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そこが弱点

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(貴族の令息は置いといて……一緒に討伐を行う騎士とかの実力が心配だな)

ティールが心配してるのは、勿論令息や騎士たちがグリフォンに殺されてしまうことではなく、逆に自分たちよりも先に狩られてしまうのではないかという心配。

(騎士といっても、実力は幅広いというか……本当の玉もいれば、石ころだっているだろ)

ティールの考えている通り、騎士という凡人が届かない地位まで上り詰めた者であっても、その実力はピンからキリまである。

仮に本物であれば、ティールとラストにとってその騎士が最大の壁となりうる。

(とはいっても、なんの絡みもない人は戦闘不能にするとか……さすがにアウトというかヤバいというか外道というか、とりあえずナシ)

最大の壁となりうるが、邪魔だからといってそんな真似はできない。

「ティール君、もしかして彼らが一番のライバルになると思ってる?」

「……そうですね。まだ会ったことも見たこともないので、全体的な強さは解らないですけど、数や個々の力が弱いとは思えないので」

「そうね。貴族の令息……まだ子供でも、才能がないとそもそもグリフォンに挑もうとしない。経験が足りなくても、攻撃力はあるでしょうね」

全員が全員という訳ではないが、基本的に貴族の令息令嬢は魔法、戦闘の才能がそれなりにある。

「でも、そこが彼らの弱点となるかもしれないわ」

「? 貴族の令息が弱点、ですか?」

ティールはいまいちマリアの言葉が理解出来ない。

ラストも同じく、何故貴族の令息が弱点なのか分からない……深く考えても、直ぐにはその理由が浮かんでこなかった。

「ふふ、二人とも解らないみたいね」

「はい。だって、マリアさん言う通り一応それなりに戦力にはなるんですよね。騎士や兵士たちからしたら絶対に死なせてはいけない存在ではありますけど、その防御面を考えてないとは思えませんし」

「マスターと同じ意見だ。多少の弱点とはなるかもしれないが、明確な穴とは思えない」

二人の考えは全て間違ってはいない。
ちゃんと考えているだけあって、まともな回答だと言えるだろう。

だが、経験豊富なマリアからすれば、まだ考えが浅かった。

「二人の言う通りである部分はある。でも、おそらくだけど今回グリフォンの討伐にやってきた貴族の令息は、自分の名声……功績を手に入れる為よ」

「確かに、慈善業で貴族の子供がBランクのモンスターに立ち向かおうとは思えません」

貴族に恨みなどがある訳ではないが、ティールとしては貴族が無償で強敵と戦う様な、優れた人格を持っているとは思えない。

「そうかもしれないわね……それで、名声や功績を手に入れたい。そうなると、お付きの騎士や兵士の力を借りるのは良くても、最後の止めは自分で刺さなければならない。そう思う人が多いのよ」

マリアの経験上、これは間違いなかった。

「ふむ。それはそうだろうな。それがなければ、途中経過はどうであれば、本人がメインで倒したとは宣言し辛いだろう」

「そういうこと。そうなってくると、なるべく近づいて倒す必要があるの」

「攻撃魔法ではダメなんですか?」

「ダメではないけど、相手がグロフォンだと相殺される可能性が高いでしょ」

「……ですね」

ティールは脳内に先日倒したブレスを使うヒポグリフが浮かんだ。

グリフォンとはヒポグリフを超強化したバージョンと言えるため、瞬時に風の遠距離攻撃を放つイメージが容易に想像出来てしまう。

「だから、なるべく近づいて心臓を刺すか、首を切断するのが良いのだけど……高ランクのモンスターには敵を欺く個体もいるの」

「つまり、死んだふりをして令息が近づいてきた瞬間を狙って、殺すことも出来る……そういうことですね」

「その通り。だから全体的に上手くいったとしても、戦況をひっくり返されてしまう可能性は十分にあるの。そしてその一手の要因になってしまうのが、その令息君というわけ」

マリアの考えに二人はなるほどなるほどと、非常に納得できた。

だが、ティールとしてはその令息がどうなろうと知ったことではないので、そのまま穴でいてほしいと思ってしまった。
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