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賢い判断が出来る

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「……良く燃えそうなモンスターだな」

二人の目の前に現れたモンスターは、ウッドゴーレム。
名前通り、木のゴーレムだ。

当然、弱点は火だが……ウッドゴーレムは周囲に木があれば、その木々から生命力を吸い取って再生することが出来る。

防御力もそれなりにあるので、耐久力はCランクのモンスターの中でもかなり上に位置する。

「マスター、俺が相手をしても良いか」

「あぁ、勿論。ただ、あんまりサクッと倒すなよ」

「あぁ……今度は丁寧に戦う」

速さという点に関してはやや物足りないが、牙竜の力を試す相手としては悪くない。

(中身はしっかりと、詰まっているようだな)

ウッドゴーレムのパンチを交わし、牙竜で腕を斬るが……大きく斬り裂くことはできなかった。
勿論ラストはまだまだ本気ではないが、それでもウッドゴーレムの堅さに少々驚くも、良い相手だと思い……徐々に速度を上げていく。

あまり上げ過ぎるとウッドゴーレムが付いて来れなくなるが、ラストは戦いを直ぐに終わらせない。
ウッドゴーレムが周囲の木々から生命力を奪い、体を回復……再生させることは知っていたので十分ほどの間、その性能を利用して牙竜の性能を確かめ続けた。

(何もしなければそれなりに堅いが、効果を使用すれば、あっさりと斬れるな)

付与効果である切れ味強化を使えば、中身が詰まっているウッドゴーレムであっても、斬り裂くのに大した力は要らない。

「どうだ、性能を確かめることは出来たか?」

「それなりにな」

何度も何度も……何十、百以上斬り刻まれたウッドゴーレムは最後、ラストに魔石を無理矢理抜き取られ、活動を停止した。

ある程度牙竜を振り回し、どう操れば良いのか大体分かってきた……だが、まともな相手がウッドゴーレムだけでは足りない。

もっと相手になる敵はいないかと、二人は夕方になるまで森の中を探索し続けた。
するとその途中、三体のモンスターに襲われている同業者を発見。

「ちょっと劣勢、か?」

三体のモンスターと戦っている同業者たちは、ルーキーではない。
ルーキーの域を超えた強さを持つ冒険者ではあるが、相手が悪かった。

「マスター、あれはムーンウルフだな」

「ムーンウルフって……月が出てる時、ランク以上の力を引き出して戦うモンスターだっけ?」

「そうだ。まだ月は……完全には出ていないが、それでも昼間と比べれば空に出ている」

現在の時間でも、脚力に限ってはBランクの領域に足を踏み入れている。

ムーンウルフは額に薄い白色の丸い宝石が付いており、その宝石は高値で取引される。
しかしムーンウルフが昼はあまり外に出ず、夕方辺りになってから狩りを始める……そして、勝てない戦いには見切りをつける。

全ての個体が合理的な判断を下せる訳ではないが、ムーンウルフは比較的勝てないと判断すれば、逃げることは多い。

そしてBランク並みの脚力で逃げられたら、ムーンウルフたちのホームである森の中で追いつけるわけがない。

「どうするんだ、マスター」

ラストとしては、正直どうでも良い。
自分と歳が近く、まだ素人に近い存在などであれば助けようという想いが溢れてくるが、視界の先でムーンウルフと戦っている者たちは、どう考えても二十を越えている。

自分で責任を取れる歳とも言えるだろう。

であれば、森の中で自分よりも強いモンスターと遭遇し、食われてしまう。
そうなる可能性が頭から消えていた訳ではない。

男たちも、自分たちがモンスターに殺される可能性がある。それは忘れていない。
だが……男たちにとって、さすがにムーンウルフが一度に三体も襲ってくるのは、正直予想外だった。

「……見つけてしまったんだし、助けるしかないだろ」

「そうか……まぁ、そうだよな」

そう返答することは解っており、わざわざ訊くまでもなかった。
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