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二人とも間違ってはいない
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「おい、大丈夫か二人とも」
「あ、あぁ……もちろん、大丈夫だよ。ただ、あまりにも桁違いな金額に驚いてしまっただけだよ」
正確には、二人とも驚き固まっていた。
それは仕方ないだろう。
まだ冒険者としてルーキーの域を出ない二人にとって、白金貨というのはとんでもなく大きい金額であり、身近な存在ではない。
そんな大金である白金貨が六枚。
二人からすれば、驚くなというのは無理な話。
仲間の四人がこの話を聞けば、自分たちと同じようになるのは容易に想像できた。
「白金貨六枚か……色々と買えるよな」
今まで食べたことがないような料理、憧れるばかりでまだまだ手に入らない装備。
そんな物たちがフィリックの頭の中を埋め尽くしていた。
「言っておくが、ラストはそれに見合うだけの力をちゃんと持ってるぞ」
その力を既に実戦で観たティールは自信満々に告げる。
「Dランクのモンスターぐらいなら簡単に倒す。Cランクのモンスターが相手でも問題無い。昨日なんか、ヴァンパイア相手に一人で倒したからな」
「「ぶっ!!??」」
二人は口に含んだ飲み物を吹き出しそうになり、慌てて口を塞いだ。
そして何度かせき込み、ようやく口を開いた。
「てぃ、ティール……それは、本当の本当なのかい?」
「おう、勿論だ。そうだな……俺が授かったギフトに誓おう」
最大限、自分の言葉が信用出来るであろうものに誓った。
自分の言葉が誠であると……実際に目の前で実現されたと。
「いや、ティールの言葉を疑う訳じゃないけど……なんというか、まだそんなにモンスターと出会ったことがない僕らにとっては直ぐに理解出来ないというか……なぁ」
「そ、そうだな……にわかには信じられない、と言いたいところだが……そっちに兄ちゃん。ラストなら確かに倒しそうだな」
正確な実力は全く解らない、知らない。
だが、自分たちより高い戦闘力を持っている事だけは本能的に解る。
「信じなくて良い」
ラストの口からそんな言葉が零れた。
ヴァンパイアを一人で倒したという内容を否定する言葉を聞き、フィリックとラックが首を傾げた。
「ど、どういうことだい? 一人でヴァンパイアを倒したんじゃないのか?」
ティールが誇張して話している様には思えない。
しかし、ラストの表情は真剣そのもの。
どちらが本当のことを言っているのか分からない。
「マスターから貸してもらった斬馬刀とソードブレイカーがなければ、あのヴァンパイアには勝てなかった」
「なるほど、特別な武器がなければ勝てなかったということか」
二人の言葉が、どちらも正しいというのが分かった。
ただ……二人の頭に一つ疑問が浮かんだ。
特別な武器を借りたとしても、果たしてBランクのヴァンパイアを相手に勝てるのか?
((絶対に無理だな))
二人の答えは全く同じだった。
高ランクの武器を装備したところで、自分たちがBランクのモンスターに勝てる訳がない。
「というか、遺跡にはヴァンパイアがいるんだな……はぁ~~~~、やっぱり遺跡を探索できるようになるのはまだまだ先みたいだな」
冒険者として生活していれば、いずれはモンスターと戦って負ける……そう、殺されるかもしれない。
それはフィリックも分かっているが、心のどこかで死にたくないという思いがある。
その思いはティールやラストも持っている。
決して恥ずべき思いではない。
「元々はキラータイガーの討伐依頼を受けてヤドラス遺跡に向かったんだよ」
「き、キラータイガーってCランクのモンスターじゃないか……でも、サイクロプスを倒したティールなら問題無い、か。けどさ、受ける前に受付嬢さんに止められなかった?」
「止められたな。でも、ヤバそうになったら逃げるって言ってなんとか押し切った」
「は、ははは。無茶するなぁ」
実戦を知らない受付嬢でも、多くの冒険者を見てきたのでラストが強いというのはなんとなく解かる。
それでも、遺跡内に生息するキラータイガーはランク以上の強味がある。
受付嬢が討伐依頼を受けようとする二人を止めるのも無理はなかった。
「あ、あぁ……もちろん、大丈夫だよ。ただ、あまりにも桁違いな金額に驚いてしまっただけだよ」
正確には、二人とも驚き固まっていた。
それは仕方ないだろう。
まだ冒険者としてルーキーの域を出ない二人にとって、白金貨というのはとんでもなく大きい金額であり、身近な存在ではない。
そんな大金である白金貨が六枚。
二人からすれば、驚くなというのは無理な話。
仲間の四人がこの話を聞けば、自分たちと同じようになるのは容易に想像できた。
「白金貨六枚か……色々と買えるよな」
今まで食べたことがないような料理、憧れるばかりでまだまだ手に入らない装備。
そんな物たちがフィリックの頭の中を埋め尽くしていた。
「言っておくが、ラストはそれに見合うだけの力をちゃんと持ってるぞ」
その力を既に実戦で観たティールは自信満々に告げる。
「Dランクのモンスターぐらいなら簡単に倒す。Cランクのモンスターが相手でも問題無い。昨日なんか、ヴァンパイア相手に一人で倒したからな」
「「ぶっ!!??」」
二人は口に含んだ飲み物を吹き出しそうになり、慌てて口を塞いだ。
そして何度かせき込み、ようやく口を開いた。
「てぃ、ティール……それは、本当の本当なのかい?」
「おう、勿論だ。そうだな……俺が授かったギフトに誓おう」
最大限、自分の言葉が信用出来るであろうものに誓った。
自分の言葉が誠であると……実際に目の前で実現されたと。
「いや、ティールの言葉を疑う訳じゃないけど……なんというか、まだそんなにモンスターと出会ったことがない僕らにとっては直ぐに理解出来ないというか……なぁ」
「そ、そうだな……にわかには信じられない、と言いたいところだが……そっちに兄ちゃん。ラストなら確かに倒しそうだな」
正確な実力は全く解らない、知らない。
だが、自分たちより高い戦闘力を持っている事だけは本能的に解る。
「信じなくて良い」
ラストの口からそんな言葉が零れた。
ヴァンパイアを一人で倒したという内容を否定する言葉を聞き、フィリックとラックが首を傾げた。
「ど、どういうことだい? 一人でヴァンパイアを倒したんじゃないのか?」
ティールが誇張して話している様には思えない。
しかし、ラストの表情は真剣そのもの。
どちらが本当のことを言っているのか分からない。
「マスターから貸してもらった斬馬刀とソードブレイカーがなければ、あのヴァンパイアには勝てなかった」
「なるほど、特別な武器がなければ勝てなかったということか」
二人の言葉が、どちらも正しいというのが分かった。
ただ……二人の頭に一つ疑問が浮かんだ。
特別な武器を借りたとしても、果たしてBランクのヴァンパイアを相手に勝てるのか?
((絶対に無理だな))
二人の答えは全く同じだった。
高ランクの武器を装備したところで、自分たちがBランクのモンスターに勝てる訳がない。
「というか、遺跡にはヴァンパイアがいるんだな……はぁ~~~~、やっぱり遺跡を探索できるようになるのはまだまだ先みたいだな」
冒険者として生活していれば、いずれはモンスターと戦って負ける……そう、殺されるかもしれない。
それはフィリックも分かっているが、心のどこかで死にたくないという思いがある。
その思いはティールやラストも持っている。
決して恥ずべき思いではない。
「元々はキラータイガーの討伐依頼を受けてヤドラス遺跡に向かったんだよ」
「き、キラータイガーってCランクのモンスターじゃないか……でも、サイクロプスを倒したティールなら問題無い、か。けどさ、受ける前に受付嬢さんに止められなかった?」
「止められたな。でも、ヤバそうになったら逃げるって言ってなんとか押し切った」
「は、ははは。無茶するなぁ」
実戦を知らない受付嬢でも、多くの冒険者を見てきたのでラストが強いというのはなんとなく解かる。
それでも、遺跡内に生息するキラータイガーはランク以上の強味がある。
受付嬢が討伐依頼を受けようとする二人を止めるのも無理はなかった。
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