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推奨ランクと全く合わない
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冒険者ギルドに入り、一直線にギルドボードに向かい、何やら面白そうな依頼がないか探し始める。
「……やっぱりちょっと割に合わない依頼の方が多いな」
クエストボードには常時受け付けている依頼が張り直されているが、あまり興味を惹かれる依頼はない。
しかし先にラストが面白そうな依頼を発見した。
「ティールさん、この依頼はどうだ」
「ん? どんな依頼だ」
ラストが指さす方に目を向けると、そこにはヤドラスの遺跡で姿が確認されたキラータイガーの討伐依頼が張り出されていた。
「成功報酬は金貨八十枚、悪くないな……でも、塩漬けになりかけてる、のか?」
「そうかもしれないな。情報として、気配を消すのが上手い。そして闇魔法を使って遠距離攻撃も行うと書いてある。遺跡の中で気配を消されるとかなり厄介だな」
「なるほど、だから積極的に受けようと思うパーティーがいないのか」
気配を消すのが上手いだけではなく、純粋な身体能力も高い。
例え戦う場所が遺跡の中でなくとも倒すのは難しい。
だが……ティールからすれば丁度良い相手だった。
「Bランクに近いCランクのモンスターだからか、討伐推奨パーティーのランクはBになってるが……どうする、ティールさん」
「そんなの決まってるだろ。それ、受けるぞ」
討伐推奨ランクがB? そんなのは関係無い。
一度それより上のブラッディ―タイガーと戦って勝利したティールは恐怖よりも好奇心が勝っていた。
「すいません、これ受けます」
「はい、かしこまりまし、た……すいません、ギルドカードを見せてもらいますね」
二人は受付嬢にギルドカードを素直に見せた。
カードに書かれてあるランクを見て、受付嬢は大きなため息を吐く。
「お二人ともランクがDとHじゃないですか。この依頼の推奨ランクはBランク。しかもパーティーでの討伐です」
「俺たちもパーティーを組んでますよ」
「ッ! 確かにそうかもしれませんが、基本的には四人以上のパーティーで討伐することが推奨されているモンスターです。Bランクよりも下のCランクであれば十人近い人数で討伐を行うのが妥当なんです」
確かにティールとラストはパーティーを組んでいる。
だが、パーティーとは基本的に四人以上で組むもの。
受付嬢から見て、そもそもキラータイガーに挑む人数が足りない。
「まぁ、そう言わずに。無理だと思ったら直ぐに逃げますから」
「そういう話ではありません。そもそもDランクとHランクの冒険者が受けるような依頼ではないと言ってるんです!!!」
受付嬢の言葉は決して間違っていない。
間違ってはいないが、実際に戦えば結果は考えている通りになるとは限らない。
「……受付嬢さん、こいつが本当にHランク程度の実力しかないと思ってるんですか」
「ッ! それは……そうでないとは思いますが」
ごつくはないが、それでも高身長で細マッチョ。
明らかに他の連中とは違うと断言するようなオーラが溢れている。
それは受付嬢もなんとなく分かっていた。
だが、冒険者ギルドで働く者として低ランクの冒険者に無謀過ぎる冒険をさせる訳にはいかない。
しかし二人は全く引かない。
「大丈夫ですよ。本当に無理だなって思ったら全速力で逃げるんで。なっ、ラスト」
「……そうだな。命は惜しいと思う。全てを賭しても勝てないと感じれば、さすがに逃げるしかないだろう」
「というわけなんで、よろしくお願いします」
「……はぁ~~~~~~~、かしこまりました」
受付嬢は冒険者の身を心配することは出来るが、強制することはない。
ルーキーを無茶な冒険から意識を逸らすために自身の武器を利用し、なるべくリスクが少ない道を進むよう誘導する受付嬢もいるが、二人の目の前にいるお姉さんはそこまで器用ではなかった。
そもそも、そんなお姉さんが受けない方が良いと優しく言ったところで、二人が諦めるわけがない。
「本当に……本当に無理だと思ったら直ぐに逃げてくださいね」
「分かりました」
ポーカーフェイスで対応し、二人はワクワク気分のままギルドから出て行った。
新作、スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす、の投稿を始めました。
是非読んでみてください。
「……やっぱりちょっと割に合わない依頼の方が多いな」
クエストボードには常時受け付けている依頼が張り直されているが、あまり興味を惹かれる依頼はない。
しかし先にラストが面白そうな依頼を発見した。
「ティールさん、この依頼はどうだ」
「ん? どんな依頼だ」
ラストが指さす方に目を向けると、そこにはヤドラスの遺跡で姿が確認されたキラータイガーの討伐依頼が張り出されていた。
「成功報酬は金貨八十枚、悪くないな……でも、塩漬けになりかけてる、のか?」
「そうかもしれないな。情報として、気配を消すのが上手い。そして闇魔法を使って遠距離攻撃も行うと書いてある。遺跡の中で気配を消されるとかなり厄介だな」
「なるほど、だから積極的に受けようと思うパーティーがいないのか」
気配を消すのが上手いだけではなく、純粋な身体能力も高い。
例え戦う場所が遺跡の中でなくとも倒すのは難しい。
だが……ティールからすれば丁度良い相手だった。
「Bランクに近いCランクのモンスターだからか、討伐推奨パーティーのランクはBになってるが……どうする、ティールさん」
「そんなの決まってるだろ。それ、受けるぞ」
討伐推奨ランクがB? そんなのは関係無い。
一度それより上のブラッディ―タイガーと戦って勝利したティールは恐怖よりも好奇心が勝っていた。
「すいません、これ受けます」
「はい、かしこまりまし、た……すいません、ギルドカードを見せてもらいますね」
二人は受付嬢にギルドカードを素直に見せた。
カードに書かれてあるランクを見て、受付嬢は大きなため息を吐く。
「お二人ともランクがDとHじゃないですか。この依頼の推奨ランクはBランク。しかもパーティーでの討伐です」
「俺たちもパーティーを組んでますよ」
「ッ! 確かにそうかもしれませんが、基本的には四人以上のパーティーで討伐することが推奨されているモンスターです。Bランクよりも下のCランクであれば十人近い人数で討伐を行うのが妥当なんです」
確かにティールとラストはパーティーを組んでいる。
だが、パーティーとは基本的に四人以上で組むもの。
受付嬢から見て、そもそもキラータイガーに挑む人数が足りない。
「まぁ、そう言わずに。無理だと思ったら直ぐに逃げますから」
「そういう話ではありません。そもそもDランクとHランクの冒険者が受けるような依頼ではないと言ってるんです!!!」
受付嬢の言葉は決して間違っていない。
間違ってはいないが、実際に戦えば結果は考えている通りになるとは限らない。
「……受付嬢さん、こいつが本当にHランク程度の実力しかないと思ってるんですか」
「ッ! それは……そうでないとは思いますが」
ごつくはないが、それでも高身長で細マッチョ。
明らかに他の連中とは違うと断言するようなオーラが溢れている。
それは受付嬢もなんとなく分かっていた。
だが、冒険者ギルドで働く者として低ランクの冒険者に無謀過ぎる冒険をさせる訳にはいかない。
しかし二人は全く引かない。
「大丈夫ですよ。本当に無理だなって思ったら全速力で逃げるんで。なっ、ラスト」
「……そうだな。命は惜しいと思う。全てを賭しても勝てないと感じれば、さすがに逃げるしかないだろう」
「というわけなんで、よろしくお願いします」
「……はぁ~~~~~~~、かしこまりました」
受付嬢は冒険者の身を心配することは出来るが、強制することはない。
ルーキーを無茶な冒険から意識を逸らすために自身の武器を利用し、なるべくリスクが少ない道を進むよう誘導する受付嬢もいるが、二人の目の前にいるお姉さんはそこまで器用ではなかった。
そもそも、そんなお姉さんが受けない方が良いと優しく言ったところで、二人が諦めるわけがない。
「本当に……本当に無理だと思ったら直ぐに逃げてくださいね」
「分かりました」
ポーカーフェイスで対応し、二人はワクワク気分のままギルドから出て行った。
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