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殺されても文句は言えない、けども

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(あれは、メイスか)

先程までマリアが持っていた武器は主に回復魔法の効果や、その他の魔法の効果が増大される能力が付与されていた杖。

しかし、今アイテムリングから取り出したメイスはほぼほぼ打撃用の武器。
メイスには使用者の腕力やスタミナの上昇などの効果が付与されている。

(弱くはないと思うけど……こっちに来たモンスター、オーガだよな。大丈夫か?)

取り出された死体の匂いに釣られたモンスターは人型で腕力や防御力に優れた鬼……オーガ。
ランクはCであり、ランク内の中でも腕力はトップクラス。

下手なタンクなら一撃で潰してしまう力を持つモンスター。
確かにBランクの冒険者なら一人でも倒せなくはない相手。

しかしマリアの本職は後衛での回復やサポート。
前衛ではないのだ。

何かあったら直ぐに飛び出せるように、攻撃を放てるようにと二人は解体を行いながらも意識はオーガと対峙するマリアに集中していた。

「向こうには行かせませんよ」

「……」

マリアと対峙するオーガは「なんだかのひょろい生物は」と言いたげな顔で敵を見下ろす。

こんな相手に時間を使う意味はないと思い、殺した冒険者から奪った大剣でマリアを斬り裂き……その一撃で終わらそうと思っていた。

しかし大振りな攻撃であれば、百戦錬磨のマリアにとって非常に避けやすく……あっさりと一撃を躱した。

そして大胆で後隙が大きい攻撃を行ったオーガの隙を見逃さず、身体強化を使用して頑丈なメイスを太ももにぶち込む。

「ギィッ!!??」

一撃で倒したと思ったら、目の前に斬り裂いたと思った死体はなく、太ももにダメージだけが残っている。

直ぐに痛みを感じた方向に眼を向けるが、先程の女はもういない。
すると今度は背中から手痛いダメージを感じ、思わず膝を地面に付いてしまう。

「グゥアアアアアッ!!!」

死角から襲い掛かる攻撃を何とかしようと、全力で大剣を振り回す。

「おっと」

さすがにその攻撃は躱せないと思い、バックステップでひらりと躱す。
だが、物凄くギリギリの位置で……オーガが大剣に魔力を纏って斬撃を飛ばす……もしくはスラッシュを発動する素振りがないと見極めての回避。

躱した瞬間に即ダッシュし、再びオーガの死角からメイスで一撃を叩きこむ。

「……う、上手過ぎない、か?」

「あ、あぁ……そうだな。本当に後衛職なのか疑いたくなる」

身体能力だけならば、全快の全力の二人の方がマリアの全力よりも上。
しかし今のマリアからは、そんな差を感じさせない雰囲気、脚運びや経験、とにかく自分たちとそこまで接近戦の強さに差はないように感じた。

単語スナッチ奪取で奪ったスキルや豹雷、疾風瞬閃を使って良いなら、多分……というか、俺の方が強いのは確かだと思う)

実際にマリアとティールがタイマンで戦えば、十中八九勝つのはティール。

ラストが相手でも大体勝率は変わらないが……それでも二人はマリアの戦いぶりに、上手さを感じた。

打撃なので直ぐに勝負が決まることはない。
マリア自身もステータス的に腕力は優れていないので、オーガを相手に一撃で終わらせるのは無理。

だが、それでも軽快な足運びで動き続け、確実にダメージを与えていく。
気付けばオーガの体は青痣だらけになっていた。

(な、なんかちょっとオーガのことが可哀想に思えてきた)

ティールやラストなら、刃がある武器を使うので一撃で倒せずとも、倒すのにそこまで時間は掛からない。

しかしマリアはあまり刃がある武器の扱いが得意ではないので、割と得意な打撃系の武器で攻め続けるスタイル。
なので、中々オーガの心臓や脳には攻撃が届かず……じわじわとダメージを与えて倒す流れとなる。

勿論、オーガはマリアやティールたちを殺して転がっているモンスターの死体を奪おうと考えていたので、マリアたちに殺されても文句は言えない。

ただ……マリアフットワークが炸裂し、オーガは何も出来ずにひたすらメイスで死角からボコられている状況に追い込まれた。
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