あっさりと初恋が破れた俺、神からのギフトで倒して殺して奪う

Gai

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「……ふふ、良いなこの力」

クラッシュシープを初めて倒し、衝撃のスキルを得てから約二時間。
ティールは本来の目的を忘れて衝撃を利用して、モンスターを倒すことに夢中になっていた。

「単純に敵を倒すのに有効なスキルだが、俺みたいな冒険者にとっては更に有難いスキルだな」

衝撃は物理攻撃を与えた瞬間に効果を発揮するだけではなく、内部に向かって衝撃を送ることが出来る。

つまり、外部を損傷することなく脳や心臓を破壊することが出来るのだ。
素材の状態によって売却価格が変わるので、素材を破壊せず良い状態で手に入る衝撃はティールにとって、この上なく便利なスキルだった。

「しかも衝撃を与える部分を変えることで威力も上がるし……本当に使い勝手が良いな」

ティールは冒険者の中で脚力に寄った身体能力を持っているので、大抵のモンスターにスピードで後れを取ることはない。

相手に近づけなければならないという難点はあるが、衝撃以外にも攻撃方法があるティールからすれば、モンスターに接近するのは苦手ではない。

「今日はこのまま衝撃を試し続けるか……いや、ちょっと待て。何か忘れてないか?」

そもそも、近くの街に留まる理由は無かった。
なのに、どうして目的地に進まず森の中を探索していたのか、その理由を思い出そうとした。

「……そういえば二つの頭と四本の腕を持った熊のモンスターを探してたんだったな」

衝撃という有能なスキルを奪い、試すことに夢中になって本来の目的を完全に忘れてしまっていた。

「でも、そういった気配は感じないし……それらしい跡がないんだよな」

熊タイプのモンスターに限らず、爪を持つモンスターはここは自分の縄張りだと示す為に、木々に傷跡を残す。
ただ、ティールが今日森の中を歩き回った限り、そういった後は一つも無かった。

「もっと奥に潜んでるのか? でも、実際に被害は出てるみたいだから、そんなに離れた場所にはいないと思うんだけどな」

まだ日が暮れていないので、探索は続ける。
しかし今日中には見つからないかもしれないと、直感が脳に告げている。

(もし冒険者を襲うのを一旦止めて奥に引っ込んでるなら、今日中には見つからないかもしれないな)

是非頭が二つ、腕が四本の熊モンスターと戦ってみたいという思いはあるが、それだけの為に何日も滞在する訳にはいかない。

「……滞在する日数を決めておいた方が良さそうだな」

特殊な熊モンスターが街の脅威になるのは確実だが、元々の予定を潰してまで探す義理はない。

「せいぜい一週間、ってところか」

一週間も探して見つからなければ、それ以上探す必要はない。
戦ってみたいモンスターだとは思っているが、見つからなければ戦うことも出来ない。

(まっ、本当に街の冒険者の手に負えないモンスターなら、他の街から応援を呼んで討伐するだろ)

どういった能力を持っているのか、詳しくは知らない。
だが、食堂で軽く話を聞いた限り、容易に倒せる個体ではないのは解っている。

(Cランクの冒険者が十人近く集まって討伐すれば、死者が出ずに倒せるかもな。それか戦闘に特化したBランクに近いCランクの冒険者なら数人だけでもいけるか……流石にBランクのパーティーが依頼を受ければ、余裕で倒せるだろうな)

まだ特殊な熊のモンスターに関して討伐依頼は出ていないが、調査依頼は既に出ていた。
いずれ正式な討伐依頼が出るのも遠くはない。

「……」

「おっ、なんだ……そっちから来てくれるなんて、嬉しいな」

現れたモンスターは例の熊ではなく、先程手に入れてから何度も実戦で使っていた衝撃のスキルを所有しているクラッシュシープ。

「お前が持ってるスキル、本当に使い勝手が良いからお前の衝撃も奪わせてもらうぞ」

「ッ!!!!!」

人の言葉は解からないが、嘗められている本能的に理解したクラッシュシープは身体強化を使用し、突進のスキルも使いながら猛ダッシュ。

そして敵にぶつかる瞬間に衝撃を使おうとしたが、そう思った瞬間に敵が視界から姿を消した。

「ほいっと」

頭部に指を一本置き、衝撃を放つ。
指先は正確に脳の位置を捉えており、半壊。

一撃も突進をぶちかますことなく戦いは終わり、クラッシュシープの衝撃はティールに奪われた。
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