あっさりと初恋が破れた俺、神からのギフトで倒して殺して奪う

Gai

文字の大きさ
上 下
201 / 728

二人とも間違ってはいない

しおりを挟む
「おい、大丈夫か二人とも」

「あ、あぁ……もちろん、大丈夫だよ。ただ、あまりにも桁違いな金額に驚いてしまっただけだよ」

正確には、二人とも驚き固まっていた。
それは仕方ないだろう。

まだ冒険者としてルーキーの域を出ない二人にとって、白金貨というのはとんでもなく大きい金額であり、身近な存在ではない。

そんな大金である白金貨が六枚。
二人からすれば、驚くなというのは無理な話。

仲間の四人がこの話を聞けば、自分たちと同じようになるのは容易に想像できた。

「白金貨六枚か……色々と買えるよな」

今まで食べたことがないような料理、憧れるばかりでまだまだ手に入らない装備。
そんな物たちがフィリックの頭の中を埋め尽くしていた。

「言っておくが、ラストはそれに見合うだけの力をちゃんと持ってるぞ」

その力を既に実戦で観たティールは自信満々に告げる。

「Dランクのモンスターぐらいなら簡単に倒す。Cランクのモンスターが相手でも問題無い。昨日なんか、ヴァンパイア相手に一人で倒したからな」

「「ぶっ!!??」」

二人は口に含んだ飲み物を吹き出しそうになり、慌てて口を塞いだ。
そして何度かせき込み、ようやく口を開いた。

「てぃ、ティール……それは、本当の本当なのかい?」

「おう、勿論だ。そうだな……俺が授かったギフトに誓おう」

最大限、自分の言葉が信用出来るであろうものに誓った。
自分の言葉が誠であると……実際に目の前で実現されたと。

「いや、ティールの言葉を疑う訳じゃないけど……なんというか、まだそんなにモンスターと出会ったことがない僕らにとっては直ぐに理解出来ないというか……なぁ」

「そ、そうだな……にわかには信じられない、と言いたいところだが……そっちに兄ちゃん。ラストなら確かに倒しそうだな」

正確な実力は全く解らない、知らない。
だが、自分たちより高い戦闘力を持っている事だけは本能的に解る。

「信じなくて良い」

ラストの口からそんな言葉が零れた。
ヴァンパイアを一人で倒したという内容を否定する言葉を聞き、フィリックとラックが首を傾げた。

「ど、どういうことだい? 一人でヴァンパイアを倒したんじゃないのか?」

ティールが誇張して話している様には思えない。
しかし、ラストの表情は真剣そのもの。

どちらが本当のことを言っているのか分からない。

「マスターから貸してもらった斬馬刀とソードブレイカーがなければ、あのヴァンパイアには勝てなかった」

「なるほど、特別な武器がなければ勝てなかったということか」

二人の言葉が、どちらも正しいというのが分かった。

ただ……二人の頭に一つ疑問が浮かんだ。
特別な武器を借りたとしても、果たしてBランクのヴァンパイアを相手に勝てるのか?

((絶対に無理だな))

二人の答えは全く同じだった。
高ランクの武器を装備したところで、自分たちがBランクのモンスターに勝てる訳がない。

「というか、遺跡にはヴァンパイアがいるんだな……はぁ~~~~、やっぱり遺跡を探索できるようになるのはまだまだ先みたいだな」

冒険者として生活していれば、いずれはモンスターと戦って負ける……そう、殺されるかもしれない。
それはフィリックも分かっているが、心のどこかで死にたくないという思いがある。

その思いはティールやラストも持っている。
決して恥ずべき思いではない。

「元々はキラータイガーの討伐依頼を受けてヤドラス遺跡に向かったんだよ」

「き、キラータイガーってCランクのモンスターじゃないか……でも、サイクロプスを倒したティールなら問題無い、か。けどさ、受ける前に受付嬢さんに止められなかった?」

「止められたな。でも、ヤバそうになったら逃げるって言ってなんとか押し切った」

「は、ははは。無茶するなぁ」

実戦を知らない受付嬢でも、多くの冒険者を見てきたのでラストが強いというのはなんとなく解かる。
それでも、遺跡内に生息するキラータイガーはランク以上の強味がある。

受付嬢が討伐依頼を受けようとする二人を止めるのも無理はなかった。
しおりを挟む
感想 122

あなたにおすすめの小説

契約結婚のはずが、気づけば王族すら跪いていました

言諮 アイ
ファンタジー
――名ばかりの妻のはずだった。 貧乏貴族の娘であるリリアは、家の借金を返すため、冷酷と名高い辺境伯アレクシスと契約結婚を結ぶことに。 「ただの形式だけの結婚だ。お互い干渉せず、適当にやってくれ」 それが彼の第一声だった。愛の欠片もない契約。そう、リリアはただの「飾り」のはずだった。 だが、彼女には誰もが知らぬ “ある力” があった。 それは、神代より伝わる失われた魔法【王威の審判】。 それは“本来、王にのみ宿る力”であり、王族すら彼女の前に跪く絶対的な力――。 気づけばリリアは貴族社会を塗り替え、辺境伯すら翻弄し、王すら頭を垂れる存在へ。 「これは……一体どういうことだ?」 「さあ? ただの契約結婚のはずでしたけど?」 いつしか契約は意味を失い、冷酷な辺境伯は彼女を「真の妻」として求め始める。 ――これは、一人の少女が世界を変え、気づけばすべてを手に入れていた物語。

追放王子の気ままなクラフト旅

九頭七尾
ファンタジー
前世の記憶を持って生まれたロデス王国の第五王子、セリウス。赤子時代から魔法にのめり込んだ彼は、前世の知識を活かしながら便利な魔道具を次々と作り出していた。しかしそんな彼の存在を脅威に感じた兄の謀略で、僅か十歳のときに王宮から追放されてしまう。「むしろありがたい。世界中をのんびり旅しよう」お陰で自由の身になったセリウスは、様々な魔道具をクラフトしながら気ままな旅を満喫するのだった。

だらだら生きるテイマーのお話

めぇ
ファンタジー
自堕落・・・もとい楽して生きたい一人のテイマーのお話。目指すのはスローライフ!

噂(うわさ)―誰よりも近くにいるのは私だと思ってたのに―

日室千種・ちぐ
ファンタジー
身に覚えのない噂で、知らぬ間に婚約者を失いそうになった男が挽回するお話。男主人公です。

転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。 そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?! しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...? ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...? 不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。 拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。 小説家になろう様でも公開しております。

伯爵令嬢の秘密の知識

シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のルナリス伯爵家にミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

冒険者パーティから追放された俺、万物創生スキルをもらい、楽園でスローライフを送る

咲阿ましろ
ファンタジー
とある出来事をきっかけに仲間から戦力外通告を突きつけられ、パーティを追放された冒険者カイル。 だが、以前に善行を施した神様から『万物創生』のスキルをもらい、人生が一変する。 それは、便利な家具から大規模な土木工事、果てはモンスター退治用のチート武器までなんでも作ることができるスキルだった。 世界から見捨てられた『呪われた村』にたどり着いたカイルは、スキルを使って、美味しい料理や便利な道具、インフラ整備からモンスター撃退などを次々とこなす。 快適な楽園となっていく村で、カイルのスローライフが幕を開ける──。 ●表紙画像は、ツギクル様のイラストプレゼント企画で阿倍野ちゃこ先生が描いてくださったヒロインのノエルです。大きな画像は1章4「呪われた村1」の末尾に載せてあります。(c)Tugikuru Corp. ※転載等はご遠慮ください。

処理中です...