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ティールの言葉が耳に入った瞬間、後ろに立っているラストから戦意が零れた。

相手は冒険者ギルドの副マスター。
一介の冒険者が手を出してはならない相手だということは理解している。

だが、その副マスターが自分のマスターに何かを隠しているならば……手は出さずとも、自然に威嚇してしまう。

これはラストにとってなんらおかしい行動ではない。

(おいおい、やっぱりどう考えてもルーキーって枠に収まる実力じゃないね)

一瞬でラストの体から零れる戦意を感じ取り、ディッシュは白旗状態。

「……そうだね。確かに一つ、君達に隠してあることがある。ただ……なんでそう思ったのか、教えてもらっても良いかな」

「えっと…………なんていうか、ディッシュさんが今まで向けられたことがない目をしていたので、何か俺に関連するこの依頼以外のことでも考えてるのかと」

「ふ、ふっふっふ。なるほど、そういった違いでバレたのか。ポーカーフェイスには自信がある方なんだけどね」

隠し事をしていたと白状したが、ラストから零れる戦意が止まらないので、早速その隠し事について説明する。

「今回の護衛依頼を受けてくれたら、その評価によってはCランクへの昇格を検討しようと考えていてね……って、あからさまに不機嫌な顔になったね」

隠すつもりもなく、Cランクへの昇格と聞いたティールは表情を歪ませた。

「……まぁ、Cランクへの昇格が関わるとしても、その護衛依頼を断ろうとは思いません。ただ、個人的にはあまり嬉しくないなと思ってるんで」

「そうなんだね。高ランク冒険者になって名を上げる、なんてことにはあまり興味はないと」

「いずれは高ランクの冒険者になりたいとは思ってますよ。でも、今はまだ早過ぎると思って」

「……うん、普通に考えればその通りなんだけどね」

副マスターであるディッシュはティールの冒険者になってから経歴はある程度頭に入っている。

(冒険者になってからは、毎日の様にモンスターを狩っては冒険者ギルドで素材を売っている。勿論、ランク相応の討伐依頼や採集依頼は受けてるけど、圧倒的にモンスターの素材を売って得ている額が多い)

依頼達成で得られる金額より、モンスターの素材をギルドで売った金額の方が高いことは珍しくない。

だが、ティールの場合は殆ど休みを取ることなくモンスターを狩ってはギルドに素材を売りに来る。

(そしてこの街に来てからキラータイガーにサイクロプス。他にもヴァンパイアやリザードマンジェネラルにスカーレットリザードマン。前の街ではブラッディ―タイガーを倒してる……冒険者になって半年も経っていないルーキーの討伐歴としてはおかし過ぎる)

しかし、実力がずば抜けているからこそ低ランクにしておくわけにはいかない。

「ただ、君達の実力は本当に素晴らしい。ティール君とラスト君がオークとコボルトの群れを討伐するのに参加していなければ、冒険者たちが全滅していた可能性は十分にある」

「どうも」

褒められるのは嬉しいが、自分たちの実力に関しては上に上がれるか否かという疑問は持っていない。

「でもディッシュさん、俺たちは……いや、俺はまだ子供です。これから……というか、実際に面倒な輩に絡まれたことがあるんですけど、そういった連中は自力で対処しても本当に良いんですか」

先輩冒険者たちから、イギルをぶっ飛ばした時と同じようにすれば良いとアドバイスを貰った。
ただ、それでもやはり不安が心に残るのでギルドの上層部に当る副ギルドマスターに確認したかった。

「……冒険者は、基本的に実力主義。さすがに殺したりってのは遠慮してほしいけど、実力の差を解らせるためにボコボコにする分には構わないよ」

ディッシュはティールやラストが面倒な輩に対して、制裁を加えることに全く反対の気持ちはない。

「それにね、君達のランクを疑うということは、認定した冒険者ギルドを疑ってるのも同じなんだよね……これがどういう意味か分かる?」

「は、はい。何となく分かります」

一先ずギルドからも許可を貰い、Cランクへの昇格が関わる護衛依頼を受けることが決定した、
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