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三つの剣

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ティールが亜空間から取り出した素材はブラッディ―タイガーの牙と爪。

「これを使ってください」

「はっはっは、Bランクモンスターの素材……腕が鳴るぜ。それで、三つの武器ってのはどんなやつだ」

「バスターソード、斬馬刀、ソードブレイカーの三つです」

片手でも両手でも使える長剣。
大型のモンスターをぶった斬る大剣。

相手の剣を破壊するための短剣。

ティールが欲したのはその三つの剣だった。

「バスターソードと斬馬刀は解かる……だが、ソードブレイカーってのはどんな剣なんだ?」

「え、えっと……刃の反対側にこんな感じのギザギザがあって、そこで刃を折るんです」

まさかのソードブレイカーをバースが知らなかった。
ただ、師匠であるリースは知っているので、この世に存在する武器なのは確か。

実在する武器だが、実際に使っている者が少ないので存在を知らない者も多い。

「あぁ~~~、なるほどな。そういえばそんな武器があった気がするぞ。だが、俺は一回も造ったことがないからな……ちょっと時間が掛かるかもしれないが、大丈夫か?」

「はい、大丈夫ですよ」

「そうか……なら、最高の武器を造ってやるから待っててくれ。期間は……大体十日ぐらいだ」

「分かりました」

どんな見た目の剣たちが生まれるのか、そんなことを考えてワクワクしながら店を出た。

(ん~~……十日か。その間、何をしようかな)

特に予定がない。

いつも通り依頼を受ける。
もしくは森の中に入って、好きな様にモンスターを狩るのもありだ。

「おっ、小さな英雄じゃねぇか。武器の用足しか?」

「いや、違います。ブラブラと歩いてて……てか、その英雄ってのは止めてください」

「そうかそうか、スマンスマン。にしても……あれだな、なんか退屈そうな顔してたぞ」

「あぁ……そうっすね。確かにそんな表情をしてたかも」

同業者に素直に自分の感情を伝えた。

確かに今、自分は退屈している。
特に何をしようという明確な予定はない。

冒険者らしくモンスターを倒すのはありだ。
だが、何か目標が無ければ少々物足りなさを感じる。

「そうなのか……それなら、夜の街に繰り出してみるか?」

「夜の街って……歓楽街ってことですか?」

「そうだ!! これでもベテランだからな……色々と良い店は知ってるぞ!! そっちはまだちょっとって感じなら、ギャンブルもありだな」

「ギャンブル、か……」

「おっ、ちょっと興味ありな感じだな。ティールぐらいの動体視力が有ればイカサマは見抜けるだろうし、普通に楽しめると思うぞ。てか、普通の店に行けばイカサマする奴なんていないけどな」

嬢を抱くというのは興味がある。
男として非常に興味がある提案だが、まだ少々早いと思う。

だが、ギャンブルならばお金には余裕がある。
この街に存在するカジノは特に正装することなく入れる。

勿論……年齢制限もない。
ただ、他の大きな街に比べれば少々規模が小さい。

「金に余裕があるなら、夜の街に繰り出してみるのもありだぞ。昼にはない出会いがそこにはあるからな。ただ、昼の街よりも周囲を警戒した方が良い」

「……日陰で動いている人達が、俺たちの命を狙ってるってことか」

「命か金かは分からないが……警戒しておいて損は無いぜ、英雄さん」

「だから英雄じゃないって……でも、面白そうな情報を教えてくれてありがとうございます。これはほんのお礼です」

「っと……はっはっは!! 流石英雄だ、随分と太っ腹だな」

ティールが投げた硬貨は銀貨。
誰でも得られる情報の値段にしては高い。

「その呼び方は止めてください。それじゃ」

(歓楽街か……面白そうだな)

ジンから歓楽街がどういった場所なのかある程度教わっていたが、今の今まですっかり忘れていた。

だが、ジンから教えてもらったギャンブルの種類、やり方はだいたい覚えている。

十二歳の子供が歓楽街に行くなど、身ぐるみを剝がされに行くようなものだが……その子供はただの子供ではない。
スーパールーキー、超新星……そんな言葉が安っぽく感じるほどの実力をもった例外中の異例なルーキーだ。

万一の心配は……ゼロ。
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