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落しそうなほど震えていた
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イグラスから一緒にコボルトとオークの巣を討伐しないかと誘いを受けてから三日間、二人はいつもと変わらない日常を過ごしていた。
日常とはいっても、決して穏やかな時間を過ごしていた訳ではなく、三日間とも昼手前から夕方まで何かしらの討伐依頼を受けていた。
ただ、森の中を探索している最中にはお目当てのモンスター以外も二人のことを襲いに掛かる。
そんなモンスターたちに対して、二人は一歩も引かずに戦い続け、ギルドに帰ってくる度に受付嬢を驚かせた。
(この三日間、良い感じに気分を保てたな)
受けた討伐依頼のモンスターがその日のうちに見つかり、討伐出来たというのも気分を保てた要因。
しかしそれ以上に、良い緊張感をくれるモンスターたちが二人を見つけ、殺気を振りかざしてきた。
襲ってきたモンスターの中にはCランクの個体もおり、その度にティールは無意識に口端を吊り上げ、ラストは満足げな笑みを浮かべていた。
そしてこの三日間、討伐の証拠としてギルドで素材や魔石を売ったことで、ラストは一気にランクを駆け上がった。
結果……ティールと同じDランクまでランクアップ。
ティール以上の速さでDランクまで上り詰めた。
ただ、その結果にティールは喜びはしたが、特に驚くことはなかった。
(そういえば、ラストがDランクにランクアップして結構な人数が驚いてたな。いや、誰よりも驚いてたのはラストにギルドカードを渡した受付嬢だったか)
その時周囲にいた冒険者たちはラストが冒険者になって何か月なのか……それとも何年目なのか知らない。
しかし受付嬢は事実を知っていた。
知っていたからこそ、驚かずにはいられない。
(あの人、むっちゃ驚いていたな。ラストにギルドカードを返すときなんて、超震えてたし……まっ、それだけ上がるのが早かったんだろうな)
「マスター、何を考えてるんだ? 随分と嬉しそうな表情を浮かべていたが」
「ん? そんなに笑みを浮かべていたか??」
「あぁ、随分と嬉しそうにしていたが……この三日間で、何か嬉しい出来事でもあったか?」
ラストは自分が知らない間に、主人がニーナとデートをする約束でもしたのかと思っていたが、ニヤニヤとしていた理由は全く違った。
「ラストが早い段階でDランクに上がれたのが嬉しくてな」
「……そうなのか?」
そんなことを嬉しがっているのか? とは言わない。
自身の出来事を嬉しいと感じ取ってくれているので、ラストも悪い気はしない。
「そりゃそうだろう。仲間のランクが上がったら嬉しいに決まってるだろ」
「そうか……ありがとう」
何となくではあるが、感謝の言葉が漏れた。
ただ、ティールの言葉が全ての冒険者に当てはまりはしない。
たとえ同じパーティーのメンバーであったとしても、意識している相手……簡単にいえば、ライバルと認識している相手が自分より先に上へ行けば、少なからず悔しいという気持ちが生まれる。
素直に仲間のランクアップを祝えない。
そこから調子を崩し、仲間に八つ当たりして解散……なんて例もある。
しかしティールは冒険者としていずれは成功したいという気持ちはあるが、金には随分と余裕がある。
これが要因となり、急いで……最短距離でランクアップしたいとは思っていない。
同期や同じルーキーからすればふざけるなという話だが、日々の生活に余裕があるので仕方ないと言えば仕方ない。
「さて、そろそろ着くな」
「他のパーティーと合同で、か……」
「なんだ、やっぱりちょっと不満なのか」
「……多少は不満だが、向こうが……イグラスが今回の話を持って来なければ、参加しなかった討伐だ。今更どうこうしようとは思わない。だが、イグラス以外の冒険者も多く参加するのだろ」
「…………あぁ、そういうことか」
ティールはラストが何を心配しているのか分かった。
分かったが、ティール自身はそのことについて大して心配していなかった。
日常とはいっても、決して穏やかな時間を過ごしていた訳ではなく、三日間とも昼手前から夕方まで何かしらの討伐依頼を受けていた。
ただ、森の中を探索している最中にはお目当てのモンスター以外も二人のことを襲いに掛かる。
そんなモンスターたちに対して、二人は一歩も引かずに戦い続け、ギルドに帰ってくる度に受付嬢を驚かせた。
(この三日間、良い感じに気分を保てたな)
受けた討伐依頼のモンスターがその日のうちに見つかり、討伐出来たというのも気分を保てた要因。
しかしそれ以上に、良い緊張感をくれるモンスターたちが二人を見つけ、殺気を振りかざしてきた。
襲ってきたモンスターの中にはCランクの個体もおり、その度にティールは無意識に口端を吊り上げ、ラストは満足げな笑みを浮かべていた。
そしてこの三日間、討伐の証拠としてギルドで素材や魔石を売ったことで、ラストは一気にランクを駆け上がった。
結果……ティールと同じDランクまでランクアップ。
ティール以上の速さでDランクまで上り詰めた。
ただ、その結果にティールは喜びはしたが、特に驚くことはなかった。
(そういえば、ラストがDランクにランクアップして結構な人数が驚いてたな。いや、誰よりも驚いてたのはラストにギルドカードを渡した受付嬢だったか)
その時周囲にいた冒険者たちはラストが冒険者になって何か月なのか……それとも何年目なのか知らない。
しかし受付嬢は事実を知っていた。
知っていたからこそ、驚かずにはいられない。
(あの人、むっちゃ驚いていたな。ラストにギルドカードを返すときなんて、超震えてたし……まっ、それだけ上がるのが早かったんだろうな)
「マスター、何を考えてるんだ? 随分と嬉しそうな表情を浮かべていたが」
「ん? そんなに笑みを浮かべていたか??」
「あぁ、随分と嬉しそうにしていたが……この三日間で、何か嬉しい出来事でもあったか?」
ラストは自分が知らない間に、主人がニーナとデートをする約束でもしたのかと思っていたが、ニヤニヤとしていた理由は全く違った。
「ラストが早い段階でDランクに上がれたのが嬉しくてな」
「……そうなのか?」
そんなことを嬉しがっているのか? とは言わない。
自身の出来事を嬉しいと感じ取ってくれているので、ラストも悪い気はしない。
「そりゃそうだろう。仲間のランクが上がったら嬉しいに決まってるだろ」
「そうか……ありがとう」
何となくではあるが、感謝の言葉が漏れた。
ただ、ティールの言葉が全ての冒険者に当てはまりはしない。
たとえ同じパーティーのメンバーであったとしても、意識している相手……簡単にいえば、ライバルと認識している相手が自分より先に上へ行けば、少なからず悔しいという気持ちが生まれる。
素直に仲間のランクアップを祝えない。
そこから調子を崩し、仲間に八つ当たりして解散……なんて例もある。
しかしティールは冒険者としていずれは成功したいという気持ちはあるが、金には随分と余裕がある。
これが要因となり、急いで……最短距離でランクアップしたいとは思っていない。
同期や同じルーキーからすればふざけるなという話だが、日々の生活に余裕があるので仕方ないと言えば仕方ない。
「さて、そろそろ着くな」
「他のパーティーと合同で、か……」
「なんだ、やっぱりちょっと不満なのか」
「……多少は不満だが、向こうが……イグラスが今回の話を持って来なければ、参加しなかった討伐だ。今更どうこうしようとは思わない。だが、イグラス以外の冒険者も多く参加するのだろ」
「…………あぁ、そういうことか」
ティールはラストが何を心配しているのか分かった。
分かったが、ティール自身はそのことについて大して心配していなかった。
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