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どうしようとも、俺の勝手

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酒場での宴会が終わった後、ティールはマリアとレンの二人を呼び出した。

「この大剣に、見覚えはありませんか」

ティールが亜空間から取り出した物は、一つの業物である大剣。

「こ、これは……なんで、ティールが?」

少し冷静になって考えれば解るはずだが、ティールが持つ大剣を見て……マリアは冷静さを失っていた。

「グリフォンを倒した後、グリフォンの巣に向かったと言いましたよね」

「え、えぇ。だから私や他の皆が……もしかして、そういうことなのかしら」

「はい、そういう事です。この大剣は、グリフォンの巣に置かれていました」

旦那の……父親の形見とも言える大剣が、目の前にある。
この現状に二人は驚きを隠せない。

少しの間、何もリアクションがなかった二人だが……先にマリアが涙を流し始めた。
それを見て、息子であるレンも自然と涙が零れた。

(やっぱり、この大剣は二人に渡すべきだな)

元々決めていた話ではあるが、更に決心が強まった。

「この大剣は二人に渡し……返します」

「「ッ!?」」

ティールの言葉に、二人は先程とは違った意味で驚く。

「その……ティール君の気持ちは嬉しいわ。でも、もうその大剣はあなたの物。わざわざ、私たちに渡す必要はないのよ」

本音を言えば……自分が持っていたい。
もしくは、息子に託したいという気持ちはある。

しかし、先輩としてそんな私情で、高ランクの武器を自分たち身内が所有していた武器だったので、返してほしいとは言えない。

「そうですか。でも、俺が手に入れた大剣をどうしようとも、俺の勝手ですよね」

その通りではあるので、マリアもそれは違うと言えず……次に、ティールが何を言おうとしてるのか、予想出来てしまった。

「なので、この大剣は俺の意志でお二人に返します」

ハッキリとそう口にし、大剣を二人に渡した。

「…………本当に、ありがとう」

大粒の涙をこぼしながら、マリアは心の底からティールに……そしてラストの感謝の想いを伝えた。
レンもマリアと同じく、涙をこぼしながら二人に頭を下げた。

「マスター、晴れ晴れとした顔だな」

二人と別れ、ティールとラストは夜道を二人で歩いていた。

「そうか? 二人にあの大剣を渡せたからかもな。ラストだって、こう……心がほっこり? しなかったか」

「……ほっこりかどうかは解らないが、良いことをしたな。そう思えた」

「だろ。毎回毎回善意で動くわけじゃないけど、手に入れた物をタダで渡すのも……偶には悪くない」

そう思いながら宿まで戻り、二人はここ数日間の疲れと満腹感もあって、ベッドでぐっすりと翌朝まで寝た。

目的であったグリフォンを倒したので、これからどうしようかをラストと二人で考えようと思っていたティール……宴会の翌朝、宴会終わりに旦那の形見である大剣を二人から受け取ったマリアと早速遭遇。

一緒に依頼を受けようという依頼か?
それはそれで良いなと考えていたティールだが、マリアが二人の元を訪れたのは別の理由がある。

「あの大剣、やはりタダでは受け取れません」

そういういと、マリアはじゃらじゃらと音が聞こえる袋をテーブルに置いた。

「受け取ってください」

そう言われ、受け取るか否かはさておき……とりあえず袋の中を見た。

「……」

中身を見たティールは固まり、ラストも袋の中身とマリアを何度も交互に見た。

袋の中には、数枚の白金貨と、大量の金貨が入っていた。

「あの、これはさすがに……俺たちはそれなりに稼いでるんで、お金には困ってないし」

特に金には困っていないので、こんな大金を貰わなくても大丈夫。
そんな二人の懐状況は、ティールとラストと一緒に討伐依頼を受けたことがあるマリアが、知らないわけがない。

「二人がいらないと仰っても、ギルドに頼んで無理矢理二人の貯金に追加してもらいます」

「……わ、分かりました」

ギルドには冒険者のお金を預かる制度がある。
基本的にマリアが口にした内容は行えないのだが……バラックの冒険者ギルドはマリアに何度も世話になっているので、それぐらいは裏でこっそりとやってしまうかもしれない。

そんな裏事情を知らないティールだが、とりあえずマリアが本気だという事は解ったので、その袋をやむなく受け取った。
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