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他とは訳が違う

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「てぃ、ティール……そのグリフォンって、あのグリフォンなの、かい?」

「あぁ、そのグリフォンであってると思うぞ」

通称空の死神、グリフォン。
Bランクのモンスターであり、鳥獣系のモンスターの中でも力が強く、遠距離からの攻撃は勿論厄介だが、急接近されてから攻撃も気を付けなければならない。

「ティール、あなたもしかして死にたがりなの?」

「し、死にたがり? 別にそういうんじゃないけどな」

わざと格上の相手に挑戦したり、戦えば死ぬ可能性が高いモンスターと戦う。

そういった者を、冒険者の間では死にたがりと呼ぶ。

「だが、グリフォンともなれば他の空を飛ぶモンスターとは訳が違う。一つランクが下ではあるが、ワイバーンを狩ることも珍しくないという記録がある」

「ザジ君の言う通りね。空中からの遠距離攻撃に加えて、鋭い爪やくちばしを使った近距離攻撃。普通に考えて、二人だけで挑むような相手じゃないのは確かよ」

二人がただの年齢相応な人族と竜人族ではないことぐらい解っている。
ただ、それでも自分の子供と同じぐらいの冒険者がグリフォンに挑もうとしていれば、心配に思ってしまうのがマリア。

「でも……二人はBランクのモンスターを一人で倒してるのよね」

「あっ、そういえばそうだったね。それなら…………けど、グリフォンは同じBランクでも戦闘力は非常に高いって聞くし、やっぱり二人だけで挑むのは厳しいんじゃないかな」

「私も同意見ね。二人が超強いのはこの目で見たから解るけど、相手がグリフォンとなると、ねぇ……」

他のBランクモンスターを狙っているのであれば、レンたちもティールとラストを応援していたかもしれない。

だが、まめに勉強しているレンたちはグリフォンの討伐が他のBランクモンスターと比べて困難なことを知っている。

「二人が心配してくれるのは嬉しいけど、それが目的でバラックに来たわけだしな……」

「グリフォンが他のBランクモンスターと違うというのであれば、壁を越える良い機会ということだろう」

ラストはいい加減、ティールが自由に使って良いと渡してくれるブラッディ―タイガーの素材を使った斬馬刀やバスターソードを使わずとも、Bランクのモンスターを倒せるようになりたいと思っていたところ。

今回は二人がかりで攻めるという内容だが、そういう状況であればティールが買ってくれた大剣を使って相手するのもありだと考えていた。

「ッ……ま、まぁ二人がそこまで意志が強いなら、俺たちが止めても無駄なんだろうけど……それでも、凶悪なモンスターには変わりないんだ。気を付けた方が良いよ」

「あぁ、分かってるよ。ただ……グリフォンが他の鳥系のモンスターを従えていたりしたら、ちょっと話が変わってくるけどな」

「そうですねぇ。あり得なくはない話です。グリフォンに限った話ではないけど、高ランクのモンスターが同種族以外のモンスターを従わせていたという記録はあるのよねぇ……その可能性を考えると、ティール君とラスト君の二人だけだと、少し厳しくなってしまうわ」

グリフォン以外のモンスターとも戦わなければならない。

そういた状況に遭遇したら、と考えると割と自信があったラストもその状況は良くないと思い、頭を悩ます。

(ただでさえ空中を自由自在に飛び回る鳥系のモンスターはそれだけで厄介だからな……グリフォンが他のモンスターを従えているところを目撃したら、一旦引き返してじっくり作戦を練った方が良いな)

大量の鳥系モンスターと一対一、もしくはラストと一緒に二対一を繰り返すのであれば、グリフォンまで辿り着いて勝つ自信はそれなりにある。

だが、同時に相手をするとなると話は別。

「もしそういう状況になれば、さすがに俺も引き返すよ」

「それが賢明だね」

ただ、一度狙いを定められてしまえば……絶対に空の死神から逃げ切れるか。
それはティールとラスト次第だった。
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