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一日で見つかるなら良いが
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「あの、ティールさん。この後お時間はありますか?」
「ありますけど……どうしたんですか」
「ギルドマスターが是非話したいと」
(またこのパターンか)
もしかしたら、こうなるかもしれないと思っていたが、その通りになってしまった。
(今回もランクアップを勧められるのか?)
この歳でランクがベテランの域に達すれば、厄介事が増えるかもしれないという考えは変わらない。
だが、その考えが徐々に変わり始めてきた。
「分かりました、今行きます。話が終わるまでに、換金の用意をお願いします」
「か、かしこまりました」
「おい坊主!! 全部売っても良いのか? 多分、肉は美味い筈だぞ!!!」
「……なら、肉と爪だけは残しておいてください」
肉は自分で食し、爪は武器の材料に使う。
空間収納を持っているティールであれば、好きなタイミングで行える。
そしてティールは受付嬢に案内され、ギルドマスターが案内されている部屋へと連れてこられた。
「やぁ、君が噂のモンスターを倒してくれた冒険者か」
「どうも、Eランクのティールです」
「君の話は噂程度が、知っているよ。さぁ、まずは座ってくれ」
言われるがままにソファーに座り、出された紅茶を飲む。
「味はどうだい」
「……舌が肥えてはいないですけど、美味しいと思います」
「そうか、そう言ってくれると嬉しいよ。おっと、自己紹介がまだだったね。僕はこの街のギルドマスター、オルアットだ。一応元Bランクの冒険者だ」
元高ランクの冒険者と聞き、ティールは直ぐに納得した。
(柔らかい雰囲気を出してるけど、多分……心の中には冒険者らしい鋭さがある筈だ)
相手がギルドマスターということもあり、鑑定は使わない。
しかし、視ずとも強者だということは解った。
「それで、ツインヘッドベアーをどうやって倒したのか教えて貰っても良いかな」
「まず、速さで不意を突いて背後を取り、剣を振るいました。だが、それは野生の勘で躱された」
「獣系のモンスターはそういうところがあるよね」
「避けられましたけど、体勢が悪かったので後ろから蹴り飛ばしました。ツインヘッドベアーは盛大にこけたので、上から二つの頭をほぼ同時に突いて終わらせました」
「なるほど、確かに死体から予想できる倒し方だ」
ポーカーフェイスを保っているオルアットだが、実際に起こったであろう現実に内心、驚きまくっていた。
(確かこの子は十二歳だよな……十二歳の冒険者がツインヘッドベアーの身体能力を上回っているのにまず驚かざるを得ない。もしかしたら、ティール君がブラッディ―タイガーを一人で倒したという話も本当なのかもしれないな)
旅の冒険者が漏らした噂であり、その話を誰も信じようとは思わなかった。
ギルドマスターであるオルアットも九割方は信じていなかった……こうしてその英雄を目にするまでは。
(雰囲気で解る……この子は異常だ。Cランクのモンスターを一人で倒すだけでも稀な存在だが、Bランクの猛獣をソロで倒すとは……とんでもない傑物が生まれたものだ)
同じ冒険者だった者として、嫉妬すら覚える才をティールから感じた。
「……オルアットさんなら、一人でツインヘッドベアーを倒せたんじゃないですか」
「ん? あぁ、なるほど。確かに僕なら噂のモンスター、ツインヘッドベアーを倒せたと思っている冒険者多いだろうね。でも、僕にも立場というものがある」
「立場……そうか、そうでしたね。ギルドマスターじゃなきゃ、できない仕事はたくさんありますよね」
「そういうことなんだ。解ってくれて嬉しいよ」
書類仕事はギルドマスターが直接確認しなければならない物が多い。
一日でツインヘッドベアーを発見出来るなら、オルアットも腰を上げて討伐に臨む。
だが、そう簡単に見つからないからこそ、オルアット自ら動けないのだ。
(なにはともあれ、ツインヘッドベアーを討伐してくれたことには感謝しなければ。スピードは微妙だが、四本の腕と力、そして視野の広い二つの頭が厄介なモンスターだ……倒せる冒険者がこの街にいるか、怪しいところだしね)
最悪の場合は他のギルドから救援を頼まなければならいのだが、他のギルドに借りを作る形になるので、オルアットとしては避けたい手だった。
「ありますけど……どうしたんですか」
「ギルドマスターが是非話したいと」
(またこのパターンか)
もしかしたら、こうなるかもしれないと思っていたが、その通りになってしまった。
(今回もランクアップを勧められるのか?)
この歳でランクがベテランの域に達すれば、厄介事が増えるかもしれないという考えは変わらない。
だが、その考えが徐々に変わり始めてきた。
「分かりました、今行きます。話が終わるまでに、換金の用意をお願いします」
「か、かしこまりました」
「おい坊主!! 全部売っても良いのか? 多分、肉は美味い筈だぞ!!!」
「……なら、肉と爪だけは残しておいてください」
肉は自分で食し、爪は武器の材料に使う。
空間収納を持っているティールであれば、好きなタイミングで行える。
そしてティールは受付嬢に案内され、ギルドマスターが案内されている部屋へと連れてこられた。
「やぁ、君が噂のモンスターを倒してくれた冒険者か」
「どうも、Eランクのティールです」
「君の話は噂程度が、知っているよ。さぁ、まずは座ってくれ」
言われるがままにソファーに座り、出された紅茶を飲む。
「味はどうだい」
「……舌が肥えてはいないですけど、美味しいと思います」
「そうか、そう言ってくれると嬉しいよ。おっと、自己紹介がまだだったね。僕はこの街のギルドマスター、オルアットだ。一応元Bランクの冒険者だ」
元高ランクの冒険者と聞き、ティールは直ぐに納得した。
(柔らかい雰囲気を出してるけど、多分……心の中には冒険者らしい鋭さがある筈だ)
相手がギルドマスターということもあり、鑑定は使わない。
しかし、視ずとも強者だということは解った。
「それで、ツインヘッドベアーをどうやって倒したのか教えて貰っても良いかな」
「まず、速さで不意を突いて背後を取り、剣を振るいました。だが、それは野生の勘で躱された」
「獣系のモンスターはそういうところがあるよね」
「避けられましたけど、体勢が悪かったので後ろから蹴り飛ばしました。ツインヘッドベアーは盛大にこけたので、上から二つの頭をほぼ同時に突いて終わらせました」
「なるほど、確かに死体から予想できる倒し方だ」
ポーカーフェイスを保っているオルアットだが、実際に起こったであろう現実に内心、驚きまくっていた。
(確かこの子は十二歳だよな……十二歳の冒険者がツインヘッドベアーの身体能力を上回っているのにまず驚かざるを得ない。もしかしたら、ティール君がブラッディ―タイガーを一人で倒したという話も本当なのかもしれないな)
旅の冒険者が漏らした噂であり、その話を誰も信じようとは思わなかった。
ギルドマスターであるオルアットも九割方は信じていなかった……こうしてその英雄を目にするまでは。
(雰囲気で解る……この子は異常だ。Cランクのモンスターを一人で倒すだけでも稀な存在だが、Bランクの猛獣をソロで倒すとは……とんでもない傑物が生まれたものだ)
同じ冒険者だった者として、嫉妬すら覚える才をティールから感じた。
「……オルアットさんなら、一人でツインヘッドベアーを倒せたんじゃないですか」
「ん? あぁ、なるほど。確かに僕なら噂のモンスター、ツインヘッドベアーを倒せたと思っている冒険者多いだろうね。でも、僕にも立場というものがある」
「立場……そうか、そうでしたね。ギルドマスターじゃなきゃ、できない仕事はたくさんありますよね」
「そういうことなんだ。解ってくれて嬉しいよ」
書類仕事はギルドマスターが直接確認しなければならない物が多い。
一日でツインヘッドベアーを発見出来るなら、オルアットも腰を上げて討伐に臨む。
だが、そう簡単に見つからないからこそ、オルアット自ら動けないのだ。
(なにはともあれ、ツインヘッドベアーを討伐してくれたことには感謝しなければ。スピードは微妙だが、四本の腕と力、そして視野の広い二つの頭が厄介なモンスターだ……倒せる冒険者がこの街にいるか、怪しいところだしね)
最悪の場合は他のギルドから救援を頼まなければならいのだが、他のギルドに借りを作る形になるので、オルアットとしては避けたい手だった。
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