あっさりと初恋が破れた俺、神からのギフトで倒して殺して奪う

Gai

文字の大きさ
上 下
263 / 730

評価の対象になる

しおりを挟む
ティールの言葉が耳に入った瞬間、後ろに立っているラストから戦意が零れた。

相手は冒険者ギルドの副マスター。
一介の冒険者が手を出してはならない相手だということは理解している。

だが、その副マスターが自分のマスターに何かを隠しているならば……手は出さずとも、自然に威嚇してしまう。

これはラストにとってなんらおかしい行動ではない。

(おいおい、やっぱりどう考えてもルーキーって枠に収まる実力じゃないね)

一瞬でラストの体から零れる戦意を感じ取り、ディッシュは白旗状態。

「……そうだね。確かに一つ、君達に隠してあることがある。ただ……なんでそう思ったのか、教えてもらっても良いかな」

「えっと…………なんていうか、ディッシュさんが今まで向けられたことがない目をしていたので、何か俺に関連するこの依頼以外のことでも考えてるのかと」

「ふ、ふっふっふ。なるほど、そういった違いでバレたのか。ポーカーフェイスには自信がある方なんだけどね」

隠し事をしていたと白状したが、ラストから零れる戦意が止まらないので、早速その隠し事について説明する。

「今回の護衛依頼を受けてくれたら、その評価によってはCランクへの昇格を検討しようと考えていてね……って、あからさまに不機嫌な顔になったね」

隠すつもりもなく、Cランクへの昇格と聞いたティールは表情を歪ませた。

「……まぁ、Cランクへの昇格が関わるとしても、その護衛依頼を断ろうとは思いません。ただ、個人的にはあまり嬉しくないなと思ってるんで」

「そうなんだね。高ランク冒険者になって名を上げる、なんてことにはあまり興味はないと」

「いずれは高ランクの冒険者になりたいとは思ってますよ。でも、今はまだ早過ぎると思って」

「……うん、普通に考えればその通りなんだけどね」

副マスターであるディッシュはティールの冒険者になってから経歴はある程度頭に入っている。

(冒険者になってからは、毎日の様にモンスターを狩っては冒険者ギルドで素材を売っている。勿論、ランク相応の討伐依頼や採集依頼は受けてるけど、圧倒的にモンスターの素材を売って得ている額が多い)

依頼達成で得られる金額より、モンスターの素材をギルドで売った金額の方が高いことは珍しくない。

だが、ティールの場合は殆ど休みを取ることなくモンスターを狩ってはギルドに素材を売りに来る。

(そしてこの街に来てからキラータイガーにサイクロプス。他にもヴァンパイアやリザードマンジェネラルにスカーレットリザードマン。前の街ではブラッディ―タイガーを倒してる……冒険者になって半年も経っていないルーキーの討伐歴としてはおかし過ぎる)

しかし、実力がずば抜けているからこそ低ランクにしておくわけにはいかない。

「ただ、君達の実力は本当に素晴らしい。ティール君とラスト君がオークとコボルトの群れを討伐するのに参加していなければ、冒険者たちが全滅していた可能性は十分にある」

「どうも」

褒められるのは嬉しいが、自分たちの実力に関しては上に上がれるか否かという疑問は持っていない。

「でもディッシュさん、俺たちは……いや、俺はまだ子供です。これから……というか、実際に面倒な輩に絡まれたことがあるんですけど、そういった連中は自力で対処しても本当に良いんですか」

先輩冒険者たちから、イギルをぶっ飛ばした時と同じようにすれば良いとアドバイスを貰った。
ただ、それでもやはり不安が心に残るのでギルドの上層部に当る副ギルドマスターに確認したかった。

「……冒険者は、基本的に実力主義。さすがに殺したりってのは遠慮してほしいけど、実力の差を解らせるためにボコボコにする分には構わないよ」

ディッシュはティールやラストが面倒な輩に対して、制裁を加えることに全く反対の気持ちはない。

「それにね、君達のランクを疑うということは、認定した冒険者ギルドを疑ってるのも同じなんだよね……これがどういう意味か分かる?」

「は、はい。何となく分かります」

一先ずギルドからも許可を貰い、Cランクへの昇格が関わる護衛依頼を受けることが決定した、
しおりを挟む
感想 122

あなたにおすすめの小説

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

学園首席の私は魔力を奪われて婚約破棄されたけど、借り物の魔力でいつまで調子に乗っているつもり?

今川幸乃
ファンタジー
下級貴族の生まれながら魔法の練習に励み、貴族の子女が集まるデルフィーラ学園に首席入学を果たしたレミリア。 しかし進級試験の際に彼女の実力を嫉妬したシルヴィアの呪いで魔力を奪われ、婚約者であったオルクには婚約破棄されてしまう。 が、そんな彼女を助けてくれたのはアルフというミステリアスなクラスメイトであった。 レミリアはアルフとともに呪いを解き、シルヴィアへの復讐を行うことを決意する。 レミリアの魔力を奪ったシルヴィアは調子に乗っていたが、全校生徒の前で魔法を披露する際に魔力を奪い返され、醜態を晒すことになってしまう。 ※3/6~ プチ改稿中

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

処理中です...