257 / 693
嫌がらせが来る?
しおりを挟む
「ラスト、まだ怒ってるのか?」
「怒らずにいられると思っているのか?」
先輩冒険者たちに良いアドバイスを貰った後、ティールとラストは予定通り、防具が売っている店に向かっていた。
ただ、ラストの表情は冒険者ギルドにいる時と同じく、不機嫌なままだった。
「いや、まぁ……俺としては怒ってくれるのは嬉しいけど、ディリスさんには結局どうこうすることは出来ないんだぜ」
「……そうだな。マスターのような例外的な存在でなければ、Dランクの冒険者が白金貨数枚を用意することなど不可能だろう」
ラストの言葉通り、現実的に考えて素人の域から卒業したとはいえ、Dランクになりたての若い連中では短期間で白金貨数枚を貯めるなど、不可能。
遺跡で何か貴重な発見をすれば手に入るかもしれないが、遺跡の中はDランクの冒険者でも探索中に死ぬ可能性がそれなりにある。
ディリスやその仲間が弱いという訳ではないが、遺跡の中で探索を行い、無事に帰って来れる可能性を高める。
それがディリスたちがまず行う準備。
現時点で無理に探索を行っても、既に先駆者たちが通った道には何も残っていない。
「用意したところで、渡すつもりは一ミリもないけどな」
「…………」
ティールの言葉に言葉を返すことが出来なかったラストだが、心の中では金を用意しても渡すつもりはないと言い切ったマスターに感謝していた。
「てか、結構先輩たちに話しちゃったし……昼間だから他のギルド職員の耳にもがっつり入ったよな」
「昼間はあまり冒険者の数は多くないからな……職員たちが俺たちの会話を覚えていてもおかしくない」
「そうなれば、ディリスさんが……こう、危険人物だって話が広まるかもだろ」
「金も用意せず、奴隷を開放しろという発言は……そうだな、確かに危険人物だ」
今回の場合、ティールに圧倒的な実力があるからこそ、ディリスは強行突破でラストを奴隷という立場から解放することは出来ない。
だがもし、ティールがDランク相当の実力しかなければ?
偶々一人になったタイミングを狙われ、殺されてしまう可能性が……決してゼロではない。
(ラストの戦う姿に惚れた人がディリスさんだけとは限らないしな……もしかして、俺に嫌がらせでもしてくるか?)
その可能性は十分にある。
だが、ティールは直ぐにその嫌がらせの内容が思い浮かばなかった。
(嫌がらせ……嫌がらせ……でも、この街にいる間は基本的に遺跡を探索するつもりだから、多分だけど……ディリスさんたちじゃ付いて来れないよな)
遺跡の中ではCランクのモンスターが出現する。
その割合は珍しくなく、暗い場所で戦い慣れていない者が先日二人が戦ったキラータイガーと遭遇すれば、確実に三十秒以内に殺されてしまう。
(取ろうとした依頼書を狙ったかのように取られる? でも、どんなことすれば今度こそ、ラストの鉄拳が飛ぶよな。今のラストだと、女性だからって手加減しない気がするんだが)
おそらく、殺しはしない。
ラストがそれぐらいの手加減は出来ると信用している。
ただ……骨は折ってしまうだろうと確信している。
(どうやら同じランク帯の人には嫌われてる感じだからな)
オークに襲われているところを助けたオルアットたちには慕われているが、彼らのランクは一つ下。
そんな彼らはティールに嫉妬したり嫉むことはなく、尊敬の念を抱いている。
だが、同じDランクの冒険者たちからは思いっきり嫉妬されている。
イギルの様に敵意に近い感情を持つ者はそこまで多くないが、好意的な者は殆どいない。
「マスター、まだここに……ヤドラスに滞在するか?」
「ん? そりゃまぁ、折角遺跡目当てで来たからな。もう少し遺跡を探索しようとは思ってるぞ」
「そうか……」
「もしかして、俺があいつらに嫌われてるのを気にしてるのか? そういうことだったら気にする必要ないぞ。同業者全員がギリスやディリスさんたちみたいな奴らじゃないからな」
ティールにとって今のところ、そういった連中が怖いと感じない。
優しくしてくれる先輩たちもいるので、まだまだこの街を離れる気にはならない。
「怒らずにいられると思っているのか?」
先輩冒険者たちに良いアドバイスを貰った後、ティールとラストは予定通り、防具が売っている店に向かっていた。
ただ、ラストの表情は冒険者ギルドにいる時と同じく、不機嫌なままだった。
「いや、まぁ……俺としては怒ってくれるのは嬉しいけど、ディリスさんには結局どうこうすることは出来ないんだぜ」
「……そうだな。マスターのような例外的な存在でなければ、Dランクの冒険者が白金貨数枚を用意することなど不可能だろう」
ラストの言葉通り、現実的に考えて素人の域から卒業したとはいえ、Dランクになりたての若い連中では短期間で白金貨数枚を貯めるなど、不可能。
遺跡で何か貴重な発見をすれば手に入るかもしれないが、遺跡の中はDランクの冒険者でも探索中に死ぬ可能性がそれなりにある。
ディリスやその仲間が弱いという訳ではないが、遺跡の中で探索を行い、無事に帰って来れる可能性を高める。
それがディリスたちがまず行う準備。
現時点で無理に探索を行っても、既に先駆者たちが通った道には何も残っていない。
「用意したところで、渡すつもりは一ミリもないけどな」
「…………」
ティールの言葉に言葉を返すことが出来なかったラストだが、心の中では金を用意しても渡すつもりはないと言い切ったマスターに感謝していた。
「てか、結構先輩たちに話しちゃったし……昼間だから他のギルド職員の耳にもがっつり入ったよな」
「昼間はあまり冒険者の数は多くないからな……職員たちが俺たちの会話を覚えていてもおかしくない」
「そうなれば、ディリスさんが……こう、危険人物だって話が広まるかもだろ」
「金も用意せず、奴隷を開放しろという発言は……そうだな、確かに危険人物だ」
今回の場合、ティールに圧倒的な実力があるからこそ、ディリスは強行突破でラストを奴隷という立場から解放することは出来ない。
だがもし、ティールがDランク相当の実力しかなければ?
偶々一人になったタイミングを狙われ、殺されてしまう可能性が……決してゼロではない。
(ラストの戦う姿に惚れた人がディリスさんだけとは限らないしな……もしかして、俺に嫌がらせでもしてくるか?)
その可能性は十分にある。
だが、ティールは直ぐにその嫌がらせの内容が思い浮かばなかった。
(嫌がらせ……嫌がらせ……でも、この街にいる間は基本的に遺跡を探索するつもりだから、多分だけど……ディリスさんたちじゃ付いて来れないよな)
遺跡の中ではCランクのモンスターが出現する。
その割合は珍しくなく、暗い場所で戦い慣れていない者が先日二人が戦ったキラータイガーと遭遇すれば、確実に三十秒以内に殺されてしまう。
(取ろうとした依頼書を狙ったかのように取られる? でも、どんなことすれば今度こそ、ラストの鉄拳が飛ぶよな。今のラストだと、女性だからって手加減しない気がするんだが)
おそらく、殺しはしない。
ラストがそれぐらいの手加減は出来ると信用している。
ただ……骨は折ってしまうだろうと確信している。
(どうやら同じランク帯の人には嫌われてる感じだからな)
オークに襲われているところを助けたオルアットたちには慕われているが、彼らのランクは一つ下。
そんな彼らはティールに嫉妬したり嫉むことはなく、尊敬の念を抱いている。
だが、同じDランクの冒険者たちからは思いっきり嫉妬されている。
イギルの様に敵意に近い感情を持つ者はそこまで多くないが、好意的な者は殆どいない。
「マスター、まだここに……ヤドラスに滞在するか?」
「ん? そりゃまぁ、折角遺跡目当てで来たからな。もう少し遺跡を探索しようとは思ってるぞ」
「そうか……」
「もしかして、俺があいつらに嫌われてるのを気にしてるのか? そういうことだったら気にする必要ないぞ。同業者全員がギリスやディリスさんたちみたいな奴らじゃないからな」
ティールにとって今のところ、そういった連中が怖いと感じない。
優しくしてくれる先輩たちもいるので、まだまだこの街を離れる気にはならない。
25
お気に入りに追加
1,798
あなたにおすすめの小説
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
私の代わりが見つかったから契約破棄ですか……その代わりの人……私の勘が正しければ……結界詐欺師ですよ
Ryo-k
ファンタジー
「リリーナ! 貴様との契約を破棄する!」
結界魔術師リリーナにそう仰るのは、ライオネル・ウォルツ侯爵。
「彼女は結界魔術師1級を所持している。だから貴様はもう不要だ」
とシュナ・ファールと名乗る別の女性を部屋に呼んで宣言する。
リリーナは結界魔術師2級を所持している。
ライオネルの言葉が本当なら確かにすごいことだ。
……本当なら……ね。
※完結まで執筆済み
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
髪の色は愛の証 〜白髪少年愛される〜
あめ
ファンタジー
髪の色がとてもカラフルな世界。
そんな世界に唯一現れた白髪の少年。
その少年とは神様に転生させられた日本人だった。
その少年が“髪の色=愛の証”とされる世界で愛を知らぬ者として、可愛がられ愛される話。
⚠第1章の主人公は、2歳なのでめっちゃ拙い発音です。滑舌死んでます。
⚠愛されるだけではなく、ちょっと可哀想なお話もあります。
俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から「破壊神」と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
理想郷 - 私と幼馴染みの異世界物語 -
由奈(YUNA)
ファンタジー
1ヶ月前、幼馴染みの井黒揚羽が行方不明になって、私の世界は一変した。
*
どこかへ一人で行けるはずがない病弱な幼馴染みの謎の失踪理由を探して辿り着いたのが都市伝説“ユートピア”という異世界の話だった。
*
私はただ、アゲハを心配だったから、ただそれだけだったのに。
*
理想郷とは名ばかりのその世界で見たのは『破壊者と救済者』二つの勢力が争う荒れ果てた世界だった。
*
*
*
異世界で異能力を手に入れて戦う冒険物語。
※タイトルほどポップな内容ではありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる