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嫌がらせが来る?
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「ラスト、まだ怒ってるのか?」
「怒らずにいられると思っているのか?」
先輩冒険者たちに良いアドバイスを貰った後、ティールとラストは予定通り、防具が売っている店に向かっていた。
ただ、ラストの表情は冒険者ギルドにいる時と同じく、不機嫌なままだった。
「いや、まぁ……俺としては怒ってくれるのは嬉しいけど、ディリスさんには結局どうこうすることは出来ないんだぜ」
「……そうだな。マスターのような例外的な存在でなければ、Dランクの冒険者が白金貨数枚を用意することなど不可能だろう」
ラストの言葉通り、現実的に考えて素人の域から卒業したとはいえ、Dランクになりたての若い連中では短期間で白金貨数枚を貯めるなど、不可能。
遺跡で何か貴重な発見をすれば手に入るかもしれないが、遺跡の中はDランクの冒険者でも探索中に死ぬ可能性がそれなりにある。
ディリスやその仲間が弱いという訳ではないが、遺跡の中で探索を行い、無事に帰って来れる可能性を高める。
それがディリスたちがまず行う準備。
現時点で無理に探索を行っても、既に先駆者たちが通った道には何も残っていない。
「用意したところで、渡すつもりは一ミリもないけどな」
「…………」
ティールの言葉に言葉を返すことが出来なかったラストだが、心の中では金を用意しても渡すつもりはないと言い切ったマスターに感謝していた。
「てか、結構先輩たちに話しちゃったし……昼間だから他のギルド職員の耳にもがっつり入ったよな」
「昼間はあまり冒険者の数は多くないからな……職員たちが俺たちの会話を覚えていてもおかしくない」
「そうなれば、ディリスさんが……こう、危険人物だって話が広まるかもだろ」
「金も用意せず、奴隷を開放しろという発言は……そうだな、確かに危険人物だ」
今回の場合、ティールに圧倒的な実力があるからこそ、ディリスは強行突破でラストを奴隷という立場から解放することは出来ない。
だがもし、ティールがDランク相当の実力しかなければ?
偶々一人になったタイミングを狙われ、殺されてしまう可能性が……決してゼロではない。
(ラストの戦う姿に惚れた人がディリスさんだけとは限らないしな……もしかして、俺に嫌がらせでもしてくるか?)
その可能性は十分にある。
だが、ティールは直ぐにその嫌がらせの内容が思い浮かばなかった。
(嫌がらせ……嫌がらせ……でも、この街にいる間は基本的に遺跡を探索するつもりだから、多分だけど……ディリスさんたちじゃ付いて来れないよな)
遺跡の中ではCランクのモンスターが出現する。
その割合は珍しくなく、暗い場所で戦い慣れていない者が先日二人が戦ったキラータイガーと遭遇すれば、確実に三十秒以内に殺されてしまう。
(取ろうとした依頼書を狙ったかのように取られる? でも、どんなことすれば今度こそ、ラストの鉄拳が飛ぶよな。今のラストだと、女性だからって手加減しない気がするんだが)
おそらく、殺しはしない。
ラストがそれぐらいの手加減は出来ると信用している。
ただ……骨は折ってしまうだろうと確信している。
(どうやら同じランク帯の人には嫌われてる感じだからな)
オークに襲われているところを助けたオルアットたちには慕われているが、彼らのランクは一つ下。
そんな彼らはティールに嫉妬したり嫉むことはなく、尊敬の念を抱いている。
だが、同じDランクの冒険者たちからは思いっきり嫉妬されている。
イギルの様に敵意に近い感情を持つ者はそこまで多くないが、好意的な者は殆どいない。
「マスター、まだここに……ヤドラスに滞在するか?」
「ん? そりゃまぁ、折角遺跡目当てで来たからな。もう少し遺跡を探索しようとは思ってるぞ」
「そうか……」
「もしかして、俺があいつらに嫌われてるのを気にしてるのか? そういうことだったら気にする必要ないぞ。同業者全員がギリスやディリスさんたちみたいな奴らじゃないからな」
ティールにとって今のところ、そういった連中が怖いと感じない。
優しくしてくれる先輩たちもいるので、まだまだこの街を離れる気にはならない。
「怒らずにいられると思っているのか?」
先輩冒険者たちに良いアドバイスを貰った後、ティールとラストは予定通り、防具が売っている店に向かっていた。
ただ、ラストの表情は冒険者ギルドにいる時と同じく、不機嫌なままだった。
「いや、まぁ……俺としては怒ってくれるのは嬉しいけど、ディリスさんには結局どうこうすることは出来ないんだぜ」
「……そうだな。マスターのような例外的な存在でなければ、Dランクの冒険者が白金貨数枚を用意することなど不可能だろう」
ラストの言葉通り、現実的に考えて素人の域から卒業したとはいえ、Dランクになりたての若い連中では短期間で白金貨数枚を貯めるなど、不可能。
遺跡で何か貴重な発見をすれば手に入るかもしれないが、遺跡の中はDランクの冒険者でも探索中に死ぬ可能性がそれなりにある。
ディリスやその仲間が弱いという訳ではないが、遺跡の中で探索を行い、無事に帰って来れる可能性を高める。
それがディリスたちがまず行う準備。
現時点で無理に探索を行っても、既に先駆者たちが通った道には何も残っていない。
「用意したところで、渡すつもりは一ミリもないけどな」
「…………」
ティールの言葉に言葉を返すことが出来なかったラストだが、心の中では金を用意しても渡すつもりはないと言い切ったマスターに感謝していた。
「てか、結構先輩たちに話しちゃったし……昼間だから他のギルド職員の耳にもがっつり入ったよな」
「昼間はあまり冒険者の数は多くないからな……職員たちが俺たちの会話を覚えていてもおかしくない」
「そうなれば、ディリスさんが……こう、危険人物だって話が広まるかもだろ」
「金も用意せず、奴隷を開放しろという発言は……そうだな、確かに危険人物だ」
今回の場合、ティールに圧倒的な実力があるからこそ、ディリスは強行突破でラストを奴隷という立場から解放することは出来ない。
だがもし、ティールがDランク相当の実力しかなければ?
偶々一人になったタイミングを狙われ、殺されてしまう可能性が……決してゼロではない。
(ラストの戦う姿に惚れた人がディリスさんだけとは限らないしな……もしかして、俺に嫌がらせでもしてくるか?)
その可能性は十分にある。
だが、ティールは直ぐにその嫌がらせの内容が思い浮かばなかった。
(嫌がらせ……嫌がらせ……でも、この街にいる間は基本的に遺跡を探索するつもりだから、多分だけど……ディリスさんたちじゃ付いて来れないよな)
遺跡の中ではCランクのモンスターが出現する。
その割合は珍しくなく、暗い場所で戦い慣れていない者が先日二人が戦ったキラータイガーと遭遇すれば、確実に三十秒以内に殺されてしまう。
(取ろうとした依頼書を狙ったかのように取られる? でも、どんなことすれば今度こそ、ラストの鉄拳が飛ぶよな。今のラストだと、女性だからって手加減しない気がするんだが)
おそらく、殺しはしない。
ラストがそれぐらいの手加減は出来ると信用している。
ただ……骨は折ってしまうだろうと確信している。
(どうやら同じランク帯の人には嫌われてる感じだからな)
オークに襲われているところを助けたオルアットたちには慕われているが、彼らのランクは一つ下。
そんな彼らはティールに嫉妬したり嫉むことはなく、尊敬の念を抱いている。
だが、同じDランクの冒険者たちからは思いっきり嫉妬されている。
イギルの様に敵意に近い感情を持つ者はそこまで多くないが、好意的な者は殆どいない。
「マスター、まだここに……ヤドラスに滞在するか?」
「ん? そりゃまぁ、折角遺跡目当てで来たからな。もう少し遺跡を探索しようとは思ってるぞ」
「そうか……」
「もしかして、俺があいつらに嫌われてるのを気にしてるのか? そういうことだったら気にする必要ないぞ。同業者全員がギリスやディリスさんたちみたいな奴らじゃないからな」
ティールにとって今のところ、そういった連中が怖いと感じない。
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