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訓練場に到着したティールたちは早速模擬戦を開始。
まずはティールと四人の中で一番体格が良く、元気少年といった顔のボルガ・シンキリアがラストと戦う。
ボルガの得意な得物は槍。
軽く木製の槍を振るう様子を見て、ラストはボルガがそれなりの実力を持っていると理解した。
だが、それでもそれなり程度の実力であり……一ミリも怖いとは感じない。
(槍の腕はDランクの冒険者に並ぶか……ただ、総合的には敵わないだろう)
絶対に負けない。
慢心ではなく、実際にそれが現実だと確信している。
得物を使わなくても問題無いと判断したラストは素手のまま開始線に立つ。
「おい、それはどういうつもりだ」
「見ての通りだ。俺は素手でも戦える。故に、今回の模擬戦には素手で挑ませてもらう」
言葉は丁寧だが、ボルガはラストから「お前なんて武器を使わずとも素手で十分だ」と思われているのを理解し、槍を握る力が強まる。
(うんうん、ちゃんと暴言は吐いてないな。もう直ぐに怒りが爆発することはなさそうだな)
少し前までのラストであれば、ティールを尊敬するあまり、マスターを侮辱する者は即刻叩き潰す。
そんな空気を漏らしていたが、今では怒りのオーラもなるべく抑えられるようになっている。
(さっきは静かに怒りを零してたけど、今の表情はなんというか……随分と落ち着いてる。良くない言い方をすれば、ちょっと上から目線な雰囲気かな)
失礼な雰囲気かもしれないが、ティールもボルガはラストに本気を出させる程の力を持っているとは思えない。
その分析は正しく、ラストが本気を出せば間違いなく殺してしまう。
「それでは……始め!!!」
実戦経験がある職員が審判を行い、模擬戦開始の合図を行う。
するとボルガは勢い良く飛び出し、鋭い突きを放つ。
(……元気というか、ちょっと荒っぽい雰囲気をしてるなって思ってたけど、綺麗な突きだな)
見惚れるほどの突きではないが、ティールはボルガの突きを見て本人の積み重ねを感じた。
何度も同じ型を繰り返してきたからこそ繰り出せる一突き。
そんな努力の結晶が窺える。
だが……ラストからすれば強化系のスキルを使わずに放った突きなど、取るに足らない。
少しだけ後方に下がり、完全に突きの動きを見極めていた。
一突きだけでボルガの攻撃が終わることはなく、引き戻して再び突く。
何十という数の突きを急所に放つが、どれ一つとして掠りすらしない。
それどころか、紙一重で躱す距離がどんどん近くなる。
「はぁ、はぁ、はぁ」
休みなしで突きを放ち続けたボルガは一旦距離を取り、呼吸を整える。
連続の突きを最小限の動きで躱し、更に距離をどんどん縮めていく。
その行為がどれだけ難しいのかを知っており、ボルガの腕が決して低くないからこそ、周囲で観戦していた冒険者たちから拍手が起こった。
ティールもラストの躱し方を素直に凄いと思い、賞賛の拍手を送った。
だが、ボルガの連続突きを躱していた本人はあまり納得がいっていなかった。
(躱すことには躱せたが、無理矢理反応速度を使って躱す場面が多かった……まだまだ相手の動きを完全に読む、という芸当は難しいな)
これから技術方面を強化していきたいラストにとって、あまり納得いく結果ではなかった為……小さなため息をついた。
「ッ!!!!」
このため息は、自分の実力不足を嘆く故に漏れたため息。
決してボルガの実力にがっかりしたからため息を吐いたわけではない。
そんな理由で吐いたため息ではないのだが……模擬戦相手であるボルガにとって、ラストの心情など知ったことではない。
一気に感情は沸点を突破し、身体強化のスキルを発動。
木製の槍にも魔力を纏い、怒りの感情を表に出しながらもう一度踏み込む。
(これからが本番という訳だな)
ボルガの身体能力が上がったからとはいえ、ラストがやることはない。
突きを……追加された払いや薙ぎを丁寧に躱し、ボルガのスタミナが切れかけたタイミングで懐に潜り込み、手のひらで押し飛ばした。
押し飛ばされたボルガは十メートル弱ほど飛ばされ、着地に失敗。
ラストに瞬時に距離を詰められ、見下ろされる形となり……自身の敗北を宣言した。
まずはティールと四人の中で一番体格が良く、元気少年といった顔のボルガ・シンキリアがラストと戦う。
ボルガの得意な得物は槍。
軽く木製の槍を振るう様子を見て、ラストはボルガがそれなりの実力を持っていると理解した。
だが、それでもそれなり程度の実力であり……一ミリも怖いとは感じない。
(槍の腕はDランクの冒険者に並ぶか……ただ、総合的には敵わないだろう)
絶対に負けない。
慢心ではなく、実際にそれが現実だと確信している。
得物を使わなくても問題無いと判断したラストは素手のまま開始線に立つ。
「おい、それはどういうつもりだ」
「見ての通りだ。俺は素手でも戦える。故に、今回の模擬戦には素手で挑ませてもらう」
言葉は丁寧だが、ボルガはラストから「お前なんて武器を使わずとも素手で十分だ」と思われているのを理解し、槍を握る力が強まる。
(うんうん、ちゃんと暴言は吐いてないな。もう直ぐに怒りが爆発することはなさそうだな)
少し前までのラストであれば、ティールを尊敬するあまり、マスターを侮辱する者は即刻叩き潰す。
そんな空気を漏らしていたが、今では怒りのオーラもなるべく抑えられるようになっている。
(さっきは静かに怒りを零してたけど、今の表情はなんというか……随分と落ち着いてる。良くない言い方をすれば、ちょっと上から目線な雰囲気かな)
失礼な雰囲気かもしれないが、ティールもボルガはラストに本気を出させる程の力を持っているとは思えない。
その分析は正しく、ラストが本気を出せば間違いなく殺してしまう。
「それでは……始め!!!」
実戦経験がある職員が審判を行い、模擬戦開始の合図を行う。
するとボルガは勢い良く飛び出し、鋭い突きを放つ。
(……元気というか、ちょっと荒っぽい雰囲気をしてるなって思ってたけど、綺麗な突きだな)
見惚れるほどの突きではないが、ティールはボルガの突きを見て本人の積み重ねを感じた。
何度も同じ型を繰り返してきたからこそ繰り出せる一突き。
そんな努力の結晶が窺える。
だが……ラストからすれば強化系のスキルを使わずに放った突きなど、取るに足らない。
少しだけ後方に下がり、完全に突きの動きを見極めていた。
一突きだけでボルガの攻撃が終わることはなく、引き戻して再び突く。
何十という数の突きを急所に放つが、どれ一つとして掠りすらしない。
それどころか、紙一重で躱す距離がどんどん近くなる。
「はぁ、はぁ、はぁ」
休みなしで突きを放ち続けたボルガは一旦距離を取り、呼吸を整える。
連続の突きを最小限の動きで躱し、更に距離をどんどん縮めていく。
その行為がどれだけ難しいのかを知っており、ボルガの腕が決して低くないからこそ、周囲で観戦していた冒険者たちから拍手が起こった。
ティールもラストの躱し方を素直に凄いと思い、賞賛の拍手を送った。
だが、ボルガの連続突きを躱していた本人はあまり納得がいっていなかった。
(躱すことには躱せたが、無理矢理反応速度を使って躱す場面が多かった……まだまだ相手の動きを完全に読む、という芸当は難しいな)
これから技術方面を強化していきたいラストにとって、あまり納得いく結果ではなかった為……小さなため息をついた。
「ッ!!!!」
このため息は、自分の実力不足を嘆く故に漏れたため息。
決してボルガの実力にがっかりしたからため息を吐いたわけではない。
そんな理由で吐いたため息ではないのだが……模擬戦相手であるボルガにとって、ラストの心情など知ったことではない。
一気に感情は沸点を突破し、身体強化のスキルを発動。
木製の槍にも魔力を纏い、怒りの感情を表に出しながらもう一度踏み込む。
(これからが本番という訳だな)
ボルガの身体能力が上がったからとはいえ、ラストがやることはない。
突きを……追加された払いや薙ぎを丁寧に躱し、ボルガのスタミナが切れかけたタイミングで懐に潜り込み、手のひらで押し飛ばした。
押し飛ばされたボルガは十メートル弱ほど飛ばされ、着地に失敗。
ラストに瞬時に距離を詰められ、見下ろされる形となり……自身の敗北を宣言した。
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