人に対し、袋一杯に入ったお金をテーブルに置いた。
「ッ!?」
袋の大きさ、パンパンな様子を見る限り……先日マリアから頂いた大剣の料金よりも多いかもしれない。
(い、いくら入ってるんだ?)
なんてそれらしい考えを持ちながらも、やはり受け取れないと思い、後ろで立っている護衛の者に助けを求めた。
しかし、是非とも受け取っていただきたという表情で軽く頭を下げられ、退路が立たれた。
パーティーメンバーであるラストとしては、Bランクであるグリフォンやその他のモンスターの襲撃から助けた。
その事実を考えれば、目の前の謝礼金は当然と思っているので、受け取りを拒否する理由はない。
特にラストからも受けたらない方が良い、なんて雰囲気はなかったため、ティールは恐る恐る硬貨がパンパンに入っている袋を一瞬だけ覗き、直ぐに亜空間にしまった。
そのタイミングで注文した飲み物や料理が運ばれ、緊張した空気は終わり、緩く他愛もない会話が始まった。
最初の頃はまだまだ緊張していたティールだが、クララの人当たりが良いところもあって、徐々に緊張の糸が緩んでいった。
しかし、相手が貴族の令嬢だということは忘れておらず、言葉遣いには気を使い続ける。
勿論、この時ばかりはラストもなるべく丁寧な口調で話すよう、努力した。
そしてお互いに今までのことを話すようになり……クララがティールの過去をある程度聞いたタイミングで、少し表情が変わった。
それはほんの一瞬であり、その後も話は続いたが……最後の最後で、また真剣な表情になり、クララはあることをティールに尋ねた。
(正当な理由がない限り、断るのはよろしくなさそうだな)
そういう結論に至り、ティールはご令嬢……クララ・イスタールからの誘いを受けた。
(うわぁ~~、普通に生活してたら絶対にこんなとこ来ないぞ)
(華やかな店、だな)
二人がクララの誘いを受けて訪れた店は、喫茶店。
しかし、ただの喫茶店ではなく高級喫茶店。
店の内装や外装は当然一流であり、取り扱う道具や食材、従業員の腕なども一流のお店。
喫茶店なので庶民も訪れることは出来るが、庶民には……少々財布にダメージが大きい店ではある。
クララはティールとラストに軽く好みを尋ねた後、従業員に慣れた様子でメニューを頼んだ。
(まぁ、金の心配はする必要ないよな)
先日、グリフォンの翼は一応ギルドが買い取ったので、大金が懐に入ってきた。
訪れた店のメニューはどれも平均より高いが、そこまで痛手にはならない。
なんてティールは考えているが、そもそもクララは二人にお金を払わせるつもりなど、一ミリもない。
「改めて、お礼を言わせてください。お二人のお陰で、私たちは命を散らさずに済みました。本当に、感謝しています」
クララが二人に頭を下げたと同時に、護衛の者たちも綺麗に腰を折り、二人に感謝の意を伝えた。
「ど、どうも」
俺たちは元々グリフォンを狙っていたので、別にお礼なんて結構ですよ。
そんな言葉が口から出そうになったが、それをグッと堪えてクララたちの感謝を素直に受け取った。
「ただ、その……私の様な者がこんな事を言うべきではないと思いますが、倒し終えたのなら一度街に戻った方がよろしいかと思います」
「そ、そうですね。以後気を付けます」
ティールとラストがバラックに戻ってから、関わりのあったBランクの先輩冒険者に思いっきり抱きしめられたという話は、クララの耳にも入っていた。
「ティールさん、ラストさん。こちらを受け取ってください」
話が戻り、クララは自分たちの命を救ってくれた二人に対し、袋一杯に入ったお金をテーブルに置いた。
「ッ!?」
袋の大きさ、パンパンな様子を見る限り……先日マリアから頂いた大剣の料金よりも多いかもしれない。
(い、いくら入ってるんだ?)
なんてそれらしい考えを持ちながらも、やはり受け取れないと思い、後ろで立っている護衛の者に助けを求めた。
しかし、是非とも受け取っていただきたという表情で軽く頭を下げられ、退路が立たれた。
パーティーメンバーであるラストとしては、Bランクであるグリフォンやその他のモンスターの襲撃から助けた。
その事実を考えれば、目の前の謝礼金は当然と思っているので、受け取りを拒否する理由はない。
特にラストからも受けたらない方が良い、なんて雰囲気はなかったため、ティールは恐る恐る硬貨がパンパンに入っている袋を一瞬だけ覗き、直ぐに亜空間にしまった。
そのタイミングで注文した飲み物や料理が運ばれ、緊張した空気は終わり、緩く他愛もない会話が始まった。
最初の頃はまだまだ緊張していたティールだが、クララの人当たりが良いところもあって、徐々に緊張の糸が緩んでいった。
しかし、相手が貴族の令嬢だということは忘れておらず、言葉遣いには気を使い続ける。
勿論、この時ばかりはラストもなるべく丁寧な口調で話すよう、努力した。
そしてお互いに今までのことを話すようになり……クララがティールの過去をある程度聞いたタイミングで、少し表情が変わった。
それはほんの一瞬であり、その後も話は続いたが……最後の最後で、また真剣な表情になり、クララはあることをティールに尋ねた。
29
お気に入りに追加
1,801
あなたにおすすめの小説
『自重』を忘れた者は色々な異世界で無双するそうです。
もみクロ
ファンタジー
主人公はチートです!イケメンです!
そんなイケメンの主人公が竜神王になって7帝竜と呼ばれる竜達や、
精霊に妖精と楽しくしたり、テンプレ入れたりと色々です!
更新は不定期(笑)です!戦闘シーンは苦手ですが頑張ります!
主人公の種族が変わったもしります。
他の方の作品をパクったり真似したり等はしていないので
そういう事に関する批判は感想に書かないで下さい。
面白さや文章の良さに等について気になる方は
第3幕『世界軍事教育高等学校』から読んでください。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
偽物の侯爵子息は平民落ちのうえに国外追放を言い渡されたので自由に生きる。え?帰ってきてくれ?それは無理というもの
つくも茄子
ファンタジー
サビオ・パッツィーニは、魔術師の家系である名門侯爵家の次男に生まれながら魔力鑑定で『魔力無し』の判定を受けてしまう。魔力がない代わりにずば抜けて優れた頭脳を持つサビオに家族は温かく見守っていた。そんなある日、サビオが侯爵家の人間でない事が判明した。妖精の取り換えっ子だと神官は告げる。本物は家族によく似た天使のような美少年。こうしてサビオは「王家と侯爵家を謀った罪人」として国外追放されてしまった。
隣国でギルド登録したサビオは「黒曜」というギルド名で第二の人生を歩んでいく。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
我が家に子犬がやって来た!
もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。
アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。
だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。
この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。
※全102話で完結済。
★『小説家になろう』でも読めます★
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
前世の記憶さん。こんにちは。
満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。
周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。
主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。
恋愛は当分先に入れる予定です。
主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです!
小説になろう様にも掲載しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
5歳で前世の記憶が混入してきた --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--
ばふぉりん
ファンタジー
「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は
「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」
この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。
剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。
そんな中、この五歳児が得たスキルは
□□□□
もはや文字ですら無かった
~~~~~~~~~~~~~~~~~
本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。
本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
追放された薬師でしたが、特に気にもしていません
志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、自身が所属していた冒険者パーティを追い出された薬師のメディ。
まぁ、どうでもいいので特に気にもせずに、会うつもりもないので別の国へ向かってしまった。
だが、密かに彼女を大事にしていた人たちの逆鱗に触れてしまったようであった‥‥‥
たまにやりたくなる短編。
ちょっと連載作品
「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」に登場している方が登場したりしますが、どうぞ読んでみてください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる