あっさりと初恋が破れた俺、神からのギフトで倒して殺して奪う

Gai

文字の大きさ
上 下
144 / 723

一日で見つかるなら良いが

しおりを挟む
「あの、ティールさん。この後お時間はありますか?」

「ありますけど……どうしたんですか」

「ギルドマスターが是非話したいと」

(またこのパターンか)

もしかしたら、こうなるかもしれないと思っていたが、その通りになってしまった。

(今回もランクアップを勧められるのか?)

この歳でランクがベテランの域に達すれば、厄介事が増えるかもしれないという考えは変わらない。
だが、その考えが徐々に変わり始めてきた。

「分かりました、今行きます。話が終わるまでに、換金の用意をお願いします」

「か、かしこまりました」

「おい坊主!! 全部売っても良いのか? 多分、肉は美味い筈だぞ!!!」

「……なら、肉と爪だけは残しておいてください」

肉は自分で食し、爪は武器の材料に使う。
空間収納を持っているティールであれば、好きなタイミングで行える。

そしてティールは受付嬢に案内され、ギルドマスターが案内されている部屋へと連れてこられた。

「やぁ、君が噂のモンスターを倒してくれた冒険者か」

「どうも、Eランクのティールです」

「君の話は噂程度が、知っているよ。さぁ、まずは座ってくれ」

言われるがままにソファーに座り、出された紅茶を飲む。

「味はどうだい」

「……舌が肥えてはいないですけど、美味しいと思います」

「そうか、そう言ってくれると嬉しいよ。おっと、自己紹介がまだだったね。僕はこの街のギルドマスター、オルアットだ。一応元Bランクの冒険者だ」

元高ランクの冒険者と聞き、ティールは直ぐに納得した。

(柔らかい雰囲気を出してるけど、多分……心の中には冒険者らしい鋭さがある筈だ)

相手がギルドマスターということもあり、鑑定は使わない。
しかし、視ずとも強者だということは解った。

「それで、ツインヘッドベアーをどうやって倒したのか教えて貰っても良いかな」

「まず、速さで不意を突いて背後を取り、剣を振るいました。だが、それは野生の勘で躱された」

「獣系のモンスターはそういうところがあるよね」

「避けられましたけど、体勢が悪かったので後ろから蹴り飛ばしました。ツインヘッドベアーは盛大にこけたので、上から二つの頭をほぼ同時に突いて終わらせました」

「なるほど、確かに死体から予想できる倒し方だ」

ポーカーフェイスを保っているオルアットだが、実際に起こったであろう現実に内心、驚きまくっていた。

(確かこの子は十二歳だよな……十二歳の冒険者がツインヘッドベアーの身体能力を上回っているのにまず驚かざるを得ない。もしかしたら、ティール君がブラッディ―タイガーを一人で倒したという話も本当なのかもしれないな)

旅の冒険者が漏らした噂であり、その話を誰も信じようとは思わなかった。
ギルドマスターであるオルアットも九割方は信じていなかった……こうしてその英雄を目にするまでは。

(雰囲気で解る……この子は異常だ。Cランクのモンスターを一人で倒すだけでも稀な存在だが、Bランクの猛獣をソロで倒すとは……とんでもない傑物が生まれたものだ)

同じ冒険者だった者として、嫉妬すら覚える才をティールから感じた。

「……オルアットさんなら、一人でツインヘッドベアーを倒せたんじゃないですか」

「ん? あぁ、なるほど。確かに僕なら噂のモンスター、ツインヘッドベアーを倒せたと思っている冒険者多いだろうね。でも、僕にも立場というものがある」

「立場……そうか、そうでしたね。ギルドマスターじゃなきゃ、できない仕事はたくさんありますよね」

「そういうことなんだ。解ってくれて嬉しいよ」

書類仕事はギルドマスターが直接確認しなければならない物が多い。
一日でツインヘッドベアーを発見出来るなら、オルアットも腰を上げて討伐に臨む。

だが、そう簡単に見つからないからこそ、オルアット自ら動けないのだ。

(なにはともあれ、ツインヘッドベアーを討伐してくれたことには感謝しなければ。スピードは微妙だが、四本の腕と力、そして視野の広い二つの頭が厄介なモンスターだ……倒せる冒険者がこの街にいるか、怪しいところだしね)

最悪の場合は他のギルドから救援を頼まなければならいのだが、他のギルドに借りを作る形になるので、オルアットとしては避けたい手だった。
しおりを挟む
感想 122

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

ハズレ召喚として追放されたボクは、拡大縮小カメラアプリで異世界無双

さこゼロ
ファンタジー
突然、異世界に転生召喚された4人の少年少女たち。儀式を行った者たちに言われるがまま、手に持っていたスマホのアプリを起動させる。 ある者は聖騎士の剣と盾、 ある者は聖女のローブ、 それぞれのスマホからアイテムが出現する。 そんな中、ひとりの少年のスマホには、画面にカメラアプリが起動しただけ。 ハズレ者として追放されたこの少年は、これからどうなるのでしょうか… if分岐の続編として、 「帰還した勇者を護るため、今度は私が転移します!」を公開しています(^^)

勇者パーティを追放された聖女ですが、やっと解放されてむしろ感謝します。なのにパーティの人たちが続々と私に助けを求めてくる件。

八木愛里
ファンタジー
聖女のロザリーは戦闘中でも回復魔法が使用できるが、勇者が見目麗しいソニアを新しい聖女として迎え入れた。ソニアからの入れ知恵で、勇者パーティから『役立たず』と侮辱されて、ついに追放されてしまう。 パーティの人間関係に疲れたロザリーは、ソロ冒険者になることを決意。 攻撃魔法の魔道具を求めて魔道具屋に行ったら、店主から才能を認められる。 ロザリーの実力を知らず愚かにも追放した勇者一行は、これまで攻略できたはずの中級のダンジョンでさえ失敗を繰り返し、仲間割れし破滅へ向かっていく。 一方ロザリーは上級の魔物討伐に成功したり、大魔法使いさまと協力して王女を襲ってきた魔獣を倒したり、国の英雄と呼ばれる存在になっていく。 これは真の実力者であるロザリーが、ソロ冒険者としての地位を確立していきながら、残念ながら追いかけてきた魔法使いや女剣士を「虫が良すぎるわ!」と追っ払い、入り浸っている魔道具屋の店主が実は憧れの大魔法使いさまだが、どうしても本人が気づかない話。 ※11話以降から勇者パーティの没落シーンがあります。 ※40話に鬱展開あり。苦手な方は読み飛ばし推奨します。 ※表紙はAIイラストを使用。

リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?

あくの
ファンタジー
 15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。 加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。 また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。 長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。 リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!

スキル盗んで何が悪い!

大都督
ファンタジー
"スキル"それは誰もが欲しがる物 "スキル"それは人が持つには限られた能力 "スキル"それは一人の青年の運命を変えた力  いつのも日常生活をおくる彼、大空三成(オオゾラミツナリ)彼は毎日仕事をし、終われば帰ってゲームをして遊ぶ。そんな毎日を繰り返していた。  本人はこれからも続く生活だと思っていた。  そう、あのゲームを起動させるまでは……  大人気商品ワールドランド、略してWL。  ゲームを始めると指先一つリアルに再現、ゲーマーである主人公は感激と喜び物語を勧めていく。  しかし、突然目の前に現れた女の子に思わぬ言葉を聞かさせる……  女の子の正体は!? このゲームの目的は!?  これからどうするの主人公!  【スキル盗んで何が悪い!】始まります!

追放された薬師でしたが、特に気にもしていません 

志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、自身が所属していた冒険者パーティを追い出された薬師のメディ。 まぁ、どうでもいいので特に気にもせずに、会うつもりもないので別の国へ向かってしまった。 だが、密かに彼女を大事にしていた人たちの逆鱗に触れてしまったようであった‥‥‥ たまにやりたくなる短編。 ちょっと連載作品 「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」に登場している方が登場したりしますが、どうぞ読んでみてください。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

王家も我が家を馬鹿にしてますわよね

章槻雅希
ファンタジー
 よくある婚約者が護衛対象の王女を優先して婚約破棄になるパターンのお話。あの手の話を読んで、『なんで王家は王女の醜聞になりかねない噂を放置してるんだろう』『てか、これ、王家が婚約者の家蔑ろにしてるよね?』と思った結果できた話。ひそかなサブタイは『うちも王家を馬鹿にしてますけど』かもしれません。 『小説家になろう』『アルファポリス』(敬称略)に重複投稿、自サイトにも掲載しています。

処理中です...