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悩み解消
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「……マスター、機嫌が良いな」
「ん? そうか」
「あぁ。明らかに昨日より機嫌良く見える」
宴会を終えた翌日の朝、一緒に夕食を食べる主人の顔が明らかにご機嫌だった。
若干……ほんの少しではあるが、昨日自分は酔っていた。
そこは認める。
だが、帰り道……マスターであるティールとどのような事を話しながら帰ったか。
そしてある程度の表情は覚えている。
(どう考えても気落ちしていた筈だが……あれから寝るまでに、何か良いことでもあったのか?)
短時間の間に何が起こったのか、非常に気になる。
「良いことが分かった……いや、まだ成功してないから絶対ではないか。とりあえず、もしかしたらやらかしたミスを取り返せるかもしれないんだ」
「そ、そうなのか……成功すると良いな」
一体何のことを言っているのか分からないが、一先ず成功することを祈る。
「これが成功すれば、これからもうっかりやってしまっても、ミスを取り返せる。是非とも成功させたいところだ」
朝食を食べ終えた後、ティールたちは冒険者ギルドに行って前日の戦いで手に入れたモンスターの死体に関して色々と決めなければならない。
「ところでさ、ラストはこれからどうしたい」
「……どうとは?」
「ほら、受けてみたい依頼とかないか」
「その辺りはマスターに任せる。俺が口を出すところではないだろう」
同じパーティーメンバーではあるが、ティールが主人でラストが奴隷。
自分の立場が分かっているからこそ、先日同じような発言をした。
「別に俺はそういうのは気にしないからさ。とりあえず考えてみろよ」
「ふむ……少し待ってくれ」
どんな依頼を受けてみたいか。
ティールにそう尋ねられ、食事の手を止めて一応考える。
十秒ほどじっくり考え、答えが出た。
「強そうなモンスターと戦える依頼、だな」
「ラスト……昨日強いモンスターと戦ったばかりじゃないか」
なんとなくそう来るか? と予想していた答えが見事に出てきた。
ティールは実際にリザードマンジェネラルと戦っていないが、パッと視た限りではスカーレットリザードマンと同等の力を持っていると感じた。
「そうだが、やはり俺としては強い相手と戦っている時が一番心が躍る」
「……そういうものか」
冒険者の端くれとして、全くその気持ちが解らない訳ではない。
しかし、ティールはもう一度先日戦ったスカーレットリザードマンと戦いたいかと尋ねられれば、いいえと答える。
(あの戦いでレベルが上がったから、また身体能力が上がったと思うけど……まだ良い攻撃パターンを思い付いていないから、次こそは完璧に倒す!! なんて思えないな)
いずれは余裕をもって戦える様になりたいとは思っているが、昨日の戦いは本当にギリギリの内容だった。
体が危機に反応しなければ、体をバッサリ斬られていた。
(もっと雲雷に頼らない戦い方をしないとな)
朝食を食べ終わり、ギルドに向こう途中も同じ事を考えていた。
実際のところ、ティールは実戦で雲雷を多用してはいない。
ただ、格上との戦いでそれを上手く使えば致命傷を与えられるとは思っている。
「マスターは魔法の腕も高いのだから、もっと魔法を戦闘に活かしたらどうだ?」
「……それも、そうだな」
スカーレットリザードマンとの戦闘では、ブラッディ―タイガー戦より動きの速さが肝となり、あまり魔法に意識を向けていなかった。
強敵と戦うために意識した方が良いことが分かり、表情に明るさが戻る。
主人の悩みが解消されたと分かり、ラストも自然と表情が明るくなった。
「すいません、素材を受け取りに来たティールです」
ギルドカードを見せながら伝えると、受付嬢は直ぐにティールを解体場所へと案内。
「おう、待ってたぞ!!!」
先日持ち込まれたモンスターの解体を行った解体士たちのリーダーであり、ラストから好印象を持たれている解体士が待っていた。
「これがお前ら二人の分だ」
そこには大量のリザードマン、コボルト、オークの素材が並べられていた。
「ん? そうか」
「あぁ。明らかに昨日より機嫌良く見える」
宴会を終えた翌日の朝、一緒に夕食を食べる主人の顔が明らかにご機嫌だった。
若干……ほんの少しではあるが、昨日自分は酔っていた。
そこは認める。
だが、帰り道……マスターであるティールとどのような事を話しながら帰ったか。
そしてある程度の表情は覚えている。
(どう考えても気落ちしていた筈だが……あれから寝るまでに、何か良いことでもあったのか?)
短時間の間に何が起こったのか、非常に気になる。
「良いことが分かった……いや、まだ成功してないから絶対ではないか。とりあえず、もしかしたらやらかしたミスを取り返せるかもしれないんだ」
「そ、そうなのか……成功すると良いな」
一体何のことを言っているのか分からないが、一先ず成功することを祈る。
「これが成功すれば、これからもうっかりやってしまっても、ミスを取り返せる。是非とも成功させたいところだ」
朝食を食べ終えた後、ティールたちは冒険者ギルドに行って前日の戦いで手に入れたモンスターの死体に関して色々と決めなければならない。
「ところでさ、ラストはこれからどうしたい」
「……どうとは?」
「ほら、受けてみたい依頼とかないか」
「その辺りはマスターに任せる。俺が口を出すところではないだろう」
同じパーティーメンバーではあるが、ティールが主人でラストが奴隷。
自分の立場が分かっているからこそ、先日同じような発言をした。
「別に俺はそういうのは気にしないからさ。とりあえず考えてみろよ」
「ふむ……少し待ってくれ」
どんな依頼を受けてみたいか。
ティールにそう尋ねられ、食事の手を止めて一応考える。
十秒ほどじっくり考え、答えが出た。
「強そうなモンスターと戦える依頼、だな」
「ラスト……昨日強いモンスターと戦ったばかりじゃないか」
なんとなくそう来るか? と予想していた答えが見事に出てきた。
ティールは実際にリザードマンジェネラルと戦っていないが、パッと視た限りではスカーレットリザードマンと同等の力を持っていると感じた。
「そうだが、やはり俺としては強い相手と戦っている時が一番心が躍る」
「……そういうものか」
冒険者の端くれとして、全くその気持ちが解らない訳ではない。
しかし、ティールはもう一度先日戦ったスカーレットリザードマンと戦いたいかと尋ねられれば、いいえと答える。
(あの戦いでレベルが上がったから、また身体能力が上がったと思うけど……まだ良い攻撃パターンを思い付いていないから、次こそは完璧に倒す!! なんて思えないな)
いずれは余裕をもって戦える様になりたいとは思っているが、昨日の戦いは本当にギリギリの内容だった。
体が危機に反応しなければ、体をバッサリ斬られていた。
(もっと雲雷に頼らない戦い方をしないとな)
朝食を食べ終わり、ギルドに向こう途中も同じ事を考えていた。
実際のところ、ティールは実戦で雲雷を多用してはいない。
ただ、格上との戦いでそれを上手く使えば致命傷を与えられるとは思っている。
「マスターは魔法の腕も高いのだから、もっと魔法を戦闘に活かしたらどうだ?」
「……それも、そうだな」
スカーレットリザードマンとの戦闘では、ブラッディ―タイガー戦より動きの速さが肝となり、あまり魔法に意識を向けていなかった。
強敵と戦うために意識した方が良いことが分かり、表情に明るさが戻る。
主人の悩みが解消されたと分かり、ラストも自然と表情が明るくなった。
「すいません、素材を受け取りに来たティールです」
ギルドカードを見せながら伝えると、受付嬢は直ぐにティールを解体場所へと案内。
「おう、待ってたぞ!!!」
先日持ち込まれたモンスターの解体を行った解体士たちのリーダーであり、ラストから好印象を持たれている解体士が待っていた。
「これがお前ら二人の分だ」
そこには大量のリザードマン、コボルト、オークの素材が並べられていた。
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