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別れる前の夕食
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バースから三つの剣を受け取った後、エリックとリーシアと偶然出会った。
「やぁ、ティール。相変わらずモンスターを相手に暴れてるらしいね」
「暴れてるって……ちょっと言い方が悪いぞ。俺は冒険者らしくモンスターを狩ってるだけど」
他のルーキーの獲物がなくなるようなことはせず、狩る獲物のランクはバラバラ。
それに受付嬢や冒険者からすれば一日で多くのモンスターを狩っている様に思われるが、街の外には大量のモンスターが潜んでいる。
本人としては狩り過ぎているとは全く思っていない。
「ねぇ、ちょっと顔がニヤニヤしてるけど、何か良いことでもあったの?」
「あぁ、そうだな。良いことがあったよ……どうせなら、ご飯食べながら一緒に話さないか」
「良いね」
太陽は殆ど姿を隠し、夕食を食べる始めるには丁度良い時間。
三人は適当な店を探し、中へと入った。
「ティール、財布の中身は大丈夫かい」
「勿論だ。あいつを倒した時に、結構たんまり貰えたからな」
ブラッディ―タイガーを倒した際に、特別報酬として白金貨を五枚。
そして錬金術の素材として貴重な部位を売ったお金があり、ティールの懐は少し前と比べてかなり暖かくなっていた。
「あらそうなの? それじゃあ、今日はティールに奢ってもらおうかしら」
「あぁ、良いぞ」
冗談で言ったつもりだったのだが、マジで返されてしまう。
「じょ、冗談よティール。自分たちの分は自分で出すって」
「本当に余裕があるから今日は驕るよ」
今日は二人に奢ろう。そう決めたティールの意志は固かった。
これは何を言っても変わらない。
それが解ってしまったエリックは苦笑いになりながら感謝の言葉を送った。
「そうか、それなら今日は御馳走になるよ。ありがとう」
「あぁ、存分に食べてくれ」
「むぅ……解ったわ。今日は御馳走になる」
先輩冒険者として、寧ろ後輩には驕るべきだと思っていたが、此処は素直に驕られることにした。
席に着いた三人は各々が好きな様にメニューを頼む。
そしてエリックは確認したかったことをティールに尋ねた。
「ティール、確か明日にはこの街から出て行くんだったよね」
「そうだな。明日には次の街に行こうと思ってる」
本人の口から、この街から離れると聞いた。
その内容が耳に入ったリーシアの表情は少々悲しげになる。
「まだ早いんじゃないのって思わなくもないけど、ティールの実力ならあまり長い間留まっている必要はないものね」
現在滞在している街は初心者にとって、それなりに優しい街だ。
寧ろ冒険者として成功するために、まずはこの街で実力をある程度付けてから他の街に移ろうと考えている者だっている。
そんな街でこれ以上滞在する理由がティールにはない。
それはリーシアも解っている。
自分の寂しいという感情だけで、ティールをこの街に留まらせてはならない。
「行先はもう決まってるのかい」
「ヤドラスの遺跡が近くにある街に向かおうと思ってる」
「ヤドラスの遺跡か……話だけは聞いたことがあるよ」
現代より遥か昔の人達が暮らしていたと思われる遺跡。
しかし中は植物やモンスターに侵食されている。
中はダンジョンの様な状態になっているが、普通に中に入れてボスモンスターなども存在しないので、遺跡と認定されている。
「遺跡の中には強いモンスターもいて、お宝が眠っているかもしれない。かなりワクワクする場所だろ」
冒険者ならば誰でもワクワクする場所。
遺跡をティールはそう認識している。
その認識はエリックとリーシアも同じだった。
「ふふ、確かにワクワクする場所かもしれないね。でも、遺跡を探索するとなると、やっぱり一人で行動するには大変なんじゃないかい?」
ティールの身体能力とスキルがどれほど規格外なのかは、良く解っているつもりだ。
ただ、遺跡を探索するとなると、中々一日で帰ってくることが出来ない場合が多い。
転移魔法という超が十個付くぐらい貴重なスキルなら、一瞬で遺跡の中から外に戻れる。
しかし、そんな有能過ぎるスキルはまだティールも手に入れていなかった。
「大抵のモンスターならティール一人で倒せると思うけど、僕は探索内で他の冒険者といざこざが起きるんじゃないかと思うと、ちょっと心配だね」
「やぁ、ティール。相変わらずモンスターを相手に暴れてるらしいね」
「暴れてるって……ちょっと言い方が悪いぞ。俺は冒険者らしくモンスターを狩ってるだけど」
他のルーキーの獲物がなくなるようなことはせず、狩る獲物のランクはバラバラ。
それに受付嬢や冒険者からすれば一日で多くのモンスターを狩っている様に思われるが、街の外には大量のモンスターが潜んでいる。
本人としては狩り過ぎているとは全く思っていない。
「ねぇ、ちょっと顔がニヤニヤしてるけど、何か良いことでもあったの?」
「あぁ、そうだな。良いことがあったよ……どうせなら、ご飯食べながら一緒に話さないか」
「良いね」
太陽は殆ど姿を隠し、夕食を食べる始めるには丁度良い時間。
三人は適当な店を探し、中へと入った。
「ティール、財布の中身は大丈夫かい」
「勿論だ。あいつを倒した時に、結構たんまり貰えたからな」
ブラッディ―タイガーを倒した際に、特別報酬として白金貨を五枚。
そして錬金術の素材として貴重な部位を売ったお金があり、ティールの懐は少し前と比べてかなり暖かくなっていた。
「あらそうなの? それじゃあ、今日はティールに奢ってもらおうかしら」
「あぁ、良いぞ」
冗談で言ったつもりだったのだが、マジで返されてしまう。
「じょ、冗談よティール。自分たちの分は自分で出すって」
「本当に余裕があるから今日は驕るよ」
今日は二人に奢ろう。そう決めたティールの意志は固かった。
これは何を言っても変わらない。
それが解ってしまったエリックは苦笑いになりながら感謝の言葉を送った。
「そうか、それなら今日は御馳走になるよ。ありがとう」
「あぁ、存分に食べてくれ」
「むぅ……解ったわ。今日は御馳走になる」
先輩冒険者として、寧ろ後輩には驕るべきだと思っていたが、此処は素直に驕られることにした。
席に着いた三人は各々が好きな様にメニューを頼む。
そしてエリックは確認したかったことをティールに尋ねた。
「ティール、確か明日にはこの街から出て行くんだったよね」
「そうだな。明日には次の街に行こうと思ってる」
本人の口から、この街から離れると聞いた。
その内容が耳に入ったリーシアの表情は少々悲しげになる。
「まだ早いんじゃないのって思わなくもないけど、ティールの実力ならあまり長い間留まっている必要はないものね」
現在滞在している街は初心者にとって、それなりに優しい街だ。
寧ろ冒険者として成功するために、まずはこの街で実力をある程度付けてから他の街に移ろうと考えている者だっている。
そんな街でこれ以上滞在する理由がティールにはない。
それはリーシアも解っている。
自分の寂しいという感情だけで、ティールをこの街に留まらせてはならない。
「行先はもう決まってるのかい」
「ヤドラスの遺跡が近くにある街に向かおうと思ってる」
「ヤドラスの遺跡か……話だけは聞いたことがあるよ」
現代より遥か昔の人達が暮らしていたと思われる遺跡。
しかし中は植物やモンスターに侵食されている。
中はダンジョンの様な状態になっているが、普通に中に入れてボスモンスターなども存在しないので、遺跡と認定されている。
「遺跡の中には強いモンスターもいて、お宝が眠っているかもしれない。かなりワクワクする場所だろ」
冒険者ならば誰でもワクワクする場所。
遺跡をティールはそう認識している。
その認識はエリックとリーシアも同じだった。
「ふふ、確かにワクワクする場所かもしれないね。でも、遺跡を探索するとなると、やっぱり一人で行動するには大変なんじゃないかい?」
ティールの身体能力とスキルがどれほど規格外なのかは、良く解っているつもりだ。
ただ、遺跡を探索するとなると、中々一日で帰ってくることが出来ない場合が多い。
転移魔法という超が十個付くぐらい貴重なスキルなら、一瞬で遺跡の中から外に戻れる。
しかし、そんな有能過ぎるスキルはまだティールも手に入れていなかった。
「大抵のモンスターならティール一人で倒せると思うけど、僕は探索内で他の冒険者といざこざが起きるんじゃないかと思うと、ちょっと心配だね」
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