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連日訪問は避ける

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初めて歓楽街に入り、金欲が渦巻くカジノで楽しみ……部屋を出た後に、カツアゲに合う。
そして黒服の警備員の力を借りて、呆気なく撃退。

そんな一日を過ごしたティールは翌日、普段と変わらない様子で昼手前頃に起きた。

「ふぁ~~~……良く寝た」

大きなあくびをしながら、昨日の出来事を思い出す。

初めて入った大人の街、次の一手大金を得るか、大金を一気に失うかのゲーム。
最後の最後に自分から金を奪うとしてきた馬鹿共。

ティールにとって昨日の夜は、ブラッディ―タイガーとの遭遇に負けないぐらい衝撃的だった。

「今日の夜も行くか……いや、流石に連日でカジノに通うのはよろしくないか?」

ギャンブル面白い。
その感覚は知ってしまった。

だが、中毒になった訳ではない。
特に金に困るような生活もしていない。

しかし……いつ、その深い深い……底が見えない沼にハマってしまうか分からない。

勿論、ティールはその沼にハマることなく、ギャンブルを楽しみたいと思っている。

「問題無いとは思うけど……やっぱり連日で通うのは止めておいた方が良さそうだな」

着替えて食堂で朝食を食べ終えたティールがギルドに向かわず、そのまま街の外へと向かった。

(本当に声を掛けて来る人が多くなった)

この街に来てから声を掛けられることは、ちょいちょいあった。
露店を出している商人たちは駆け出しのティールに優しくしてくれ、金に余裕があるのでティールも飯前に間食として買うことが多かった。

それなりに街の人と有効な関係を築けていたが、ティールがブラッディ―タイガーから街を救った英雄だと広まった結果……今まであまり関わってこなかった人からも声を掛けられるようになった。

感謝の言葉を貰うのは嬉しいと感じるが、己の利益の為に絡んでくる者も存在する。
ティールは既にそういった人物の視線に気付いているので、絡んで来ようとすれば適当にあしらってきた。

(面倒だな……いっそ変装系のマジックアイテムでも買って、街中では誰にも俺だって気付かれないように動いた方が良いかもな)

変装系のマジックアイテムは任意で発動出来るタイプと、常時発動出来るタイプがある。
知り合いとは普通に接したいので、明日は任意で発動出来る変装系マジックアイテムを買いに行こうと決めた。

「よし、いつも通りノープランで探索といこうか」

特に目標を決めることなく、日が沈む前まで森の中の探索を延々に続ける。

他の同業者が見れば「少しは休めよ」「ソロで森の中を長時間移動するのは危険だ!!」とツッコんでくるが、身体能力と手札の数が桁外れなティールにとっては問題無い。

偶には誰かとパーティーを組むのもありだと本人は思っているが、基本的にティールには需要がない。

それ故にティールから友人以外に、一緒に探索しよう。もしくは一緒に依頼を受けようと声を掛けることは滅多にないのだ。

「「「「「ギギャギャギャッ!!!!」」」」」

「……お前ら、本当に誰であろうと容赦なく襲い掛かってくるな。それとも、単純に俺がまだまだ子供なだけか」

五体のゴブリンが勢い良く襲い掛かる。

ゴブリン達にも多少の知性はあるので、冒険者の見た目が超いかつい大男であったり、全身フルアーマーを装着していたりすれば、その威圧感にビビッて逃げる場合もある。

だが、いくら規格外の強さを持っていてもティールはまだ子供。
その年齢はどうしても変えられない。

それ故に見た目だけで実力を判断し、無謀にも襲い掛かってもしまう馬鹿が人だけではなく、モンスターにも多い。

「殺気を出してる訳でもないし、これが普通か」

殺す気満々で襲い掛かってくるのは構わないが、ゴブリンではティール満足するには実力が足りな過ぎる。
特に遊ぶ気も起きないので、ゴブリンたちが反応出来ない速度で動き、サクッと首を切り落とす。

「ギッ……」

気付いたときにはすでに遅く、首を斬られて体と頭がおさらばして、ようやく本人は自分が殺されたのだと気付く。

「魔石だけは回収しよっと」

例え一瞬で殺せてしまう程に弱いゴブリンであっても、魔石だけは使い道があるので忘れずに回収。
そして再びノープランでの探索を開始する。
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