上 下
331 / 693

逃げた方が良さそうだが……

しおりを挟む
(逃げてくれたか)

ティールはグリフォンたちに襲われていた貴族やその護衛の騎士たちが逃げてくれたことを確認し、ホッと一安心。

ティールの力は、あまり他者に見せられない部分が多いので、残られても面倒。
邪魔な人物たちが消えたことで、ティールとラストは全力で武器を振るい始めた。

「キュゥゥアアアッ!!!」

グリフォンに付き従うモンスターの中で、一体のヒポグリフが二人の斬撃を潜り抜け、ティールに向かって襲い掛かってきた。

ティールは両手でオーバーサイズを扱っている為、一瞬とはいえ両手が塞がっている状態。
そんな状態でティールは……ヒポグリフの襲撃に対し、口を開けて集中型のブレスを放った。

「ッ!!??」

まさかのブレスという攻撃に対し、ヒポグリフは対処出来ずに頭部を破壊された。

(ぶっつけ本番だったが、使い分けは出来るみたいだな)

ブレスとは本来拡散型の攻撃。
しかし使用者の技量によっては拡散せずに一点に集中させる……もしくは、放ったブレスの軌道を変化させることも可能だった。

(ニードファルコンみたいなBランクのモンスターはいないみたいだな)

宙を飛び回り、上空から攻撃を放ってくる鳥系モンスターたちを確認し、グリフォン以外のBランクモンスターがいないことを確認し、ティールはこの戦いを制する確率が上がったと確信。

ニードファルコンとグリフォン、どちらの方が強いのか……ティールの直感では、グリフォンの方が上だった。
しかしこの状況でニードファルコンまでいれば、いくらティールとラストがルーキー離れした実力を持っていようとおも、対処しきれない可能性が非常に高い。

グリフォンに付き従い、敵である二人を殺そうとする鳥系モンスターたちは全て、ランクDやランクC。

強さとしては、オーバーサイズや牙竜による斬撃を食らえば、防御力は高くないので一撃で倒せる程度。
ただ、連続で強力な斬撃を放っていれば、当然魔力を消費していく。

「ラスト、回復するんだ」

「分かった」

しかし、ティールだけは奪取≪スナッチ≫で倒したモンスターの死体から魔力を奪うことが出来る。
なのでラストが魔力を回復させるまでの時間を懸命に稼ぐ。

当たり前だが、鳥系モンスターは空中で逃げ回るだけではなく、攻撃を行ってくる。
グリフォンも今のところ積極的に攻撃に参加はしていないが、フェザーラッシュや風の攻撃魔法を放つ。

その一撃一撃を対処する中、やはりグリフォンだけは他のモンスターと格が違うと感じる。

(こいつ……自分に従うモンスターのことをなんとも思ってない、のか?)

グリフォンの表情から何を考えているのか読めるわけではない。
読めはしないが、それでも冷徹な何かを感じたティール。

ポーションで魔力を回復しているラストも、グリフォンから不気味な何かを感じ取った。

「はぁ、はぁ……最後まで、高みの見物って訳か」

二人が自身の武器で斬撃を何度も何度も放ち、グリフォンと行動を共にしていたモンスターを全滅させることに成功。

しかし、肝心のグリフォンは今のところ無傷。
偶に何度か二人の攻撃がグリフォンに向かったが、風のブレスやウィンドランス。風の魔力を纏った爪撃により、全て対処されていた。

(逃がすつもりはないぞ)

二人の息遣いしか聞こえない状況……そんな中、ティールとラストの絶対に逃がさないという戦意は変わらずグリフォンに向けられていた。

グリフォンは二人の実力が先程まで襲っていた人間とは違うと解っており、頭の中では逃げた方が良いという考えが七割を占めていった。
残り三割は強者としてのプライドがあり、ここで仕留めたいという気持ちが残っていた。

野性で生きてきたグリフォンとしては、ここはプライドを捨ててでも逃げる場面だという考えが徐々に強くなっていたが……地上から自分を睨みつける二人から、過去に敵対した相手から感じ取った意志を覚え…………いきなり風のブレスを放った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります

古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。 一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。 一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。 どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。 ※他サイト様でも掲載しております。

処理中です...