198 / 702
仮にその試験内容であっても
しおりを挟む
「……マスターはこれから流れるままにランクを上げるのだろ」
「流れるままというか……とりあえず一か月後ぐらいにランクアップのお誘いが来たら、それは受けようかなと思ってる」
ティールのランクは現在D。
Cランクからは昇格試験がある。
その時々によって内容は変わるが、手頃の盗賊団の討伐という場合もある。
冒険者として活動していれば、いずれ超えなければならない壁。
モンスターではなく人を殺すという体験。
モンスターを殺すことに慣れたとしても、同じ人を殺す感覚に戸惑う者は多い。
個人差があれど、目の前の相手は殺さなければならない外道。
それが分かっていたとしても、良識がある者は人を殺すという感覚に罪悪感や不快感、吐き気を覚える。
だが、冒険者として……戦闘職として活動していれば、いずれは仲間を……大切な人を守るために人を殺さなければならない。
そんな時がやって来る。
それは冒険者ギルドも分かっているので、なるべく早めに受けさせたいと考えている。
ランクアップの昇格試験に盗賊団の討伐が起用されることは、Cランクへの昇格時だけではなく、Dランクへの昇格時の際にも適応される。
「マスターなら、余裕で受かるだろうな」
「……どうだろうな。持ってる実力だけでは上がれないかもしれないぞ」
「次の昇格試験、もしマスターが合格してランクアップしなければ冒険者ギルドの視る眼が完全に腐っているということになる。権力者には屑も多いと聞くが、基本的には実力主義の組織。マスターがランクアップしないわけがない」
仮に昇格試験の内容が盗賊団の討伐……人を殺す内容であったとすればどうなるか?
こういった場面でこそ、実力以外のところ……この内容に限れば戦闘に関する実力だけではなく、メンタルの強さも試される。
ティールでもその点に関しては動揺する可能性がゼロとは断言出来ない。
勿論、ジンとリースからはもし盗賊に遭遇したら迷いなく殺せと伝えられている。
生かして街まで持って行けば奴隷として売れ、金になる。
しかし名のある盗賊であれば、首を持って行くだけで懸賞金が貰える。
だから情けの気持ちなど持たず、すぐさま殺せ。
普段はおチャラけているジンはその話をする時、既に殺した盗賊たちに向けて殺気を向けていた。
決してティールにではないが、ジンのプロとしての圧を感じ取ったティールは思わず後ずさりしてしまった。
ティール自身も盗賊は基本的に悪だと解っており、二人からそうだと叩きこまれたとあって、そう簡単に日和ることはなく……動揺したとしても勝手に体が動く。
そういった現象が起きても不思議ではない。
「は、ははは……まぁ、そうかもしれないけどあんまり他の冒険者がいる前では言うなよ。調子に乗ってると思われるからな」
「ふむ、事実だと思うのだが……そう思われるのは確かに良くないな。気を付けておこう」
ラストの言葉は確かに紛れもない事実だが、ティールの言葉もまた事実。
ティールとしては現在でこそラストと行動してるが、それまでは基本的に一人で行動していた。
しかし、決して同業者と仲良くしたくないという訳ではなく、寧ろ人格者とは仲良くなりたいと思っている。
だがそう思っていたとしても……無意識であったとしても、あまり昇格試験を軽んじるような発言をすれば同じ冒険者から睨まれてしまう。
「そうしてくれ」
(第一、今はあまりランクアップしたいとは思っていない)
なんて発言をすれば、先程のラストに伝えた言葉が矛盾してしまうので、グッと心の中に抑えた。
「ただ、ラストはこのままいけば俺と同じ速度ぐらいでDランクになりそうだし、結局俺たちを良く思わない人たちが増えるかもな」
「それなりに鍛えてはいたからな」
一応ルーキーという域を脱却したランク、Dまでの実力は元々持っていると言いたげな言葉。
実際にその通りである、戦闘での実力はCランクの冒険者にも負けていない。
「しかし、早く出世する者は周囲から妬まれる、か……必然とはいえ面倒だな」
「……だな。でも、嫉妬に狂って襲ってくる奴なんてそうそういないって」
深い嫉妬心を向けられたことがあるので、面倒な件に繋がることは承知しているが、実際に手を出すある意味勇者は結局のところあまり多くないのが現実であった。
「流れるままというか……とりあえず一か月後ぐらいにランクアップのお誘いが来たら、それは受けようかなと思ってる」
ティールのランクは現在D。
Cランクからは昇格試験がある。
その時々によって内容は変わるが、手頃の盗賊団の討伐という場合もある。
冒険者として活動していれば、いずれ超えなければならない壁。
モンスターではなく人を殺すという体験。
モンスターを殺すことに慣れたとしても、同じ人を殺す感覚に戸惑う者は多い。
個人差があれど、目の前の相手は殺さなければならない外道。
それが分かっていたとしても、良識がある者は人を殺すという感覚に罪悪感や不快感、吐き気を覚える。
だが、冒険者として……戦闘職として活動していれば、いずれは仲間を……大切な人を守るために人を殺さなければならない。
そんな時がやって来る。
それは冒険者ギルドも分かっているので、なるべく早めに受けさせたいと考えている。
ランクアップの昇格試験に盗賊団の討伐が起用されることは、Cランクへの昇格時だけではなく、Dランクへの昇格時の際にも適応される。
「マスターなら、余裕で受かるだろうな」
「……どうだろうな。持ってる実力だけでは上がれないかもしれないぞ」
「次の昇格試験、もしマスターが合格してランクアップしなければ冒険者ギルドの視る眼が完全に腐っているということになる。権力者には屑も多いと聞くが、基本的には実力主義の組織。マスターがランクアップしないわけがない」
仮に昇格試験の内容が盗賊団の討伐……人を殺す内容であったとすればどうなるか?
こういった場面でこそ、実力以外のところ……この内容に限れば戦闘に関する実力だけではなく、メンタルの強さも試される。
ティールでもその点に関しては動揺する可能性がゼロとは断言出来ない。
勿論、ジンとリースからはもし盗賊に遭遇したら迷いなく殺せと伝えられている。
生かして街まで持って行けば奴隷として売れ、金になる。
しかし名のある盗賊であれば、首を持って行くだけで懸賞金が貰える。
だから情けの気持ちなど持たず、すぐさま殺せ。
普段はおチャラけているジンはその話をする時、既に殺した盗賊たちに向けて殺気を向けていた。
決してティールにではないが、ジンのプロとしての圧を感じ取ったティールは思わず後ずさりしてしまった。
ティール自身も盗賊は基本的に悪だと解っており、二人からそうだと叩きこまれたとあって、そう簡単に日和ることはなく……動揺したとしても勝手に体が動く。
そういった現象が起きても不思議ではない。
「は、ははは……まぁ、そうかもしれないけどあんまり他の冒険者がいる前では言うなよ。調子に乗ってると思われるからな」
「ふむ、事実だと思うのだが……そう思われるのは確かに良くないな。気を付けておこう」
ラストの言葉は確かに紛れもない事実だが、ティールの言葉もまた事実。
ティールとしては現在でこそラストと行動してるが、それまでは基本的に一人で行動していた。
しかし、決して同業者と仲良くしたくないという訳ではなく、寧ろ人格者とは仲良くなりたいと思っている。
だがそう思っていたとしても……無意識であったとしても、あまり昇格試験を軽んじるような発言をすれば同じ冒険者から睨まれてしまう。
「そうしてくれ」
(第一、今はあまりランクアップしたいとは思っていない)
なんて発言をすれば、先程のラストに伝えた言葉が矛盾してしまうので、グッと心の中に抑えた。
「ただ、ラストはこのままいけば俺と同じ速度ぐらいでDランクになりそうだし、結局俺たちを良く思わない人たちが増えるかもな」
「それなりに鍛えてはいたからな」
一応ルーキーという域を脱却したランク、Dまでの実力は元々持っていると言いたげな言葉。
実際にその通りである、戦闘での実力はCランクの冒険者にも負けていない。
「しかし、早く出世する者は周囲から妬まれる、か……必然とはいえ面倒だな」
「……だな。でも、嫉妬に狂って襲ってくる奴なんてそうそういないって」
深い嫉妬心を向けられたことがあるので、面倒な件に繋がることは承知しているが、実際に手を出すある意味勇者は結局のところあまり多くないのが現実であった。
50
お気に入りに追加
1,801
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて
ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記
大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。
それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。
生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、
まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。
しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。
無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。
これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?
依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、
いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。
誰かこの悪循環、何とかして!
まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて
村人からの貴族様!
森村壱之輔
ファンタジー
リヒャルトは、ノブルマート世界の創造神にして唯一神でもあるマリルーシャ様の加護を受けている稀有な人間である。固有スキルは【鑑定】【アイテムボックス】【多言語理解・翻訳】の三つ。他にも【火・風・土・無・闇・神聖・雷魔法】が使える上に、それぞれLvが3で、【錬金術】も使えるが、Lvは2だ。武術も剣術、双短剣術、投擲術、弓術、罠術、格闘術ともにLv:5にまで達していた。毎日山に入って、山菜採りや小動物を狩ったりしているので、いつの間にか、こうなっていたのだ。
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
チュートリアル場所でLv9999になっちゃいました。
ss
ファンタジー
これは、ひょんなことから異世界へと飛ばされた青年の物語である。
高校三年生の竹林 健(たけばやし たける)を含めた地球人100名がなんらかの力により異世界で過ごすことを要求される。
そんな中、安全地帯と呼ばれている最初のリスポーン地点の「チュートリアル場所」で主人公 健はあるスキルによりレベルがMAXまで到達した。
そして、チュートリアル場所で出会った一人の青年 相斗と一緒に異世界へと身を乗り出す。
弱体した異世界を救うために二人は立ち上がる。
※基本的には毎日7時投稿です。作者は気まぐれなのであくまで目安くらいに思ってください。設定はかなりガバガバしようですので、暖かい目で見てくれたら嬉しいです。
※コメントはあんまり見れないかもしれません。ランキングが上がっていたら、報告していただいたら嬉しいです。
Hotランキング 1位
ファンタジーランキング 1位
人気ランキング 2位
100000Pt達成!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる